73:フラグは折れていなかった……?
用意された食事は、見た目が面白い料理ばかりだ。
ミニサイズのカボチャは中身がくり抜かれ、そのカボチャで作ったサラダが、中に詰め込まれている。同じようにトマトも中身をくり抜き、みじん切りの玉ねぎとトマトをオリーブオイルと塩で和えたものが、詰めなおされていた。
新鮮な野菜が挟まったサンドイッチは、断面がまさに映えるものだ。
果物は見事なフルーツカッティングが施されている。
……本当は、これらの料理を心から楽しみかった。
だが。
ウリエルがなぜ堕天したのか。
その件をガブリエルとミカエル様は知りたがっている。
ウリエルが神殿に現れたのは想定外。だからこの件についての弁明を考えていない。考えていたとしても……ミカエル様の前で嘘をつくなんて……無理だ。
私が率先してウリエルに禁忌をおかさせ、堕天させたと分かれば、私はどうなるのだろう……。
罪を問われ、地上へ堕とされる……?
主による白い炎で焼かれる?
冷静に考えれば、分かることだ。
ウリエルが何をしたのか、そんなことはすぐバレる。
ウリエルが堕天するきっかけとなる禁忌の力を誰に使ったのか、その時そこに誰がいたのか、それはすぐに分かること……。
遅かれ早かれ、私に話を聞きたい、となるのは、考えればすぐ分かったのに。
マティアスとソフィアが結ばれたことに舞い上がり、フラグが折れたと喜び、詰めが甘くなっていた。
本当は。
フラグは折れていなかった……?
それともイレギュラーな展開に対する、ゲームの設定の抑止力が働いているのだろうか?
柚乃の体の変化。
もしかしたらこのまま柚乃は、アリエルの姿に変わっていくのではないか。
この世界にアリエルは、二人もいらない。
私は……消される運命……?
そんなことが頭に巡り、食事は……口に運んでいるが、味を感じられない。皆が何かを話しているが、曖昧に笑うことしかできなかった。
「アリエル、お手洗いに行きたいの。よかったらあなたも行かない?」
柚乃の言葉に私は我に返る。
すぐに頷き、共に席を立つ。
その様子をガブリエルもミカエル様も見ていたが、特に何も言わず、二人は食事を続けている。
トイレに着くと、柚乃は私の両肩を掴んだ。
「ちょっと、カナ、どーしちゃったの? 完全に心ここに在らずだよ」
「柚乃、ごめん……」
私はさっきまで考えていたことを話して聞かせた。
すると。
「なるほど。急にミカエル様がガブリエルに会いたがったのは、ウリエルの堕天の件だったのかもしれない。いずれにせよ、ミカエル様のあのただならぬ気配。あの存在感を前に、嘘をつくなんて無理だろうね。だから正直に話すしかない」
柚乃はそう言ったが、「でもね」と言って私の目を見る。
「カナは前世の記憶があった。そこでマティアスとソフィアが両想いで結ばれたいと思っていることを知っていた。でもこの天界で、二人は前世の記憶がなかった。このまま二人が結ばれないのは忍びなく思った。だから二人の記憶を取り戻したいと思った。ただの天使ではそれができない。でも大天使ならできるのではと思った。
そして学校の実習でウリエルの宮殿へ行った。そこでウリエルと話す機会があった。そしてカナに前世の記憶があることを、ウリエルは知ることになった。その流れで、マティアスとソフィアのことを話してみた。するとウリエルは快諾してくれた。堕天したら地上の女と快楽を味わうと言って。ウリエルが堕天することを厭わないと表明した。だったら協力してもらっていいのかなと、甘い考えをしてしまった。そしてマティアスとソフィアの記憶を戻してもらった」
そこまで一気に語ると、再び私を見た。
「ねえ、カナ、今私が話したことに嘘はある?」
「ない」
「ないよね。大丈夫。今私が言った通りに話せば嘘はないし、率先して堕天させたわけではなく、マティアスとソフィアに幸せになって欲しくて、大天使に願ってしまったことだと分かるはずだよ。なんならその香油によるもみほぐしの件も話していいんじゃないの? 実習とは別にもみほぐしをやって、それをウリエルは気に入った。お返しに何か願えば、それを叶えてやるって言われたわけでしょ。それでマティアスとソフィアの記憶が戻ることを願ってしまった、って言えばいいよ」
そうか。
確かにそうすれば私は……。
「ガブリエルのことは、私がなんとかするから。ウリエルの堕天をきっかけに、マティアスとソフィアへの嫌がらせにつながるわけだから、一応今の話は聞かせない方がいいと思うの。もうマティアスとソフィアは婚姻関係を結んでいるし、何もないとは思うけど、念のためね。ミカエル様がカナの話を聞いて、そこでなんらかの判断があれば、ガブリエルはそれに従うと思うから、その時には話してもいいかもしれない。というか、ミカエル様に話せば、ミカエル様からガブリエルには話がおちるでしょう。ミカエル様から聞いた方が、ガブリエルも変に取り乱したりしないと思うしね」
「そうだね……」
柚乃が再び私の肩を掴んだ。
「カナ、しっかりして。大丈夫だから」
「分かった」
「じゃあ、戻るよ。あまりにも戻るのが遅いと心配されるから」
私が頷くと、柚乃は私の手を引いてトイレを出た。
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