72:ついに推しと対面
柚乃は侍女を呼び、着替えを手伝う『役割』を担った天使を呼んでくれた。
私の髪は綺麗にアップで結い上げられ、その髪には小粒な白い薔薇も飾られている。さらにキトンに使う、宝石がついた留め具を柚乃が貸してくれた。腰ひもも留め具と同じ宝石がついたものを、これまた柚乃が貸してくれる。
天使は装飾品に無関心だから、これらに無反応かもしれない。でも柚乃や私は装飾品でオシャレすることで、自分に自信が持てた。ちゃんと推しのためにオシャレしたという自信を。オシャレとメイクは、気合をいれるための、言わば鎧みたいなものだった。
私が準備してもらっている間、柚乃もちゃんと透けていないキトンに着替えていた。
もう準備は万全だ。
既に柚乃の侍女を通じて、ガブリエルには私が同席することも伝えられている。あとはもう、その食事が行われる場所に向かうだけだった。
「カナ、行くよ」
緊張で震えながら、私は立ち上がる。
「大丈夫。カナ、今、めっちゃ綺麗だから。胸張っていこう。あたしもいるから」
柚乃は一緒に深呼吸をしてくれる。
私達は客間を出て、食事が行われる中庭に向かった。
◇
中庭には青いローズマリーの花が満開で、爽やかな香りが広がっている。
真っ白なローソファが置かれており、そこに座った。
ミカエル様とガブリエルはまだ来ていない。
私は深呼吸して、ローズマリーの香りを思いっきり吸い込み、頭をすっきりさせた。
煩悩は捨て、ただ、みんなとの食事を楽しもう。
すると。
話し声が聞こえてきた。
聞いたことのあるこの声は、ガブリエルだ。
最初にこの声を聞いた時は、ドキドキしたが、今はもうそんなことはなくなった。
綺麗な声だと思うが、それ以上でもそれ以外でもない。
でも……。
ガブリエルではない声が聞こえる。
とても穏やかで優しい声、これを聞くと……。
ときめいたのは一瞬。
すぐに気持ちは落ち着き、美しい声に心が癒されるようだ。
「エルサ、アリエル、お待たせしたね」
ガブリエルの声に、私と柚乃は立ち上がる。
ゆっくり声の方を見ると、ガブリエルの隣には……。
輝くようなホワイトブロンドの髪。紫と紺碧が混ざり合い、まるで宇宙のような色の瞳。肌は透き通るような白さで、目鼻立ちはすっきりとしており、体は見事な黄金比。
白いキトンは月の光を受け、輝いているように見える。
これがミカエル様。
あまりにも完璧で。
もう息を飲んで、見つめることしかできない。
出会ったら恋に落ちてしまうのでは?
そんなことを思ったが……。
恋に落ちるなんて恐れ多い、神々しくて、本当に不可侵の存在としか思えない。
胸がドキッとしたのはほんの一瞬。
その後は、涙が出そうなほどの感動に襲われ、そこに色恋の要素は皆無だ。
まるで主の御心に触れ、心が洗われるような気持ちになっている。
実物のミカエル様に会って分かったこと。
それはもう存在の次元が違う。
ミカエル様との恋愛を想像するなんて無理だ。
恋愛につながるときめきを一瞬感じても、気持ちは自然と落ち着き、それ以上ときめくことができない。恋愛感情を維持できないのだ。
「エルサはボクが神殿で婚儀を挙げた天使で、ボクの伴侶だ。彼女には一目惚れだった。今は二人で愛を育み、思い出を作っている最中だ。そして彼女はアリエル。ボクとエルサが神殿へ入るのを、ウリエルと共に見送ってくれたエルサの友人だ。……まさかあの後、ウリエルが堕天すると思わず、本当に驚いたよ。アリエル、後であの時のウリエルのことを、教えてもらえないか?」
……! そうか。そうだった。
うーん、どう説明しようか。
「あ、はい。そうですね。分かりました」
とりあえず返事をする。
「エルサ、アリエル、こちらは知っているとは思うが、ミカエルだ」
私と柚乃は自然とお辞儀をしていた。
すると。
「エルサ、アリエル、初めまして。エルサ、おめでとう。これからガブリエルのことをしっかり支えてほしい」
柚乃はしっとりと「はい、ミカエル様」と返事をする。
「アリエル、ウリエルの件は、私も詳しく話を聞きたい。頼んだよ」
宇宙を思わせる瞳に見つめられると「はい、分かりました」としか返事をできない。
この瞳は……。
ミカエル様の前では嘘なんてつけない。
私の背中に汗が伝った。
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次回更新タイトルは「フラグは折れていなかった……?」です。
【予告】アズレーク視点第一弾公開
『断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!
既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?』
https://book1.adouzi.eu.org/n8030ib/
上記作品のアズレーク視点第一弾を
明日、3月26日(日)のお昼
公開します!
良かったらご覧ください(⁎˃ᴗ˂⁎)
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは引き続きよろしくお願いいたします!










































