65:伝えるなら、今だ。
今日はマティアス、ソフィア、そして私が誘ったアクラシエルの四人で、街の散策をすることになっていた。待ち合わせ場所になっている天空図書館には、アクラシエルと共に向かう。
図書館に向かい飛んでいる最中、アクラシエルはずっとラファエルのことを話している。
筋肉をつけるにはどうしたらいいのか、カウンセリングルームに相談に行ったら、ラファエルが担当してくれた。そこで男性の魅力は筋肉だけではないこと。自分の個性を生かし、その個性を認めてくれる相手を見つけると、心が楽になるとアドバイスされたのだという。その上で、ラファエルの考え方に強く共鳴したこと、男性と女性の二面性を持つラファエルはとても魅力的だと思うなど、とにかく30分の飛行時間中、ラファエルについて熱く語っていた。間違いなく、アクラシエルはラファエルに恋をしていた。
一方のマティアスとソフィアは……。
天空図書館の一階のロビーで、二人は並んで座り、おしゃべりをしていた。二人から醸し出されるオーラは、入口に入った瞬間から伝わってきている。それを感じた時、ふと黒い気持ちがわきあがりそうになった。
どうしてこの二人が幸せで、私は一人なの?という、本能ともいえるゲームの設定だ。
自分の中でわきあがるこの悪役令嬢ポジションの気持ちを、ぐっと飲みこんだ。そして二人に向け、笑顔で手を振った。
大丈夫。笑顔になれた。
私とアクラシエルに気づくと、二人とも輝くような笑顔をこちらへ向ける。それを見ただけで、二人の気持ちが通じ合ったのだと理解できた。
そうか。二人はもう……。許せない……。
気を抜くと、すぐに悪役モードのスイッチが入りそうになる。
必死でそのモードを解除した。
ソファから立ち上がると、二人はこちらへやってくる。
天空図書館の建物から出て、アクラシエルのことをマティアスとソフィアに紹介した。二人はアクラシエルにそれぞれ挨拶をし、街へ向かい歩き出す。
てっきりマティアスとソフィアが並んで歩くかと思ったが、ソフィアはアクラシエルに声をかけ、私はマティアスと並んで歩くことになった。
マティアスと並んで歩けることで、悪役モードは落ち着いている。
「……アリエル、昨日のあれはどういうことだ?」
ウリエルを連れて行った時、私の姿も見られていたことを思い出す。
そこで正直に話すことにした。
正直に。
まあ、多少の嘘も含まれるが、それは悪意ある嘘ではないからいいだろう。
マティアスに語ったのはこんな感じだ。
私には前世の記憶があり、マティアスとソフィアが両想いで付き合っていることを知っていた。その二人が天界では前世の記憶を持たず、疎遠であることを残念に感じていた。ウリエルの宮殿で実習をした際。香油を使いもみほぐしをしている時に、偶然私が前世の記憶を持つことにウリエルが気づいてしまう。そこから話がマティアスとソフィアの話となり、二人が記憶を取り戻せればと思い、ウリエルに相談した。その結果、ウリエルは二人の記憶を戻してくれることになった。でもそれは禁忌となっている力を使うことになり、ウリエルは堕天し、地上へ堕とされた。でも本人は地上にいる人間の女性と楽しむため、喜んで堕天し人間として地上へ堕ちていった。
それらを聞き終えたマティアスは……。
「……俺とソフィアのために……。ウリエルは堕天までして……。アリエルも俺達のためにウリエルに協力を仰いでくれたのか。本当に……ありがとう。これはどれだけ感謝すればいいのか、分からないな」
マティアスは心から喜び、そして申し訳なさそうにしていた。
伝えるなら、今だ。
「ウリエルさんは、堕天してまでマティアスさんとソフィアさんが結ばれることに協力してくれました。一日も早く、明日でも明後日でも、神殿へ向かい婚儀を挙げてください。ソフィアさんは騎士ですが、騎士は『役割』ではないので、いつでも休めます。図書館の係員も、当日休むと言っても休めるはずですから」
「アリエルはまだ学生なのに『役割』について詳しいな」
「学生だからですよ。『役割』についてはみっちり学んでいるので」
力強く答えると、マティアスは笑顔になる。
「ソフィアは今朝、騎士登録を取り消した。新たな『役割』を何にするか……それは街を散策しながら考えるつもりだ。いざとなれば天空図書館の『役割』もあるからな」
既に騎士登録は取り消したのか。
これでようやくソフィアは本来のヒロインに戻れる気がする。
「では街のお店はくまなく散策しましょう。ソフィアさんの興味をひく『役割』が見つかるかもしれないので」
マティアスは素敵な笑顔を浮かべ「ありがとう」と告げた。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!
次回更新タイトルは「フラグは折れた!」です。
ちなみに昨日更新した「あまりにも唐突な出来事」の冒頭に加筆しています。
唐突感を出すために、アリエルが見たままだけ描写したのですが、少し分かりにくいかなと思い、加筆しました。もし分かりにくいと感じていた方がいれば、ご確認いただければ幸いです。
それでは明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
引き続きよろしくお願いいたします!










































