63:幸せは置いてきぼり
「よお、ガブリエル。お前が結婚か。おめでとう」
……! 抑止力じゃなかった!!
「ああ、ウリエル、そうなんだ」
ガブリエルは輝くような笑みを浮かべる。
「ではとっと入るがいい。お幸せに」
ウリエルに促され、ガブリエルはゆっくり扉を押した。
これはゲームの公式のお墨付きを得たのだろうか!?
エルサとガブリエルの婚姻という新たな設定が、ここで認められることに……!?
ともかく何か起きる前に、二人にはとっと神殿へ入って欲しかった。
扉が開くと、ガブリエルは柚乃を促す。
よっしゃ! そのまま行け!
柚乃はチラッと私を見て、頷いた。
私も力強く頷いて、息を飲む。
柚乃は、神殿に入った。
あとはガブリエルが入れば……。
そのままガブリエルも神殿の中に入り、扉は閉じられた。
「やった~!」
思わず隣にいたウリエルに抱きつく。
「おいおい、アリエル。いいのか。お前のその豊満なバスト、おれの体に密着しているぞ」
慌ててウリエルから離れる。
「なんだ。おれを男として意識したか?」
腰を抱き寄せられ、両手でウリエルの胸をぐっと押し返した。
「はは、冗談、冗談」
ウリエルはそう言って笑うと、私の腰から手を離す。
「どうしてここに来たのですか?」
するとウリエルは「偶然だ」と髪をかきあげた。
でもどう考えても、偶然には思えない。
「……嘘、ついていませんか?」
やはり大天使は善性が強いようで、睨みをきかせると、あっさり白状した。
「いや、まあ、な。学校の運営には、おれも一枚かんでいる。だから実習もおれの宮殿で行われた。で、今日、悪魔狩りの帰還で、清めを行う神官を見学したい、という申請書がきていた。提出された申請書は、おれとラファエルがサインをする。おれは学校として認めた、というサイン。ラファエルはすべての神官を束ねる大天使だからな。見学を許可するサインをしたと。で、申請者の名前を見たら、アリエルだった。だから気になって、来てみたわけだ」
なるほど。
うん?
これってもしかしたらものすごくいいタイミングではないか?
今、マティアスの家には、ソフィアがいるはず。
ウリエルに、マティアスとソフィアに記憶を見せてもらう、絶好のチャンス……?
いや、でもウリエルは大天使。
いろいろに担っていることもあるし、いきなり記憶を見せ、はい、堕天というわけにもいかないだろう。
「……アリエル、怒っているのか?」
ランタンの明かりで輝いている、サファイアブルーの瞳が、探るように顔をのぞきこんだ。
思わずドキンと心臓が高鳴り、私は慌てて、首を振る。
「怒るわけがないです。親友が好きな相手と結ばれたのですから」
するとウリエルは、私の頭に自身の手をポンと置いた。
「アリエル、本当にお前は他人のことばかりだな。古の悪魔の時も、自分のことよりエルサとアクラシエルのことを心配した。そしてマティアスとソフィアという、前世の知り合いの幸せを願った。今は親友の恋が実ったことを、喜んでいる。お前自身の幸せは、置いてきぼりになっていないか?」
今、マティアスとソフィアの話題が出た。
さりげなく持ち出すなら今しかない。
ウリエル、私はあなたが思うより、したたかなのです、ごめんなさい。
幸せは……置いてきぼりかもしれない。
だってそれ以前に、生き延びないといけないから。
「そうですね。私はまあ、この天界で、当たり障りなく生きていければいいので……。それよりマティアスさんとソフィアさんですが、二人は今、マティアスさんの家で食事をしています。ご近所なので」
そう言ってチラッとウリエルを見る。
それだけでウリエルは、察したようだ。
「なんだ。それを早く言えよ。じゃあ、とっと記憶を見せちまうか?」
「!! いいのですか? 禁忌となる力と言っていましたよね? それを使えば……」
「堕天する。夜はこれからだからな。さすがに日中に堕ちても、体があいている女も少ないだろう。地上の女は仕事やらなんやらで忙しい。じゃ、早速、そのマティアスの家へ行こう。アリエル、案内してくれ」
!!
柚乃も焦るぐらいの素早さだ。
「その、いろいろ担っていることがあるのは、大丈夫なのですか? 学校のこととか……」
ウリエルはまたも腰を抱き寄せる。
「心配ない。ここには優秀な大天使があと三人もいる。いざとなればミカエル一人でもなんとかなるさ」
突然ミカエル様の名前が出て、思わず心臓が、腰を抱き寄せられた時より反応している。
「なんだ、アリエル、顔が赤いぞ!? もしかして本当は、おれに抱かれたかったか?」
「……!?」
「まあ、寂しくなったら、地上へ堕ちてこい。いつでも抱いてやるから」
ウリエルは耳元で、とんでもなく甘く囁くと、翼を広げた。
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次回更新タイトルは「あまりにも唐突な出来事」です。
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