62:お約束
どう考えてもありえない状況なのに、ガブリエルは柚乃の言うことに一切の疑問を挟むことなく、受け入れていた。
エルサがガブリエルに告白する。
エルサとガブリエルが神殿で婚儀を挙げる。
どちらもゲームの設定にはない状況だ。その結果、このイレギュラーな事態を、ガブリエルはただ素直に受け入れる、そんなモードになっているように感じた。
ガブリエルは柚乃をエスコートし、神殿の方へ歩きかけ、そこで私に気づいた。
「……君は?」
「あ、私はエルサの同級生で、名乗る程の者ではないです。お気遣いなく。二人が神殿へ入るのを見届けたら、家へ帰りますので」
「なるほど……。でもこんな時間に一人で帰るのかい?」
ガブリエルの親切心は素晴らしいと思うが、これから婚儀を挙げるのだから、私のことなど気にしないでほしい。
「いえ一人ではありません。アクラシエルという男性の天使が私のことを待っていてくれているので。一緒に帰ります」
もちろん嘘である。
ただゲームの設定で私は、ガブリエルの婚約者になるはずだった。ここで名乗り、一人身であると分かった瞬間に、何が起きるか分からない。だから名前を言わず、やんわり、男がいると牽制した。
ガブリエルにそれが牽制として伝わったかは分からないが、一人で帰るわけではない、と理解すると、安心した表情になっている。
「分かりました。ではボク達は神殿へ向かっていいのだね?」
柚乃と私は力強く頷く。
二人はゆっくり歩き出し、私はその後ろを進んだ。
小説では、マティアスとソフィアが神殿で婚儀を挙げようとすると、ガブリエルとアリエルが何度も邪魔をしていた。神殿で婚儀を挙げようとすると邪魔が入るのは、もはやお約束に思える。だからこのゲームの世界でも、神殿で婚儀を挙げようとすると、何か邪魔が入るのでは……?
そう思い、私はずっとハラハラドキドキだ。
つまり、どこからか邪魔が入らないかと、周囲を気にすることになった。
だが。
無事、神殿の前に辿り着いた。
ガブリエルと柚乃は、階段をゆっくりのぼっていく。
そして。
扉の前に到着した。
念のため再度周囲を見渡し、絶句した。
唐突にウリエルが現れたのだ。
モブキャラのエルサとガブリエルの婚姻という、まさにバグともいえる事態を止めるため、ウリエルが抑止力となり、現れた……!?
血の気が一気に引き、全身が冷たくなり、震えが走る。
絶望的な気持ちでウリエルを見た。
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