61:失敗した!?
しばらくは何事もなかった。
失敗したと思い焦ったその時、ガブリエルが膝から崩れ落ちた。
柚乃と私で必死にその体を支える。
ガブリエルはスリムだが、身長もあるので相応に重い。
なんとかイチイの巨木の下に、寝かせることができた。
柚乃はガブリエルを膝枕して。その美しい髪に指を絡める。
「ひゃ~。こんなイケメンにリアルに触れられるなんて、奇跡!」
すでに柚乃の頬は緩みっぱなしで、デレデレの顔になっている。
「なんかすぐに反応がなくて、ビックリした」
私の言葉に柚乃は「そう?」という顔をする。
「大天使だもん。自分の体にいろいろ加護をしていそうだし、それで忘却の矢の力が巡るのが、遅かったのでは? もしかしたら目覚めるのに、30分もかからないかもしれない」
柚乃は嬉しそうに、ガブリエルの頭を撫でる。
「なんかさ、前世では心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われて、『あ、終わった』と思ったよ。でもこの世界に転生できて。でもなぜか名前はあるけどモブキャラで。お先真っ暗かと思ったけど。そうでもなかったなー」
私は柚乃の隣に腰を下ろした。
一応、神殿まで見届けることになっている。
目覚めたガブリエルが「神殿にこれから行くのか!?」となった時、私は「はい、ガブリエルさんはそう仰っていました」と証人になる役目も担っていた。ガブリエルがすんなり受け入れれば、神殿に入るところまでを見送ればいい。
「私を訪ねたばかりに、柚乃もこの世界に来ることになったわけだけど……。でも、私としてはすごく助かった。しかもモブキャラに転生してくれたから、悪役モードにならずに、ガブリエルを膝枕する柚乃のことも、見守ることができるし」
柚乃は「あははは」と笑う。
「まさかね。親友同士で同じゲームの世界に転生できるなんてさ。ラッキーだったよね、あたし達」
「ホントだよ、柚乃」
「それで、マティアスとソフィアの記憶は、いつ見せてもらう予定なの?」
「ガブリエルの件がうまくいってからと思っていたから、早ければ明日、遅くても……でもまあこればっかりはウリエルの都合もあるしね」
「そっか」
そんな風に話していると……。
ガブリエルがゆっくり目覚めた。
目覚めたガブリエルに対し、柚乃は大袈裟とも言える演技(?)を披露した。
悪魔狩りから帰ってきたガブリエルに柚乃は告白をして、ガブリエルは快諾、二人はすぐに婚姻を結ぶことを決意した。早速神殿へ向かったが、突然ガブリエルが倒れた。驚き、悲しみ、心配しながら、ここで介抱をしていたと、柚乃が涙ながらに話すと……。
「……そうだったのか。それはすまないことをした。どうして倒れたのか……」
ガブリエルはゆっくり自身が立ち上がると、当然のように柚乃に手を伸ばす。そしてその体を支えると、ガブリエルは柚乃を立ち上がらせた。
告白され、その気持ちをガブリエルは受け入れた、という話を、信じているのは明確だ。
「ボクは頭でも打っていたかな?」
「どうでしょう。打ったかもしれません。痛むようでしたら癒しの力を」
柚乃が手を伸ばすと、ガブリエルは素直に柚乃の癒しの力を受けている。
頭など痛むはずはないのに。
柚乃からの癒しの力を受けたガブリエルは、「せっかく告白をしてくれたのに……。その時の記憶が思い出せなくて」と言い、柚乃の手をとった。そし優しく手の甲に口づけをする。
「とても申し訳ない。さらに言えば君の名前さえ、出てこない……」
「まあ、なんておいたわしい。私の名前はゆ……エルサです」
「エルサ。そうか。エルサ……。聞いたことのある名のような気がする」
ガブリエルはエメラルドグリーンの瞳を細め、そしてあの優美な笑みを浮かべる。
柚乃はそれを見て、花のような笑顔になった。
「中断させてしまい、すまなかった。では神殿へ向かおうか」
この言葉を聞いた瞬間、柚乃も私も心の中でガッツポーズだった。
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