48:優良物件
「冷静に考えてみると、ガブリエル様って優良物件だよ。まず大天使でしょ。見た目に文句はないでしょ。性格は至って真面目で一途。ウリエルみたいにプレイボーイじゃないし、マティアスみたいに千年も手を出さず、偏執的に一人の相手に愛情を向けるわけでもない。ラファエルと結ばれたら女として受け入れつつ、男としても愛さなきゃいけないから大変。アクラシエルは可愛いいし、美少年だけど、弟枠にしか見えない。ミカエル様は攻略までに時間がかかりそうだし、そもそも攻略できる気がしないし。労せず手に入るガブリエル様がいるなら、それで結構、って感じ」
「つまりこの世界で生きていく上で、ガブリエルが伴侶で無問題、ということ?」
柚乃は頷く。
さらに、こんなことまで言い出す。
「それにさ、今、あたしがガブリエル様と結ばれるって話しても、嫉妬してないでしょ?」
「……! 確かに。それどころか、私のために犠牲になるのが申し訳ない、って気持ちになっている」
柚乃はニヤリと笑う。
「あたし、気づいちゃったの。アリエルであるカナが、嫉妬を感じていないその理由に。それはね、あたしがモブキャラだからよ」
「え、どういうこと?」
柚乃はニヤニヤしながら持論を展開する。
「あたしに名前は一応あるけど、まあ、雑魚ですよ。雑魚とガブリエルが結ばれるなんて、バグみたいなもの。想定されていない。だから本能という名のゲームの設定も、反応しようがないのよ。だからガブリエルもあたしから『あなたの婚約者なの!』って言われても『今、まさに神殿で婚儀を挙げるところ!』って言われても、フリーズ状態でそのまま流されること間違いなし。後はもうあたしの手練手管で、既成事実を作り上げてしまうから大丈夫」
「え……柚乃、そんなに経験が……」
「ゲームではね。で、ここはゲームの世界だから」
柚乃の目が妖しく光る。
「……じゃあ、ガブリエルは柚乃に任せるのでいいのね?」
こくりと柚乃は頷いた。
「柚乃とガブリエルが結ばれれば、ソフィアはガブリエル攻略ルートから外れるわけだよね」
「そう。でもね、そこからが少し難易度が高い。まず、今の状況って、ウリエルがソフィアとマティアスに、魂に刻まれた記憶を見せていないと思うの。つまり二人とも前世の記憶がない。だから二人が恋に落ちない」
それは柚乃が言う通りだ。あんなに余所余所しいソフィアとマティアスは、小説では見たことがない。
「まあ、ガブリエルを攻略するルートに入りつつあるから、ウリエルが記憶を二人に見せていないのかもしれないけど。とはいえ、ガブリエルがあたしと結ばれたら、白紙に戻る。だからウリエルには禁忌をおかして、二人に記憶を見せて欲しいのよね」
基本、天界に天使として召された時点で、前世での記憶は失われる。
でもマティアスとソフィアは、前世で両想いだ。
その時の記憶がよみがえり、邪魔さえ入らなければ、二人はゴールインできるはずだった。
そしてその記憶をよみがえらせるためには、二人のそれぞれの魂に刻まれた記憶を見せる必要がある。そしてそれができるのは大天使であり、実際にそれを行うのが小説でもゲームでもウリエルだ。
ただ、前世の記憶を見せるのは禁忌。
ウリエルはマティアスとソフィアに前世の記憶を見せ、主の怒りをかい、地上へ人間として堕とされてしまうのだ。
ただ、ウリエルはプレイボーイなので、地上へ人間として堕とされても、嬉々として女性達と情事を重ねるだけのように思えた。つまり、堕天することへの抵抗は、ない。むしろ窮屈な天界より、奔放な悪魔でいられる魔界を好んでいた。自由気ままに女を愛せる人間として地上にいることを、小説のウリエルは喜んでいた。
とはいえ。
小説でのガブリエルは、ウリエルが地上へ堕とされ、人間として修業する身になったことに怒っていた。そしてその原因を作ったマティアスとソフィアに怒りの矛先が向かい、結果、二人の恋路を邪魔する。
「柚乃が難易度が高いと思うのは、ウリエルが二人に前世での記憶を見せて、地上に堕天することでガブリエルが怒って、マティアスとソフィアの恋路を邪魔しちゃうからだよね?」
すると柚乃は首を振る。
「二人の恋路は邪魔させないよ。だってガブリエルのことは、寝所から出さないようにするから。しばらくの間。ハネムーンだから、って言って。その間にソフィアとマティアスには、とっと神殿で婚儀を挙げてもらえばいいと思う。むしろ、ウリエルに二人に記憶を見せてくださいって頼む方に、難易度の高さを感じている」
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次回更新タイトルは「いざとなったら色仕掛け!?」です。
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