47:驚きの作戦
「カウンセリングルームに足を運ぶ……。どうやって仕向けるの?」
柚乃は即答する。
「そんなの簡単よ。あたし達は夕方、浴室の清掃の『役割』があるでしょ。で、チームにはオーブリーがいる。彼、ゴリマッチョでしょ。で、風呂場の清掃なんて肉体作業だから。褒めまくればいいのよ、あんたと私で、オーブリーを。思春期のアクラシエルは、すぐカウンセリングルームに駆け込むわよ。女子の関心はマッチョにあるけど、自分は華奢。どうしよう……、ってね。あとはラファエル様にお任せすれば大丈夫」
そんなことでうまくいくのかと思ったが……。
「ゲームの設定という名の本能が、アクラシエルとラファエル様に作用するから大丈夫よ」
そう柚乃は断言する。そして「それよりも」と、私の顔を見る。
「アクラシエルは楽勝として、今一番ヤバいのはガブリエルでしょ。ガブリエルとソフィアが両想いになるのを、絶対に阻止しないといけない」
阻止できなければ、白い炎に焼かれて私はジ・エンドだ。
とはいえ、阻止するというのなら……。
「それって悪役令嬢ポジションのアリエルの出番?」
柚乃が爆笑する。
「大丈夫。ここはあたしが動くから」
「柚乃が動くの?」
柚乃が思いついた作戦はこうだ。
まず、アイテムを一つ手に入れる。
それは「忘却の矢」だ。
忘却の矢というのは、天使の治療のために使われるアイテムだった。天界と魔界の間では、繰り返し戦が起き、心を病む天使が多かった。元々天使は生命を奪うことを良しとしない。例え悪魔でも、その命を奪うことに心を痛めていたのだ。そこで辛い戦の記憶を消すために使われるのが、忘却の矢だった。
通常、矢を放つ時、どれぐらいの記憶を消すかは、放つ者が調整していた。そしてこの矢は、なにも弓につがえて放つ必要はないのだという。
だから弓矢を扱えない柚乃や私であっても、矢をガブリエルの体のどこかに突き立てることができればOKだった。矢が刺されば記憶が消え、でも体は傷つかない。
で、この矢を使い、まずソフィアの記憶をガブリエルから消す。そして代わりに柚乃が、自分がガブリエルの婚約者だと信じ込ませる。しかも二人はまさに、神殿で婚儀を挙げようとしていたと思い込ませる。そしてそのまま神殿に入り、ガブリエルと結ばれるのだという。
年齢に関して柚乃は「こっちの世界でも、もう18歳になったし。前世の世界の法律的にも、問題ないでしょ。というかもう生前の世界に戻ることもないと思うけど」そう言って笑うのだが……。
「柚乃、ちょっと待って。その作戦、完全に机上の空論に思える。仮にこの方法が上手くいくとしても、柚乃を犠牲にしたくない」
「まずね、カナ、机上の空論ではないわよ。忘却の矢がある場所は分かっている。天界救急本部の診察室になら、必ず装備されているから。だから簡単に手に入る。プレイしている時に、必要なアイテムとして何度も手に入れているから、間違いない」
柚乃は自信満々だ。
「柚乃、忘却の矢はそれでいいとしても……。婚約者だって、そんなに簡単に信じるもの?」
「信じるわよ。何せ記憶がないわけだから。それに天使が健気に涙目で『覚えていないのですか⁉ 私のことを忘れてしまったのですか⁉ あんなことやこんなこともしたのに、なかったことにするのですか』って言えば、善性の強い大天使だったら、無碍にはできないわよ」
思いっきり、大天使の善性につけこむわけか。
「でもだからって、素直に神殿に行く?」
「傷ものにして捨てるのか、と迫るわよ。大天使たるもの、乙女のあれやこれやを奪っておいて、責任回避なんて、できないはず」
ソフィアの記憶がなければ、ガブリエルに好きな人はいない。
柚乃がからそこまで言われ、拒む理由は見つからない。
それにこの世界(天界)は、性善説で成立している。
柚乃が嘘をつき、結婚を迫っているなんて、ガブリエルは想像もしないだろう。
そして大天使の善性が、拒むことを認めない……。
「……じゃあそれでガブリエルは納得するとして……。忘却の矢は、どこかに突き立てればいいって言うけど、具体的にはどう使うわけ?」
「それは簡単。本当にどこかに突き立て、『今から三日前の記憶を忘れさせてください』と主に祈るだけ。基本、天使の力は祈りによる力だから、これでOK」
「そんなに簡単なの!?」
驚く私に、柚乃が笑いかける。
「だって、そんなところ難しくしていたら、プレイヤーが怒るでしょ。格ゲーや謎解きゲームじゃないのだから」
それもそうだ。
「それとカナは私が犠牲になる……と思っているみたいだけど、あたし、ガブリエル様と夫婦になるの、むしろウエルカムだから」
「!? そうなの!? もしかしてガブリエル推しなの?」
すると柚乃は突然リアリストになる。
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