44:何者!?
な、なぜ私のフルネームを知っている!?
も、もしかして知り合い、とか!?
「……確かに私は雛月カナですが、私のフルネームを知っているということは……あなたは私の知り合い、ですか?」
「……なんとまぁ。カナ、あたしだよ、あ・た・し。川口 柚乃だよ」
「ええええ、ゆ、柚乃なの!? どうして!?」
「どうしたもこうしたも。聖女物語シリーズの新作、『聖女物語~赤の章~』が」
「! え、何、聖女物語シリーズに新作が出るの!?」
「そう。そうなんだよ。赤の章で、ついにフェルナンのルートが解禁になるのよ!」
「マジで!?」
思わずエルサと手を合わせ、飛び上がって喜んでいたが……。
「……って、私達、死んでいる……よね?」
柚乃は手を離し、ぽりぽりという感じで頭を掻いて、ため息をつく。
「そう。カナ、あんたを発見した時、もう体は冷たいし、なんか硬いし、間違いなく死んでいたよ」
やっぱり。そうか。
「金曜日の深夜よ。赤の章の発売情報をつかんで。カナにメッセージ送ったの。でもさ、返事なくて。土曜日になっても日曜日になっても既読にならない。おかしいと思ったよ。多分、この三連休で、カナは私が渡した試供版のゲーム『千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~』をプレイしているんじゃないかなーとは思っていたの。
でもどっぷりハマったとしても、食事とトイレはするでしょ? そのタイミングで絶対にメッセージみるはずでしょ。それを見ていないっておかしいと思ったのよ。
というかさ、その前にその試供版渡した日。一緒にご飯食べたでしょ。その時にカナ、不吉なことを言っていたのよ。なんか手が痺れる、とかさ。時々刺すような痛みが頭にあるとかさ。
あの時は、仕事でストレスがたまっているとか、ゲームのやりすぎでは、とか言って笑いあったりしたけど……脳に腫瘍でもあったのだと思うよ。だって月曜日の朝に合鍵であんたの部屋に入った時、強盗にでも襲われたのかと思ったけど、見た限り怪我はないし、血だまりがあるわけでもないし。これは心臓麻痺か脳溢血とかで、ぽっくり逝ったと思ったよ」
柚乃は、大学からのオタク仲間で、共に一人暮らし。もちろん恋人がいないところも同じで。新型コロナウイルスが流行した時、ぽっくり逝って一週間以上発見されないのはヤバイとなり、合鍵を交換していた。
突然連絡がとれなくなったら、互いの無事を確認できるようにするために。
「柚乃、約束、覚えてくれていたのね」
「まあね。でもまさか本当に死んでいると思わなかった」
思わずしんみりしてしまう。
「でも驚いた。カナ、まさにあのゲームをプレイしようとして息絶えた、って分かる姿だったから」
「え、マジで……。ちょっと恥ずかしいのだけど」
「だからね、あんたの手からゲームを取り上げて、こっそり隠そうしたのよ」
持つべきものは友だ。私の醜態が世の中に晒されないようにしてくれたのだ。
「ところがね。その瞬間、今度は私よ」
「え?」
「なんか心臓を握りつぶされたみたいになって。気づいて目が覚めたら、この世界にいたわけ」
私は思わず絶句する。
「いや、私さ、実は子供の頃、心臓バイパス手術を受けことがあってね。昔はひ弱ちゃんだったのよ。だから病室で漫画読みまくりで。だから、うっと来た時はもう諦めていたわ」
「そうだったのね……」
「君たち、休憩は十分までだよ。作業、再開して」
突然、上級天使に話しかけられ、柚乃と私は飛び上がって驚き、顔を見合わせて笑いあう。
「あ、あの、話し込んでしまい、彼女も私もトイレに行きそびれてしまいました。申し訳ありません。トイレに行ってもいいですか?」
私が尋ねると上級天使は「生理現象を我慢するのはよくないですよ。早く行ってきてください」と答えた。
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次回更新タイトルは「S的な傾向」です。
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