36:見知らぬ美少年に起こされる
帰宅してからは本当に大変だった。
慌てて宿題をやって寝る準備をして、ベッドに潜りこむ。
それでもいつもより寝るのが遅かったので……。
「アリエル、起きないと。学校、遅刻する」
そう声をかけられるまで、ぐっすり眠り込んでいた。そしてその声を合図に、私は慌てて体を起こした。
すると。
部屋の中に見知らぬ男子がいる。
マッシュショートに琥珀色の瞳。眉毛はきっちり整えられ、キトンの上に瞳と同じ色のマントを羽織っている。
つまり、血色のいい肌をした美少年が、部屋にいた。
ビックリした。
さっきの声はアクラシエルと思ったが、違ったのか。
なんか、ウィーン少年合唱団とかにいそうな美少年だな。
というか……。
未だ天界にきて慣れないのは、部屋に鍵がないことだ。
性善説で成立しているとはいえ、鍵がなければ部屋には誰でも入って来られるわけで。プライバシーなんてあってないようなものだった。
いきなり見知らぬ美少年に起こされるとか、天界ならではだ。
しかもこんな美少年に、寝起きの顔を見られるなんて……。
「えっと、何か用でしょうか?」
私が尋ねると、美少年は吹き出して笑う。
「アリエル、寝ぼけている?」
え、私の名前を知っている?
というか、声、アクラシエルに聞こえるのだけど……。
「朝食、用意しておくから早く準備しなよ」
美少年はそう言うとキッチンへ向かい、慣れた手つきで準備を始めた。
なんで、カッティングボードやブレッドナイフの場所、知っているの……?
私は茫然としてその後ろ姿を眺める。
その身長、すらりとした手足。ストロベリーブロンドの髪……。
「アクラシエルなの!?」
驚愕の思いでそう叫ぶと、美少年は振り返った。
「そうだよ、アリエル」
◇
アクラシエルが用意してくれた、サラダとフルーツとトーストを食べながら。私は未だ信じられない気持ちで、目の間に座るアクラシエルを眺めていた。
腰まであったストロベリーブロンドの髪を、こんなにバッサリ切ってしまうなんて……。
信じられなかった。
「なんだよ、アリエル。さっきからガン見して」
声はアクラシエルなのに、話し方までなんだか変わっている。
「どうして、急に髪切っちゃったの?」
「別に。急にってわけじゃないよ。本当は四日前に切るつもりだった。でもアリエルが足裏マッサージをやるっていうから。でも昨日、思いがけず時間ができた。だから街へ行って、髪を切っただけだよ」
私はそこで、改めて理解することになった。
いろいろ歯車が狂っている理由を。
四日前。
そうソフィアが天界へ来た日。
きっとソフィアは、アクラシエルに会うはずだったのだ。
髪を切り、マッシュショートの美少年に変身したアクラシエルに。
アクラシエルと出会ったソフィアは、ホワイト・ベーカリーの二階の部屋に案内され、騎士ではない『役割』につき、類まれな天使の力を見込まれ、学校へ来るはずだった……。
それなのに私が足裏マッサージのために、街へ行こうとしたアクラシエルを引き留めてしまった……。だからソフィアはガブリエルに会うことになり……。
思わず盛大なため息をつく。
「……! アリエル、なんだよ、その反応。……そんなに、この髪型、似合っていないか……?」
「え、あ、ううん。なんでもない。いや、似合っているよ。美少年に見える」
答えながら、トーストにジャムを塗る。
「……! 本当に!? そうか。似合っている……か」
アクラシエルは嬉しそうに、自身の髪に触れた。
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