29:可憐だが凛として、でも……
マティアスの視線を追い、私は驚愕する。
確かに金髪碧眼の女性天使の騎士だった。
左右の髪を少し残し、残りの金髪は、後ろにきっちりまとめられている。
キリッとした瞳は綺麗な碧。手足はほっそりとして、肌は雪のように白い。
腰には剣、手には弓、背には矢筒をおっている。
可憐だが凛とした女性天使の騎士は、純白の翼を収め、ゆっくり広場の方へ歩いてきているのだが……。
キトンにべっとり血がついている。頬にも飛び散ったらしい血がついている。あんなに血がついた状態で帰還した天使を初めて見た。
初めて……?
いや昨日もあの天使を見た気がする……。血はついていなかったけど。
私は目を凝らし、女性騎士の顔をもう一度見ようとした。でも丁度神官が近寄り、顔が見えない。
神官がキトンを脱がせた。
下着姿が一瞬見えたが、抜群のスタイルだった。
豊かなバスト、くびれたウエスト、ツンと上を向くヒップ。
手足はすらりと長い。
神官の癒しの力が発動するその刹那、見えた。
あの顔は……。
まさかとは思うが……、あれがソフィア……では?
剣も持っていたが、弓矢も持っていた。
「マティアスさん、あの天使かもしれないです……」
「!? あの血まみれの天使が、アリエルの知り合いなのか!? お前と真逆じゃないか」
真逆?
何が真逆か分からないが、奇しくも思い当たることはある。
もちろんマティアスはそんなことは知らないだろうから、別のことを指していると思うのだが。
私が思い当たったこと、それは……。
小説ではアリエルが悪魔狩りに出ていて、ソフィアは天界にいるわけで……。
もし王道なルートが選択されていたら、悪魔狩りから帰還したのは、私、アリエルだった可能性もある。そしてソフィアがそれを、見守っていた可能性もなきにしもあらず。
しかし今は、それはどうでもいい。
ソフィアかどうか、確認すべしだ。
「とりあえず彼女に会ってみようと思います」
私とマティアスは、ソフィアが向かってくる方向に、先回りすることにした。
「この辺でいいのでは?」
マティアスが立ち止まる。
私も立ち止まり、こちらへ向かってくる女性の天使を見た。
その瞬間。
確信した。
間違いない。ソフィアだ。
悪役令嬢の本能……ゲームの設定が、あれはソフィアだと告げている。
ソフィアは歩きながら、血のついた頬に手を添えた。
手を離すと血は消えている。
自身の癒しの力で、血を清めたようだ。
じっと見ていたからだろう。
ソフィアが私を見た。
ゲームのパッケージに描かれていたソフィアより、凛としているし、目力もあるが、ソフィアに違いない。
「あの、ソフィアさんですよね?」
少し駆け寄り、私は話しかける。
ソフィアはゆっくり歩みを止めた。
「はい。そうですが」
やっぱりソフィアだ……。
「ホワイト・ベーカリーの二階に住んでいますよね?」
「ええ、そうですが」
名前と住んでいる場所を知っていることに、何かを感じとったようだ。
ソフィアの顔に警戒心が芽生える。
「私、あそこのパンが大好きで」
持っていた紙袋を見せる。
その瞬間、ソフィアの顔が緩んだ。
やっぱりホワイト・ベーカリーのパンが、ソフィアは好きなのだ。
「食べきれなくて。もうお店は閉まっていますよね。よかったらどうぞ」
ソフィアの顔が笑顔に変わる。
「……ありがとうございます」
なんの疑いもなく、嬉しそうに紙袋を受け取った。
「ホワイト・ベーカリーの二階に住んでいるなんて羨ましいです。誰に紹介してもらったのですか?」
その時。
「ソフィア、どうかしたかい?」
!!
アリエルのゲーム設定が反応する。
この美しい声は……。
「アリエルじゃないか。どうしてここへ? というか、ソフィアと知り合いなのか?」
ガブリエルだった。
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次回更新タイトルは「やることしか考えていないだろう!!」です。
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