25:乙女ゲー万歳!
……!
て、手が……。
私の手にマティアスがふ、触れている……。
「……? 寒いのか?」
!?
緊張しすぎて手が震えていた。
それなのに。
「少し、こっちへ来い」
「!?」
「ほら、早く」
「は、はい」
!!
か、体がマティアスに触れている……!
た、体温を感じている。
その時だった。
ふわっと優しく空気が動いたと思ったら、マティアスは翼を広げていた。
つまり、私は純白のマティアスの翼に包まれていたのだ!!
「これで少しは温かいか?」
もうドキドキし過ぎで血流はよくなり、暑いぐらいになっている。
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
必死の思いで返事をする。
小説でマティアスは、ソフィア一筋だ。
だから私にこんなに優しくしてくれるなんて、想像もできなかった。
乙女ゲー万歳!
感動で泣ける。
「食べないのか?」
「!!」
自分からパンを食べようと誘っておきながら、まだ一口もパンを食べていない。
というか、袋からパンを取り出すことさえ、していない。
私は慌ててパンの袋に手を伸ばそうとした。
すると。
「ほら、うまいぞ」
マティアスが蜂蜜をつけた胡桃パンを、口にいれてくれた。
「……!!」
こんなこと許される!? 許されるわけがない。
ソフィアのことをいじめたりしていないけど、本来ソフィアがされるべきことを私がされているなら……。
フラグが、フラグが……。
それでなくても既にガブリエルに恋しているのに。
そう、ガブリエルに恋をしているはずなのに、なぜこんなにマティアスにときめく!?
……いや、ときめかない方が無理だ。
こんなに男前で優しいのに、イケメン耐性以前に、男に対する耐性がない私には……この甘々なシチュエーション、厳しすぎます……。
「うまいだろう?」
また破壊力のある笑顔を向けられ、ホント、心臓発作が起きるかと思った。
なんとかそれを乗り越え、返事をする。
「は、はい。美味しいです」
冷静になるのだ、私。
マティアスにくらくらしている場合じゃない。
普通に、普通にするの。
やればできる。
これも仕事の一環だと思おう。
マティアスにときめかずに会話をする。
私は袋からコーンブレッドを取り出し、半分にした。
「これも蜂蜜をつけると美味しそうです」
半分にしたパンを差し出すと、マティアスはすんなり受け取る。
「お前は、名はなんというのだ?」
「あ、はい。私はアリエルです。10日間ほど前に天界に来て、今は学校に通っています」
「上級天使なのか。何とも言えない気品があると思ったが……なるほど」
気品!?
気品があるなんて、前世でも言われことがなければ、天界に来てからも初めて言われた。
アリエルのゲームの設定で「気品がある」となっているのだろうか!?
いろいろ頭の中で思うことはあったが、会話を続けるため、マティアスに尋ねる。
「あなたのお名前は?」
当然名前は知っている。でもマティアスは、私と初対面だと思っているわけで。
これはセオリーにのっとり、尋ねることにしたのだ。
「俺の名はマティアスだ。天界に来たのは三日前。『役割』は天空図書館の係員だ」
なるほど。小説でもマティアスは図書館の係員の『役割』を担っていた。
ゲーム版でもそこは踏襲したのか。
「お住まいは街ですか?」
「ああ。香油の専門店の二階に住んでいる」
なんと……!
「納得しました。ブレンドした香油を使っているなんて、オシャレだと思いました。ただの天使だとそこまでしませんから」
マティアスが微笑を浮かべる。
この微笑で、百万人ぐらいの女性が失神しそうに思えた。
「『役割』を終えた後は暇だからな。せっかく一階に店があるならと、利用することも多いい。あとはこの丘を散歩したり。……丁度、今日も散歩をしていて、お前を見かけた」
「それで瓶を開けてくださったのですね。ありがとうございます」
「いや、おかげで俺も夕ご飯を食べることができた。それに一人ではなく二人で」
マティアスの笑顔は、なんだか寂しそうだ。
……本来出会うべきソフィアが、悪魔狩りなんかに行っているから……。
大丈夫。マティアス。私がちゃんとソフィアに会わせてあげる。
「アリエルは、香油の店やこの丘、このパン屋にもよく来るのか? 上級天使はここではない、高級食材などが揃う別の街を利用することが多いと、聞いているが」
「‼ そんな街があるのですね。知らなかったです」
「そうか。まだ天界に来て、日が浅かったな」
マティアスは蜂蜜をつけたコーンブレッドを、口に運んだ。
私も一口コーンブレッドを食べ、率直な感想を伝える。
「でも私はこの街のお店を気に入っています。香油のお店の天使も親切でしたし。ただ学生なので、本来、授業が終わったら、家で宿題をやらないといけなくて……。だから気に入っていると言っても、なかなか来られないのですが」
「……なるほど。大変だな」
「そうですね」
お互いにコーンブレッドを頬張った。
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次回更新タイトルは「お前に付き合う」です。
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