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番外編其の二 サリエスの一日

 番外編第二弾です。これはルナさんのリクエスト作品です。

 朝、大きくもなく小さくもなく、適度な大きさで建てられた家で物語は始まる。


 気持ち良さそうに眠りすやすやと寝息をたてる赤ん坊と、それを眼を輝かせて見守る金髪碧眼の絶世の美女。


「ねぇねぇ、龍斗。みてみてほらかわいーよ」


 その女性、サリエス・クラージはドアを開けて入ってきた夫に向けて輝く笑顔を向けた。


 ドアを開けて入ってきた男性、篠原 龍斗はサリエスの無邪気な笑顔を見ると少しまぶしそうに眼を細めながらサリエスの頭を撫でた(すぐに甘やかす所は海斗と似ているのかもしれない)。


 えへへーとサリエスは緩みきった笑顔を見せる。龍斗はサリエスの肩を抱いて一緒に気持ち良さそうに眠る我が子を見つめた。嬉しそうに見上げてくるサリエスをみて龍斗は苦笑しながら口を開いた。


「・・・息子に手間暇掛けるのはいいが、こっちも少しはかまってくれないか?」


 そう、サリエスは海斗が生まれたときからずっと海斗にべったりだった。食べるときも寝るときもずっと。


 サリエスはあっ、と声をあげてそうだった、と今気がついたように言った。


「そうだったって・・・まぁいい、海斗の世話は任せる。私は依頼をしにいってくる」


 サリエスは思わずえっ、と声をあげた。今から愛する旦那に思い切り甘えようと思っていたのに出鼻をくじかれた思いだ。


 龍斗は最後にサリエスの頭を一撫でして出て行った。


「・・・怒っちゃったかな・・・」


 そういえばここ一ヶ月龍斗と一緒に寝たりはしていない。せっかく結婚したっていうのにこれじゃあ意味がない。


 今度からは気をつけよう、としっかりと自分を戒めて海斗の寝顔を見守った。





 サリエスは今、海斗を連れて買い物にきていた(幻術をかけてサリエスの姿は別の人物に見えているので騒がれる心配はない)。


 海斗は道行くものすべてに興味があるように眼を輝かせていた。


 それを見ながらサリエスは献立を考えながら歩いていた。ふと前を見ると、柄の悪い男が果物屋のおばあさんにたかっているのが見えた。


 サリエスは海斗に不可視の呪文をかけるとその柄の悪い男達に向かった。


 柄の悪い男達は近づいてくるサリエスを見ると眉をひそめて突っかかってきた。


「あん?なんか用か?」


「んだ?やんのかこら?」


 男達はサリエスを品定めするように見始めた。サリエスは幻術を解いて本来の、世に轟くサリエス・クラージの姿に戻った。


 その姿を知らぬものはおそらくこの世界にはいないだろう、そしてその力も。


 その証拠にチンピラどもは震え上がっていた。自分達が喧嘩を売った相手がサリエス・クラージだったことに恐怖して、縮こまっていた。


「・・・即刻立ち去りなさい」


 サリエスが低い声で脅しを掛けていうと、はいぃ!と奇妙な声をあげて逃げていった。


 しきりにお礼を言ってくるおばあさんや褒めたたえる観衆をなんとかやり過ごしながら海斗のいる所まで戻った。


「・・・・・・・・あれ?」


 しかしそこには海斗の姿はなく、代わりに一枚の紙が置かれていた。




『この赤ん坊を返してほしくば**町の**公園まで来い。一人でくるんだ。警備隊に連絡したらこの子は殺す」




 ぼっ


 サリエスが読み終わったとたんにその紙は音をたてて炎上した。顔を上げたサリエスの眼には深い怒りの色が見えた。それは海斗を危険にさらした自分への怒りと海斗を攫った愚か者への怒りだった。






 目の前にいる鬼神のような気迫をしているサリエスを見て、男は心底後悔していた。この女には手を出すんじゃなかった、と


 数分前まではうまくいった、と男ダリエス・ジャックはほくそ笑んでいた。


 ダリエスはある山賊の頭をしていた。しかし自分の留守中にサリエスによって子分がすべて倒されてしまい、解散を余儀なくされた。


 隠れ家に戻った後には誰もいなく、次の日にはサリエス・クラージが山賊を見事捕らえた、というニュースが広まっていた。


 ダリエスはサリエスを恨み、なんとか復習する機会を狙っていた。そして、数ヶ月に及ぶ調査の末、サリエスがここ辺りに住んでいる、という情報を掴んだ。


 頭つとめていただけあってダリエスの魔術の腕はそこそこ高かった。いや、中途半端に高かった。中途半端な強さで自信をつけてしまい、サリエスという大物に手を出そうとしたのがダリエスの間違いだった。


 サリエスの幻術を破り、サリエスが毎日のように海斗と買い物に来ていることを知ったダリエスははした金でちんぴらを雇い、サリエスの注意を惹き付けさせると同時に海斗を誘拐。脅迫状まがいのものを送りつけた。


 計画は上手くいった。順調にサリエスは一人で公園にきてダリエスに殺されるはずだった。が、サリエスが公園に姿を現したとたんにそんな思いは砕け散った。






 公園に着いたサリエスは海斗をベンチに寝かせてその傍らに立つ男を見るとすぐさまに呪文を唱えた。


「Do not move」


 その呪文により、男は全く動けなくなった。眼だけをそわしなく動かす男を真っ正面から睨みつけながらサリエスは公園に入った。


「Do not breathe」


 うっ、と男は息を詰まらせたようにして眼を見開いていた。


「Spit out breath」


 がはっ、と男の口から息が吐き出された。しかし、そのまま吸うことはなかった。酸欠で倒れた男を冷たく見下ろし、止めの呪文を唱え始めた。


「Die・・・・・」


「Cancellation」


 しかし、そこでレジストの呪文が邪魔をした。


 そこでようやくサリエスははっと我に帰った。


「・・・まったく、お前は見境っていうもんをしっかりとつけろ」


 そこで耳に響く厳しくも優しい声。サリエスがこの世で一番愛する旦那の声。


「海斗のことで腹が立つのは分かるが、眼を離したお前も悪い。・・・少し反省しろ」


 そうたしなめられて気落ちしてしまう。俯いて後悔しているとぽん、と頭に柔らかい感触が広がった。


「ま、海斗を真剣に心配したっていうのもよく分かるから・・・その、なんだ、元気出せ」


 ぽすっと龍斗の胸に顔を押し付けられる。


 深い安堵感に包まれて、サリエスは眼を閉じた。海斗はそんな二人の側で気持ち良さそうに寝ていた。







 どうだったでしょうか?他にもリクエストがありましたらどんどんおっしゃってください。ただし、カップルリングを壊す話は筆者が書けませんのでどうかご容赦を

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