第十四話 本当の力
今回は戦闘です。海斗の全力を書いてみました。
場所は移って格闘場。観客席には早紀、龍夜、志乃とおなじみなメンバーに加え、蘭などの教師陣も何人か来ていた。
「さぁて、はじめるか」
「・・・・しかたない」
「やるしかないですよ?」
「がんばれ―海斗ー」
「やっちまえ、海斗」
「頑張ってください、海斗君」
と一通り台詞を言い終えてから準備に入る。
「It is dark sword appearance from darkness」
「Make birth than light,and my sword appear,Chinese holly sword」
京介の手には漆黒で幅広の剣が、海斗の手には光り輝く神々しさをもたたえた日本刀が握られていた。
早紀達は海斗の光り輝く剣に眼を奪われ、教師陣は二人の詠唱破棄、構築スピード、それによってできたものの出来を見て思わずうなっていた。
京介は海斗が創造魔法が使えるが分かって眼を丸くしていたがすぐに不適な笑みに変えた。
「はっ、そんな細い剣で俺の攻撃を凌げると思うな?・・・篠原流剣術《烈破》」
京介が無造作に剣を持ち上げ魔力を込めて振り払うと魔力が塊となってものすごい勢いで海斗に向かって行った。
「・・・篠原流剣術《斬破》」
海斗が剣を横に流れるように薙ぐと、剣からは細く、研ぎすまされた魔力が先ほど京介が放った《烈破》遥かに超えるスピードて飛んで行った。
それは京介の放った攻撃を音も無く切断するとそのまま京介に向かって飛んで行った。
京介はそれを無視して前に突っ込む。
「Protect him」
緩やかに、しかし凛とした声で香が詠唱した。
京介をを魔法のシールドが包み、海斗の《斬破》を打ち砕いた。
それを確認して、京介は笑うと一気に海斗の間合いに来て攻撃を続けた。
「篠原流剣術《朱雀》」(すざく)
「篠原流剣術《双狼》」(そうろう)
早紀や龍夜達にはぶわっと京介の腕が増えたように見えた。
それほどの速度で京介は剣の連続攻撃を海斗に叩き込んでいた。
頭、胸、腕、腰、足と海斗のありとあらゆるところに向かって剣を走らせる。
しかし海斗は冷静にそれをすべて防ぐ。
海斗の剣は狼のように素早く、力強いものだった。
それに対し、京介の剣は美しく、剣舞を思わせた。
「The flames of hell of the heaven and earth here,burn down an enemy by the flames of hell」
凛とした声によって流れるような詠唱がなされたとたん、教師陣の顔色がさっと青ざめた。
この魔術は高位魔法の中でもさらに上位にあたる魔法でとうてい彼女の年齢で達することなどできない領域だ。
それどころか、今この学院にも使えるのは彼女を含めて三人だけだろう。
京介はばっと海斗から距離をとった。
その瞬間に海斗に向かって天壌の業火が襲いかかる。
もちろん攻撃力は折り紙付きで、あわてて止めに入ろうとしたが
「water」
という海斗の水よ、という一言で発動した瞬間にじゅわっという音とともに消し去られた。
炎は水に弱い、というのは誰でも知っている。だが、それでも、初等部で習う術で人生の大半をかけてたどり着く呪文にあっさりと勝つなどと誰が想像しただろう。
香の攻撃に込められた魔力と技の高度さにビックリしていた龍夜達だったが、それが海斗の攻撃によって消された時には声もでない様子だった(早紀だけは海斗すごーいと眼を輝かせて)。
「くっ!」
「そんなっ!?」
兄弟の切羽詰まった声が聞こえた。それほど今の攻撃には自信があったに違いない。実際それに恥じぬ攻撃力はあったのだが、海斗にとっては赤子の指をひねるようだ(手ではなく、指だ)。
アイコンタクトをしてから今度は同時に仕掛けることにしたらしい。
「篠原流剣術《飛燕》」(ひえん)
「I manifest phoenix here」
まずは香の召還術により、不死鳥が顕現した。
その不死鳥が甲高い鳴き声を上げて一気に俺の方に向かって突っ込んできた。
そこで京介が体勢を低くして風のように翔る。
不死鳥が上から、京介が下から攻める。
「A blade of the darkness」
「篠原流剣術《雅》」(みやび)
海斗の頭上に黒い刃が多数出現すると、それはブーメランのように旋回しながら不死鳥に向かって行った。
ざくざくっと全身を切り刻まれ、不死鳥が音も無く崩れた。
眼にも留まらぬ早さで走り込んで斬りつけてきた京介には神速の一撃を叩き込んで吹き飛ばした。
「ぐっ!」
京介は吹き飛ばされた体勢から片手を地面についてとんぼ返りをしながら香の元へと下がった。
「・・・どういうことだ?」
「ええ、彼からは全く覇気を感じませんね」
大きな口を開けてあくびなんかをしている海斗を見て京介はサリエスから言われた言葉を実行しようとしていた。
『早紀ちゃんっていう娘に攻撃しちゃ絶対にだめよ?海斗が本気になっちゃうから』
彼女はここでまた意地の悪い笑みを浮かべていたのだが、京介は残念ながら気付いてなかったようだ。
「香、あいつを少しでいい、足止めしといてくれ」
「いいけど・・・なにするの?」
「いいから」
少し怪訝な顔をしながらも頷いた姉に頷き返すと準備に入った。
「A storm of the ice」
なにがなんだか、という感じで仕方なく相手を傷つけない程度に戦っていた海斗だったが、あちらが一回作戦会議をしているようなので、志乃の顔を見て微笑み合ったりしたりしていた。
そこで姉の方が詠唱を終えて吹雪を放ってきた。
母さんに教わったということだけはあって普通の奴よりは格段に強い、がそれでも海斗には物足りなかった。
「Protect」
一言唱えて体の前に防御壁を張った。
弾き返しているのに諦めずに吹雪を送り込んでくるので、何か企んでいるな、と思ったら弟の方が動いた。
しかし、こちらの方ではなく観客席の方へと。
不審に思ってスティールの呪文を唱えると、早紀の首筋に奴が剣をたてていた。
初めは何をしているのか分からなかった。そして、次の瞬間自分の愛する、愛しい人が命の危機にある、ということだけは理解した。
そして、早紀が怯えた、どうしたらいいのか分からない、といった表情でこちらの方へと恐怖で潤んだ眼で見てきた。
そこで海斗はキレた。
一気に魔力を解放する。
どぉっと魔力の奔流だけで香をものすごい勢いで吹き飛ばす。
彼女は鉄砲の弾のようなスピードで飛んで行き、壁に激突して沈黙した。
早紀は訳が分からなかった。海斗が圧倒的な強さを見せつけて二人を追いつめていたと思ったら京介がいつの間にか目の前にいて首に剣を突き立てていた。
どうしたらいいか分からず、思わず海斗の方に眼をやると、一瞬で香が飛んで行った。
いや、いつの間にかいなくなっていて、遠くで壁が崩れてからやっと吹き飛ばされたことに気付いた。
そして、海斗の方を見るともうすでにそこにはいなかった。
この娘が大切ならば、俺たちと本気で勝負をしてみろ!
彼はその、このという部分をいうか言わないかのところで姉が一瞬で吹き飛ばされるのを見た。
なっ、と息をのむ暇もなく剣が吹き飛ばされる。
慌てて手の方を見ようとしたがその前に腹に熱い衝撃が来た。
そのまま床に吹き飛ばされ水切りの石のように細かく何回もバウンドして壁に衝突してようやく止まった。
一瞬気を失った。数秒も無いだろうが、危機感にばっと瓦礫を押しのけて出ると、そこにはばかばかしい程絶望的なことが起きていた。
「だいじょうぶか!?早紀」
相当切羽詰まった様子で海斗が聞いてきた。本気で心配してくれてるのが分かって、普段優しい微笑みを崩さない彼がここまで動揺する程自分は彼に思ってもらえているんだ。と実感していても立ってもいられずに飛びついた。
「海斗っ!」
抱きついた瞬間に強く、強く抱きしめ返された。
「・・・よかった・・・」
心の底から安堵した様子の彼がかわいく思えてくすりと笑った。
しかし、次の瞬間海斗の体が固まった。
そして、海斗の体から、衣服がはためく程の量の魔力が吹き出した。
周りの人たちが眼を見開いていると、海斗が詠唱を始めた。
「Flame,destroy all...light darkness wind water」
その凄まじい、というのもばかばかしい程の魔力がどんどんと形を作っていく。
それは球体の形を作っていった。
それ一つ一つがドラゴンさえも一発で消滅する程の威力を持ったものを。
しかもその球体が全部で百個ぐらいになった。
教師陣が恐怖で動けず、龍夜達は見とれているうちに海斗が最後の詠唱を終えた.
「Power of the destruction,all at once sweeping with fire」
すべての球体がぎゅぅっと凝縮して一mぐらいだったものが掌サイズになった.
がらがらと瓦礫を崩して香が這い出てきたが目の前に広がる光景を見て唖然とした。
海斗は怒りの表情で二人を見ると手を降ろした。
二人の顔が恐怖で彩られた。
そこに膝をついて動けないでいる二人の前に一人づつ飛び出してきた.
そして二人同時に呪文を唱えた。一人は太くも、メリハリがついた声で、もう一人は透き通るような美声で。
「「With all my power,make a shield. the shield which I am the strongest in the world,and can hear anyone」」
眼で完全に見える程の魔力を結集されてできたその盾は海斗の猛攻を見事なまでに防ぎきった。
「はぁ、はぁ・・・ここまでとは、想像してなかったぞ」
「はぁ、はぁ・・・やればできるじゃないの、海斗♪」
そう、急に現れた二人とは海斗の父と母であり、この事件の発端となったサリエス・クラージと篠原 龍斗の二人だった。
どうだったでしょうか?最終話の構成ができました。これからも最強の魔術師!をよろしくお願いします。




