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水の精霊にTS転生!   作者: アリエパ
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大事な時に限って奴は

難産でした。導入とかむずいっす。

 明日からは任務の準備段階として戦闘訓練があるらしい。それに私も付き合えとの事だ。

 強くなればそれだけ危険も減る。欠点である練度不足を補えるなら持ってこいだな。それにそこまでやって囮にされるような事にはならんだろう。たぶん。

 そんなこんなで明日の予定も決まったところで、リーシャと共に学校の内容の復習をして時を過ごした。 文字の読み書きはそのうちやれば良いな。うん。


「ん?雨か。」


 不意に薄暗くなり窓を叩く音が聞こえ始めた。潰れた雨粒が細い川を作っていく。


「火よ。」


 リーシャが蝋燭に火を飛ばしたのを尻目に、窓を開けて天に手を差し伸べる。混じり気のない特別な水を味わう。

 手だけでは物足りない。もっと、もっとだ。


「ユニエ?」


「行って来る…」


 窓から飛び出す。全身で玉露を吸い込むと体中に清涼感が満ち渡る。これだ、この感覚だ

 川の水も井戸の水も不味くはない。だが、雨には劣る。やはり私が目指すべきは天候の支配なのだ。



「アハハハ。良い、良いぞ。これだから辞められない!」


 ああ、これだ。この感覚だ。


 一頻り雨を楽しみ部屋に戻ると、リーシャは夕食を食べていた。


「満足した?」


「うむ。改めて再確認した。私が求めているものが、私の到達点が。やってやるぞ!雨を降らせてみせる!」


「じゃあ、文字の勉強もしなくちゃね。」


「それとこれとは別だ。」


 そんなこんなで夜になり、リーシャも寝ている。相変わらず雨は降り続いている。これだともしかすると、ルエスは来ないんじゃないか?

 屋上に向かうが、案の定居なかった。駄猫め。相談事がある肝心な時に限って来ないとは。

 まあ、雨があればいいか。リーシャが危ない事に首を突っ込みそうで不安だがな。私がしっかりしてれば良かろうよ。

 雫の落ちていく響に夜の喧騒も灯火も全て飲み込まれて、雨の静謐だけがある。


「ああ、落ち着く。泉にいた頃のようだ…」


 何も知らず、何も気にせず。水が尽きる恐怖も知らず、血の不味さも知らず。ただただ飲んで遊んで。

 確かに誰かと触れ合うのも良い。リーシャと戯れるのも、エルスと話し慰め合うのも。心通わせ親しくなる。それは素敵だ。

 だが、水なのだ。水が一番なのだ。

 側に誰かいるのも悪くはない。しかし、それは水があってこそだ。水が無ければ何も意味がない。

ずっとこの時間が続けば良い。それで満足だ。


ピカッ


 ん!?雷か!?

 そう思った途端、轟音が鳴り響いた。

 やっぱり雷だ!どうしよう、めっちゃ恐い!何故だ!?前世ではこんなの思った事なかったのに!


ピカゴロゴロゴロゴロ…


 さっきより近い!

 思わず部屋に飛び込んだ。こ、恐い!

 ベットの上では呑気にリーシャが眠っていた。うー、耐えられん。気は進まないが、リーシャに…あっ、ベットを濡らしては不味いか。衣を消して。

 そこにまたもや轟音。リーシャに飛びついた。胸に顔を埋めると、少しは楽に…


ゴロゴロドカーン


「ギャー!!」


 落ちた!近くに落ちた!プルプル震えていると、リーシャを起こしてしまった。


「ユニエ?裸?…夜這いなの?」


「いや違うぞ。」


 何を言ってるんだ此奴は。


「じゃあどうしたの?」


 リーシャは眠そうに目を擦りながら聞いて来る。リーシャのボケで少しは冷静になれた。どうする?素直に雷が恐いなんて言えんしな。それでは正に幼い子供そのものだ。


「いやな、その、えーとーーー」


ドカーンゴロゴロ…


「ギャー!!」


 やっぱり恐い!


「カミナリコワイカミナリコワイ…」


 あっ、つい本音が。


「ふふふ、子供みたい。」


 リーシャに抱きしめられる。ああ、落ち着く…いやダメだ!威厳が!でも、少しぐらいこのままでも…


『ママって呼んでも良いんだよ?』


「ママ…ん?!ち、違うぞ、今のは違うぞ!ノーカンだノーカン!!」


 うう、自然に言ってしまった。言霊か?言霊なのか?そうだ、そうに違いない。でなければ私がママ等と。リーシャめ、よくもやってくれたな。


「おのれ、リーシャ許さーーー」


 ピカッゴロゴロ


「ギャー!!」


「クス、ママでちゅよー。」


 うぐぐ、馬鹿にされてる、馬鹿にされてるぞ。しかし悲しいかな、我が両手はひしとリーシャの制服を握りしめ離そうとしない。


「可愛い子♪」


 おのれぇ、この恨み忘れーーー


ピカッ


「ギャー!!」

:

:

:

 はあ昨夜は散々だった。本当に何故怖くなったのかわからん。精霊になったからか?気にしても仕方がないか。切り替えよう。訓練の時間だ。アルと獣手の鬼人が先生役らしい。


「あら、リーシャちゃんどうしたの?やけに眠そうじゃないの。あっ、もしかして、雷が恐かったのかしら?」


「ふふ、違うよ。ユニエがーーー」


「わー!!わー!!黙ってろ!!」


 慌ててリーシャの口を塞ぐ。が、


「ああ、そういう事ね。」


「違うぞ!違うからな!」


「そうね。じゃ、訓練開始よ!」


 絶対に分かってない。いやまあそれで正しいんだが。


「さて、リーシャちゃんの課題は身体強化魔法をある程度使えるようになる事よ。グラーフが教えてくれるわ。ユニエちゃんは私とよ。」


 そう言う訳でアルが色々と教えてくれらしい。


「ユニエちゃんの得意な事は何かしら?」


 今までの戦闘を思い返してみる。うーむ、霧を使う事か?水を使った攻撃は魔獣にはてんで効果がなかったしな。だとすると、


「回避と索敵だな。霧を使って森とか見通しの効かない場所でも観測できて目眩しにもなる。宙に浮けば大体の攻撃は効かんしな。」


「霧?ちょっとやってみて頂戴。」


 霧を出してみる。白く空間を染め上げ何も見えなくなるが、アルの位置は分かる。


「こんな感じだ。もっと薄くすれば少し精度は落ちるがバレないようにも出来るぞ。」


 次の瞬間、風と共に霧が消しとばされた。この現象、覚えがある。風魔法か。


「悪くなさそうね。ただ私のように上位魔法までマスターした魔法使いは、低コストの範囲魔法が使えるからそれで相殺されてしまうかも知れないわ。だから例えばだけど、魔法を使えない敵を一網打尽にするときか、相手の動揺を誘って奇襲の効果を高めるとかに使うと良いと思うわ。」


 ふむ、やはりそうか。


「他の精霊の戦い方はどうなのだ?水の精霊は皆、私のように戦うのか?」


「んー、よく分からないわ。会ったことはあるけど戦ってる所までは。ごめんなさいね。」


「構わん。」


 まあその内だな。その後はアルから身体強化魔法に対する対策や室内戦闘のコツと実践をしてみた。身体強化魔法と魔法の同時使用は難しいらしい。使われる前に霧を放てば直ぐに接近を許す事は無いとのことだ。

 リーシャとも話し合っていくつかの基本戦術を取り決めた。

 森や屋内に進入する時は私が薄い霧で偵察し、水が効きそうなら喉潰しで窒息させる。不可能ならリーシャが。

 問題は白兵戦時と奇襲された時だが、私が霧を大量に放ち続けて態勢を立て直す事にした。

 明日からしばらくは訓練を続け、作戦は1週間後。

 あまり、やりたくない仕事だな。








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