土の硬さ
もう一度リーシャ視点です。
「さて、まずはリーシャちゃんからやってもらうわよ!」
連れてこられたのは建物の地下室。しかも貴重な光石が壁に沢山埋め込まれてるし、壁一面に鉄板が敷き詰められて頑丈に作られてる。かなり本格的だね。この宿、軍事基地か何かなの?
周りを観察してるとアルラシアが
「リーシャちゃんは火属性よね。あそこに的が並んでるでしょ。あれに魔法を当ててみて。30秒で幾つ当てられるか確認するわ。」
20mぐらいの所に10個の円盤が吊るされてる。でもそれだけだと直ぐに終わっちゃいそうだけど。
「因みに魔道具で障壁を貼ってるから、ある程度の威力じゃ無いと当たる前に消滅するわよ。」
なるほど。障壁がどれくらいの強度なのか知りたいなあ。
試し撃ちが出来ないか聞いてみると、適応力を測るテストでもあるからダメらしい。
「よーい、初め!」
色々と工夫して魔法を行使する。単に大きくしてみたり、魔力の密度を上げて高温にしたりして調べながら火を放つ。密度を上げた方が魔力も時間も効率が良いかな。でもそれを見抜けた頃には、もう終了のカウントダウンが始まっちゃった。
「終わり!」
割と壊せた方だと思うけど。
「リーシャちゃんの魔法制御力はなかなかね。魔力の密度を上げる事に気が付いたのは素晴らしいわ。連射速度もその年にしては大したものよ。ただ一つ気になったのは、火の形状ね。そこにも着目出来てたら満点だったわ。基礎技術は割りかし完成してるから、後は勉強よ。」
基礎は出来てる、らしいね。集落にあった本じゃ限界があったし、これから頑張ろうっと。
そもそも火の形が丸以外にあるなんて知らなかったよ。
「分かったけど、次は何をするの?」
「今度ははユニエちゃんよ。カート軍曹、隣の部屋に案内して上げて。リーシャちゃん、ユニエちゃんがテストをしてる間に、聞いておきたい事があるの。」
アルラシアは不意に顔を引き締めて話しかけて来た。何だろ?
「あなたはユニエちゃんの事をどう思ってるの?」
ユニエをどう思っているか。最初は私はユニエと家族に成りたいって思って、今では夫婦みたいに対等に成りたいって思ってる。
でも残念だけど、私はユニエと対等じゃ無い。ユニエは精霊で、私よりも強い。街にいる今だからこそ、自分がユニエにとって弱者だって思い知らされる事はないけど、森にいた時はいつもユニエに頼りっぱなしだったなあ。
結局の所、ユニエが偶に言う通り彼女が姉で、私が妹になるんだと思う。守護する者とされる者。
それでも私はユニエと一緒に…一緒に居たいだけじゃなくて、守りたい。それが《リーシャ》として名乗り、彼女をユニエと名付けた意味だもの。
だから、せめてこれだけは言おう。断言しよう。
「ユニエは私の、パートナーだよ!」
でも、あくまでも今は。これからもそれだけの関係済ませるつもりは無いからね!ユニエ!
「本当にあなた達は仲が良いのね。」
アルラシアに少しニヤつきながら言われちゃった。
「でもねリーシャちゃん、覚えておいて。殆どの精霊は自分の欲求を満たす事が第一だわ。それはユニエちゃんも同じよ。」
そこで言葉を区切った後、小さな声で
「だから、くれぐれもユニエちゃんを我慢させてはダメよ。」
余計なお世話だって思ったけど、アルラシアの妙に真剣な表情に気圧されてただ頷くしか出来なかった。水を我慢するとユニエがどうなるか?
問いを投げかけようとした時、ユニエとカートが戻って来た。
「さてと、じゃあ二人にはにはカートと戦ってもらうわよ!」
ん?ユニエも一緒に?
「2対1なのか?」
ユニエも疑問に思ったみたい。水以外の事で口を開くなんて珍しいんじゃない?
「そうよ!安心して、カートの方はちゃんと刃を潰してあるわ!」
よっぽど強い人なの?でも立ち姿からは覇気を感じないけど。
「矢はどうするの?使って良いの?」
「構わないわ!魔法も好きなだけ使って良いわよ!」
「私も全力でやるぞ?大丈夫なのか?」
「もちろんよ!あ、カート!もしも負けたら今月は減俸処分よ!」
「へ!?ちょっ、待ってくだせえ、ツケ溜まってるんで、勘弁してくれやせんか?」
私はセーフティーはいらない、と。かなり強いんだろうね。気を引き締めていかないと。
「作戦を立てる時間はもらえる?」
「常在戦場!戦いは唐突に、よ!3,2,1,開始!」
え!?
今後はしばらくユニエ視点。




