表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水の精霊にTS転生!   作者: アリエパ
48/74

真意と新衣

リーシャ視点です


「さあ、今日は街に出るわよ!準備は良い!?」


 朝ご飯を食べ終わったらアルラシアが来た。


「できてるよ。ね、ユニエ。」


「うむ、行こうか。あっ、途中で井戸とかに寄ってくれると助かる。」


 ユニエはやっぱりそれしか気にして無いみたい。精霊だから当たり前かもしれないなけど、他の事にも気を配れば良いのに。装いとか文字の勉強とか。


「大丈夫よ!街中に水場はあるもの!行きましょう!」


 アルラシアは昨日より気合が入ってる気がする。何でだろう?街を案内するから張り切ってるのかな。やっぱり都会の人だとエネルギッシュになるの?疲れないと良いな。

 建物の外に出ると石造りの街並みに出迎えられる。一日経った今でも見慣れないね。集落は豊富な木材資源を使った建築が多かったから、石しか無いと違和感というか圧迫感があって落ち着かないよ。


「あの種族は何だ?」


 上を飛んでいたユニエから声をかけられてそっちを向くと、前を指して不思議そうな顔をしてた。前方をよく見てみるけど


「人影にで見えないよ。」


「うーむ。角の生えた鬼人?なんだが手がやたらと毛深くて長いぞ。ハーフなのか?」


 記憶を探るけど、それに該当する種族は思い当たらないかな。ハーフにしても手が毛深くて長いなんて、どんな組み合わせでも産まれそうに無いよ。


「それは多分、獣手ね。」


 横を少し前を歩いてたアルが軽く振り返りながら話しかけて来る。


「街中でする話でも無いから、後で話すわ。」


 ふーん、獣手ね。まだまだ知らない事だらけ。もっと色々調べないと。

 歩いて行くと、小さな建物に小さな看板のついた服屋さんに着いた。


「ここが今日の目的地の一つよ。ワゴン!私よ!アルラシアよ!」


 アルが小さな戸を叩きながら呼びかけてる。ワゴンって、昨日の昼に食堂で会ったドワーフの人?


「へいへい。本日はようこそらっしゃい。中尉に嬢ちゃん方、どうぞ中に入っちょって下せえ。」


 予想通りドワーフが店から出て来た。招かれるまま店内に入ると、色とりどりの布があちこちに散りばめられたカラフルな内装で、結構可愛い。店主と思わしき筋肉ダルマのドワーフを除けば、だけどね。


「この子の為の制服と軍服をお願い。」


 制服に軍服?服をくれるんだとしても、軍服?子供に?何でかな?


「へい、承りやした。セレナ!来い!採寸だ!」


 ワゴンに呼ばれて出て来たのは、私と同じくらいの背丈の女の子だった。


「大声出さない。耳がバカになる。あっ、アルさん。お久しぶり。元気?」


「セレナちゃん、久しぶりね。ええ、元気よ。ああ、紹介するわね。この子達はリーシャちゃんとユニエちゃん。」


「エルフのリーシャです。」


「ユニエだ。」


 ユニエはそれだけ言うと店内を物珍しそうにキョロキョロしてる。それだけだと伝わらないじゃない。


「ユニエは水の精霊なんです。」


 一言付け加える。


「セレナよ。ドワーフと人間のハーフで、これが親父のワゴン。ドワーフの血が流れてるから幼く見えるかもしれないけど、これでも15歳よ。」


 年上だったみたい。


「じゃ、サイズ測るからじっとしてて。」


 そう言ってセレナはメジャーを広げて、私の腕の長さだったり肩幅なんかの色々な場所を調べ始めた。少しくすぐったいかな。


「これで良し。親父、計測データこれ。リーシャ、来て。靴のサイズ選ばなきゃ。」


 店の奥に入って行くセレナの背中を追おうとした時、


「あっ、ユニエちゃんは待ってて。そっちは狭くなってるから、商品が濡れてしまうかもしれないわ。」


 一緒に行こうとしたユニエがアルラシアに呼び止められた。ユニエは直ぐに


「脱げば問題なかろう?」


 と言って、水の衣を外そうとしていた。止めなきゃ!


「ユニエ、ダメだよ!そんな事しちゃ!」


「む、そうか?」


 ユニエは基本的に水の事以外には無頓着過ぎるよ。精霊ってみんなこうなの?


「仕方ないか。待ってるとしよう。」


 まったく。


「早く来な!」


 セレナに呼ばれて店の奥に入って行くと、沢山の靴が並んでる。赤も青も、黒も白も、多種多様な靴の並んでて凄いなあ。


「そこの台に乗って。」


 メモリのついた台に乗ると、またメジャーを広げて今度は足を調べられる。一頻り測り終えると一つの靴を勧められて、言われるままに履いてみると、少しの余裕を持ってフィトした。

 黒い革で光沢のある、丈夫そうながっしりとした靴。今までは木の蔦で編まれた靴だったから、初めての感覚で不思議。

 歩いてみるとカツカツと硬い音が響く。変なの。


「合ってるみたいだから、こっちも履いてみて。」


 そう言って差し出された靴は、編み上げのロングブーツだった。大きすぎないかな?

 とにかく履いてみると、案の定少しブカブカ。ふくらはぎの半分を覆ってるんじゃないかな。紐を縛って結ぶと脱げないようにはなった。


「大丈夫そうだな。それ履いたままでいいから、あっちに戻るよ。」


 隣の部屋に戻ると、ワゴンが二着の服を持って待ってた。


「靴は大丈夫でちょっか。今度はこの服を試着して下せえ。」


 一つはスカートとシャツにベストの組み合わせ、たぶんこっちが制服かな。もう一つは素人目でも戦闘用だと分かる、所々に金属板が施された黒っぽい服。アルが着てる服と似てる?でもそっちのには金属板がついてないけど。

 まず制服の方を手渡されて、ブーツを脱いで試着室に入る。着替えてみるとしっかりフィットした。


「終わったよ。どう?」


 カーテンを開けて外に出ると


「おー、似合ってるじゃないか、可愛いぞ。」


 まさかユニエが一番に褒めてくれるなんて意外。でも嬉しいな。大切な人に褒めてもらえると。


「ふふ、そう?ありがとう。」


 ユニエは偶に気が効くと言うか、嬉しい事を言ってくれる。昨夜も、森にいた時も。水にしか興味が無いと思えて、実は私の事も考えてくれてる。うん、ユニエは私と水以外に無頓着なんだよね。

 優先順位は水が一番で、二番が私。でもそれ以外に大切なものなんて、ユニエには無いんだ。

 ユニエに大事に思われる。それは何よりも幸せを実感できる、とっても素晴らしこと。幸せだなあ。


「よろしいですかな?次はこれを着ちょって下さい。」


 あっ、いけない。周りが見えてなかった。今度は重い戦闘服に着替えなきゃ。

 ブーツも一緒に履くように言われた。履き方にも方法があるらしくて、ズボンの裾を靴の中に押し込めるらしい。とにかく言われたようにする。


「いい感じね。ありがとう、ワゴン!」


「いえいえ、お安い御用でさ。」


「じゃ、一旦宿に戻りましょう。荷物を置いてかないとね。」


 アルラシアは外に出て行った。私はワゴンとセレナに一礼して


「ありがとうございました。」


 戸をくぐった。

 宿へと戻って、元々着てた服と制服を部屋に置く。武器を持って来いと言われたけど、何に使うんだろう。服とブーツは戦闘服のままだから、何かと戦わされるのかな。

 とにかく下に戻らないと。


「来たわね。この子がリーシャちゃんよ。」


 階段を降りた先には、アルの他にもう一人いた。ボサボサ頭の人間。


「初めやして。俺は人間のカートです。階級は軍曹。」


 昨日本の部屋からアルラシアに追い出された人だ。


「ユニエちゃんは…戻ってきたわね。」


 ユニエも紹介されたところで、アルは予想通りと言うか


「リーシャちゃんとユニエちゃんの実力、見せてもらうわよ!」


 やっぱり戦うのね。










次回もリーシャ視点です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ