新たな扉
やれって言われた(幻聴)
「何で早く言わなかったんだ!」
「トイレに行きたい何て言える雰囲気じゃ無かったよ!」
まったく、トイレどこだ?部屋には出口以外にドアは無い。廊下にあるあるのか?
「歩けるか?」
「少しなら、、、」
「じゃあ私が探してくるから、それまで我慢してろ。」
部屋を出て探して見る。
あっ、部屋の数字とトイレマークが区別つかない。戻るか。
あっ、出てきた部屋が何処だか分からん。どうしたものか。
悩んでいると、リーシャが片手で股を抑えつつ部屋から出てきた。
「分かった?」
「リーシャ、すまん。トイレがどれだか分からん。」
産まれたての子鹿の様に足が震えているリーシャは、悲嘆に暮れ視線を床に落として、呻き声を上げている。股間に手が行って無ければ絵になりそうだな。
「うう、廊下の端のドアかな?」
よろよろと歩き出したが、遅々として進まない。
「それで間に合うのか?」
「ちょっと無理かも、、、」
うーむ。そうだ!
「私が飲めば良いんじゃ無いか!」
私は水を飲めてリーシャはスッキリ。一挙両得だな。我ながら素晴らしいアイディアだ。
「えっ!何言ってるの!?」
「私がトイーーー」
リーシャが手を振りかざしてきたので、サッと上に避けた。直後、うっ!とした表情で股間に手を戻した。激しい動作は明らかにリーシャの尿道を蝕んでいる様だ。
「何で避けるの、、、」
「いや、避けるだろ。」
このやり取り前にも無かったか?
「うう、普通おしっこをその、ゴニョゴニョ、いやじゃないの?」
「何、リーシャのなら大丈夫だぞ。」
悪魔の唾液よりは綺麗だろう、たぶん、、、綺麗だよな?
「もっ、もう!ユニエった、、、うぐっ!」
リーシャは赤くなって怒ろうとしたが、大声を出した所為で余計にピンチになったようだ。とうとうその場で蹲ってしまった。
「あら、どうしたの?」
聞き覚えのある声がした。振り向くと、アルが後ろに立っていた。
「もしかして、お花摘みかしら。」
リーシャがコクコクと首を縦に振る。もはや声も出せないか。
「立てる?」
今度は首は横に振られた。このままだと、本当に私が飲むしかないんじゃないか?
「しょうがないわね、よいしょっと。」
「わわ!」
「おー。」
お姫様抱っこだ。初めて見たぞ。リーシャは恥ずかしいのか、真っ赤になって震えている。手は相変わらず股を抑えたままだが。
アルはリーシャを抱いたまま廊下の端の部屋にの中へと消えて行った。
「えっ!ちょっとまって!」
「いいからやっちゃいなさい!」
何か聞こえた。まあ、大丈夫だろ。死にはせん。
トイレから出てきたリーシャは何故かげっそりしていた。アルはいい笑顔でそんなリーシャの頭を撫でている。いやまあ、何が起きたのか大体予想はつくが。
「さあ、私は本を幾つか見繕って持っていくから、先に上に行ってちょうだい!」
言われた通り階段を登って行くが、リーシャの足取りは重い。スッキリした筈なのにな。理由はなんとなくわかっているが。
「何かあったのか?」
「聞かないで、、、」
大丈夫じゃ無かったのかもしれない。
「いずれ良い思い出になるだろう、きっと。」
根拠は無い。
今までの投稿の誤字チェックやらをする予定です。内容は変更しません。




