表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水の精霊にTS転生!   作者: アリエパ
42/74

街に

ユニエ視点に戻ります

 さっきの男と入れ替わりに現れたその女は、人懐っこい笑みを浮かべながら、リーシャに握手を求めてきた。


「私はアルラシアよ。気軽にアル、で良いわ。よろしくお願いするわ!」


「はあ、よろしくお願いします。名前はリーシャです。」


 珍しい、戸惑っているのか?貴重なリーシャの困惑シーンである。


「敬語なんていらないわよ!ああ、そっちのあなたもよろしくね。あなたは水の精霊なのかしら?ここに水があるのだけど、いる?」


 腰から袋を外して差し出して来た。水!喜んで袋を受け取る。


「うむ、ありがたく貰おう。よろしく、ユニエだ。」


 まあ、悪い奴じゃなさそうだ。水をくれたし。

 袋には飲み口が付いていた。ここから飲めば良いのか。


「あっ!」


 袋に口をつけて水を飲み始めると、リーシャがいきなり声を上げた。なんだ?


「どうしたのかしら?」


 アルも疑問に思ったのかリーシャに声をかけた。あ、飲み口の溝に少し残ってるな、勿体無い。舌を突っ込んで舐めとると


「ああっ!」


 まただ。一体どうしたとーーーはっ、全部飲んでしまった。


「アル、すまん、飲み干してしまった。」


「ん、構わないわよ。それでリーシャ、何かあったの?」


「いえ、なんでも、、、」


 変な奴だな。

 アルも首を傾げた後、椅子を引いてリーシャと対面する位置に座った。


「あなた達は里から出てきたの?」


「はい、そうです。その後は「敬語はいらないわよ!」はぁ。」


 リーシャはため息とも相槌とも取れる返事だな。もしかして、こんな感じのグイグイ来るタイプが苦手なのか?


「訳あって里から出て、その後は森をなんとか抜けて、街を目指して歩いてきたんです、だよ。」


「あら、一人で鎮竜樹海を抜けてきの?すごいじゃない!」


 鎮竜樹海?あの森はそんな名前だったのか。


「いえ、一人じゃないで、、、一人じゃなかったよ。ユニエと一緒だったからなんとかなったけど、一人だったらきっと、直ぐに死んじゃってた。だからユニエのお陰で。」


「謙遜するな。お前がいなかったらそ、もそも私も外に出られなかったしな。」


 と言うか、私の攻撃手段はボムやカッター、または水で窒息させる事が主で、それが効かない熊や象を倒したのはリーシャのお手柄である。


「あら?ユニエちゃんとは森の外で出会ったんじゃないの?」


「いえ、ユニエとは森の聖域の中にある泉で会ってーーー」


 アルはそれを聞いた途端、いきなり立ち上がって、目を見開いて私を見た。何か驚くような事が有ったのか?


「あの、アル?どうしたの?どうしたんですか?」


 リーシャが敬語を使っても反応しない。


「水をぶっかけるか?」


「それはダメ。」


 一番確実だと思うんだがな。


「おーい。アル、アルラシア、返事しろー。」


 何度か呼びかけてやっと気が付いたのか、ハッとした表情で


「え、ええ、ごめんなさいね。少し驚いてしまって。」


 アルは椅子に座り直して深呼吸をしている。一通り落ち着いたところを見計らって声を掛ける。


「何がだ?」


「あの森が鎮竜樹海と呼ばれる理由は、あそこに竜王の一柱が封印されてるからなのよ。里に住むエルフは主と呼んでたかしら。その封印されている竜王の力が滲み出た事で、聖域と呼ばれる、モンスターや魔獣はおろか悪魔も居ない、動物以外には何も棲息しない平和な区域が出来たのよ。」


 悪魔?あの尻尾や羽の生えた?


「悪魔、、、もしかして人型で体中に毛が生えていて、腕が4本ある?」


 リーシャに言われて思い出した。確かにあいつはそんな感じの姿だったな。


「必ずしもそうとは限らないけど、多分それは悪魔ね。」


「どうやってできるの?。」


 リーシャは身を乗り出して質問した。そんなに興味があることか?


「メイジ系のモンスターは知ってる?」


「それは、まあ。知ってるよ。」


「リーシャに教えてもらったからな。」


 魔法が使えるモンスターだったか。魔獣やら魔法使い、時として精霊なんかを食べると成れる奴だな。


「そのメイジが更に様々な魔法を使える生物をを捕食すると進化するの。それが悪魔よ。メイジやモンスターが幾ら徒党を組んでも、竜や精霊には敵わないわ。偶然弱っていた魔獣や油断している魔法使いを倒すぐらいよ。

 でも、悪魔は違うわ。高位の悪魔は竜や精霊すら狩るの。」


「じゃあ、あの悪魔は弱いのだったんだね。少し危なかったけど、私達でも倒せたし。ね、ユニエ。」


「ああ、そうだな。」


 やはりリーシャはあの時に言霊に操られて、私に火を向けた事を憶えてはいないのか。何故あの炎が私をすり抜けたのか、いずれ調べなければ。


「話を戻すわね。とにかく竜と天敵同士の精霊が、寄りにもよって強大な竜の魔力に満ちた聖域に居たなんて、異常事態よ。ユニエちゃん、なんでわざわざ聖域に引っ越してきたの?」


 この世界に竜が住んでいたのか。しかし、天敵同士なんて初めて聞いたぞ。しかし何で引っ越しだと決めつけるんだ?そんなにあり得ないことなのか?


「私は聖域の泉で生まれたから、引っ越してきた訳では無いぞ。」


 アルはまた停止してしまったが、今度は直ぐに活動を再開した。


「と、とにかく、ユニエちゃんは不思議がいっぱいね。」


 何を言ってるんだ?


「ゴホン。二人ともずっと森にいたのなら、最近の大事件も知らないわよね。」


「大事件?何です、、、何?」

 

なんだかごまかされたような気がするが、リーシャは気にしていないようだし、流してやるか。水の恩もある。


「10年前に、南の火山地帯で封印に封印されていた炎竜王が目覚めて、北上を開始したの。それに触発されて、北の氷山を統べる竜王が、南下を始めたの。普段は大人しく根城に籠っていたんだけど。そしてついに、竜王同士の戦いが始まったのよ。」


 竜王?まあ、たぶん強い竜の事か。


「竜王何て初めて聞いたよ?竜の王?」


「そんなところよ。とんでもなく強い竜ね。昔は五柱居たんだけど、大昔に一柱、さっきに言った竜王戦で北の竜王が負けて、死んでしまって更に一柱減って、今では三柱しかいないの。」


「欠けたままなのか?普通だったら直ぐに誰かが空位を埋める為に名を挙げると思うが。」


「まあ、詳しい事は本を呼んで欲しいわ。私も竜の博士では無いのよ。」


 それもそうだな。しかし、私は文字が読めるのか?もしもの時は、リーシャに読み聞かせしてもらうか。


「そんな訳で、竜王同士の戦いと言う大事件が起きたんだけど、実はそれだけでは終わらなかったの。その戦いの舞台は、なんとアラシュレン帝国首都のヘオグラド!王族はなんとか脱出したらしいんだけど、首都は廃棄になったのよ。王家の力が弱まった事で、幾つかの力を持った少数民族が反乱して帝国は酷い内乱状態になったの。

 更にそこにエルシフト共和国が武力介入した事で、泥沼化しちゃってのよね。結果、難民やら敗残兵が連邦領内に雪崩れ込んで来て、それが野盗になった所為で今治安が悪いのよ。帝国人は人間以外の種族を奴隷としか見てないから、余計にタチが悪いのよねえ。街は壁があって入ってこられることはないんだけど、その所為で街以外の人が普段住んでいない場所はえらいことになったのよ。この街に辿り着くまでに、盗賊とかに襲われなかったかしら?」


「傭兵みたな人達が襲われてるに出くわして、巻き込まれたよ。」


「大丈夫だった、、、のね?」


 なんでも無かったかのように言うものだから、アルも確認するように聞いてきた。私としては、リーシャがあの事を気にしてない様で何よりだ。


「問題無いよ。ユニエもいたし。」


「そう、、、まあそれなら良いわ。他にも色々と問題がーーー」


 ガコーン、カンコーン、ガコーン、、、


 そこまで行ったとき、鐘の音が響き渡った。


「あら、もうお昼ね。続きはご飯を食べてからにしましょ。他の事やあなた達の今後の生活とか、この街に関する細かい説明とかはその後にね。付いて来て、お昼ご飯を奢るわ。」


 詰所から出て行くその背中を追って外に出て塀を抜けると、入ってくる時は見えなかった街並みが見えた。


「ようこそ、クライランの街へ!」


 振り返ってアルが笑いながら手を広げると、丁度太陽がアルの背中に被さった。その笑顔は太陽を背にしても尚、輝いていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ