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水の精霊にTS転生!   作者: アリエパ
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北東から新たに

 怪物と戦ってから数日経った、ある日の昼下がり。


「やっと、抜けたのか、、、」


 目の前には、草原が広がっていた。


「うん。これから暫く北東に歩いていったら、街があるよ。」


 歩みを止める事なく、だいたい北東の針路で進んでいく。


「どんな街なのだ?」


「ガザスタン連邦っていう多種族国家の領土にある街で、一応エルフの集落も連邦の自治州扱いだって、本で読んだけど、詳しい事は私もよく知らないの。でもエルフや精霊にも友好的な国だから、面倒な事にはならないと思うよ。」


「他の国だと厄介な事があるのか?」


「うん。後はアラシュレン帝国とエルシフト共和国があるね。帝国の方は人間至上主義の国で、多種族を奴隷扱いしてるんだよ。もっとも共和国はその逆で、人間をそれ以外の種族をが下等種族呼ばわりして、虐げてるんだけどね。わし達は連邦と共和国には入れるけど、帝国領内には行かない方がいいかな。」


 どの世界でも、人種というか種族というか、溝は深いのだなあ。


「連邦は両国の間にあるのか?」


 最初は共和国と帝国があって、その中の融和派みたいなのが連邦を作り、緩衝地帯的な存在になっているのかと推測しみる。もしそうで無いとしたら、かなり物騒な事になるな。


「ううん。西から、連邦、帝国、共和国、だよ。帝国と共和国はいつも小競り合いしてるけど、連邦は攻め込まれた事はほとんど無いよ。三ヶ国とも、国力は似たようなものだから、帝国も二正面作戦は避けたいんだろうね。」


 物騒な事になっていたか。

 リーシャの説明が続く。


「ここ数百年は、大きな戦争が起きた事は無いらしいけど、世界情勢についての知識はあくまでも集落の図書館で読んだ本のものだから、実際にはある程度の齟齬があるかも。そもそも集落の本は古い本が多いし、正直に言うと、聖域外の森に魔獣が住んでい無いと思ったのも、本に載って無かったからなの。でも実際にはいた訳だから、あまり過信はできなきかな。」


 うーむ。リーシャの知識だけが頼りだったんだが。仕方ない、早く街に行って色々調べるか。


「街が北東にあるのは間違い無いのか?」


 もしこれが違ったら、当てどなく平原を彷徨う羽目になる。


「滅んで無ければね。」


「滅んで無ければって、、、」


 何じゃそりゃ。


「本が古いって言ったでしょ。そう言う事だよ。」


 そんなに古いのか。

 祈るしか無いな。もっとも、もう無くなっていたら祈った所で無駄だが。


 そうしてたわいもない話をしているうちに、夜が近づいてきた。離れた所にいるネズミや鳥、ウサギなどを私が水を使って獲り、血を吸う。

 リーシャの夕飯も作る。私が水球を焚き火の上に設置して、その中には森の中で採取した木の実など保存が効くものと、血を吸収されてカサカサになった動物の残骸から、何とか食べられそうな場所を切り取り手に入れた肉を入れる。木の実も乾燥肉?も水より重いので焚き火に落っこちそうになるが、私の絶妙な水流捌きが炸裂し、何とか茹で上がった。

 皿なんて便利な物は無いので、比較的綺麗な布で水を濾し、肉と木の実を食べる。

 その後はリーシャの服と体を水流で洗い、夜営の準備をする。

 寝床を整えるリーシャを尻目に、考え事をする。

 雨が降る原理は何となく覚えているが、それを実践するにはまず水の温度を操ったり、30メートル以上の高さまで水を持って行けるようになったりと、課題が山積みだな。

 魔法についてはリーシャからある程度は聞いたが、もっと詳しく知りたいし、そういった事を学べる所は無いのだろうか。


「なあ、リーシャ。魔法学校みたいなのは無いのか?」


 唐突な質問に、リーシャは不思議そうな顔をしている。


「魔法学校?聞いた事が無いけど。魔法を教えてくれる所のこと?」


「そうだ。普通はどうやって魔法を覚えるんだ?」


「他の種族の事は知らないけど、エルフはみんな大人になると使えるようになるから、周囲の大人が教えてくれるけど。私の場合は独学で本から勉強したよ。」


「なるほど。図書館は街にもあるのか?」


「そこまではわからないな、、、まあ、着けばわかる事だよ。」


 それもそうか。リーシャは大きなあくびをして


「じゃあ、そろそろ寝るね。おやすみ。」


「おやすみ。」


 一人の夜が始まった。

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 たまに霧で感知したネズミなんかで、渇きをしのぎ、夜を明かした。

 ああ、水が飲みたい。森にいた頃は川の真水があったから良かったものの、今となっては平原をが広がるばかりで、限界まで高く宙に浮いても、川らしき物は見当たらなかった。25mの高さから、丘が全く無い本当にだだっ広いだけの平原を見た時は、心が折れかけた。

 はあ、暫く血の生活か。森に篭っていても魔法の事は何もわからないままだからと、外に出て来たが、やっぱり完璧な純水では無いとはいえ、川の水でもいいから飲みたいなあ。


「んーっ。おはよう。ユニエ。」


 空を見上げながら、雨でも降らないかと考えていたら、声が聞こえた。


「ああ、おはよう。」


 雲がうっすらと貼った、緊張感に欠けるぼんやりとした青色の空の下、新たな日常が始まった。


「いつになったら雨が降るんだろううか。」


「春なんだし、そのうち降るよ。」


 今の季節は春だったのか。




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