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水の精霊にTS転生!   作者: アリエパ
32/74

炎獄

明日の更新はお休みします。

明後日から毎日更新に戻ります。

 やろうとは言ったものの


「どうやって動きを止めるんだ。火も水も効かないんだぞ?」


「魔法が効かないんなら、物理だよ。弓矢が大活躍だね。」


 自信満々に矢をつがえているが、弓矢程度で動きが鈍るのか?


「象にとってはチクリと刺されような物だと思うが。」


「古今東西、膝に矢を受けて無事だった者はいないの。きっと大丈夫!」


 その自信はどこからきたんだ。

 不安だ。非常に不安だ。何が不安って、山火事になった時の想定がまったくされていない。


「火事になったらどうするんだ。」


「、、、その時はお願いします。」


「おい!」


 森林火災はまずい。


「ほら、それよりも象が起き上がったよ。さ、始めよ。」


「おいったら!!」


「火よ!」


 まったく、人の話も聞かないで始めるとは。

 本当に火事になったらどうするんだ?5000Lも無いのに、それだけで消しきれるかわからないし、そもそも全部再吸収できる訳では無いのだから、水をだいぶ消費してしまう。

 作戦が無謀というか雑と言うか、油断しているんじゃないか?

 しかしもう始まってしまった以上止める事は出来ない。


「はあ、不安だ。」


本当に大丈夫か?

:

:

:

「ダメじゃん!!ちょ、リーシャー!?」


 威厳を取り繕う余裕なんかない。象が動いた所為であちこちに火の手が回り、エライ事になってしまった。


「失敗失敗、ごめんね♪」


 ごめんね♪じゃねー!!何その「てへ」って感じの言い方!?


「あー、もう!どうするんだ、この惨状!!」


 既に5本の木が焼け落ち、ボヤでは済まされないぞ。さっきから水をかけて鎮火しようしたが、その度にリーシャに「ちょっとだけ、ちょっとだけだから!」と、止められた。そのせいで、水を全部使っても消せるか怪しい。初期消火ができていればもっと軽くて済んだだろうに。

 怪我の功名と言うか、怪我が致命傷レベルの気もするが、象は無事焼け焦げた。背中の火を消す為に暴れ、その拍子に燃えて脆くなった大木に衝突、倒れてきた木の下敷きになった。

 ときせつ聞こえる「パオーン、、、」と言う弱々しい鳴き声は、憐れみさえ感じる切ないものだった。まさにこれは


「かわいそうな象だったな、、、」


 しみじみと呟く。状況こそ違うが、あの悲哀に満ちた鳴き声は、前世で読んだ絵本を思い出させるな。

 なんとも言えない気持ちに浸っていると


「急にどうしたの?」


 リーシャが訝しげに聞いてきた。


「何、象が悲惨で少し悲しくなってな。」


「それより、火をどうにかするんじゃなかったの?」


 やれやれ、という表情で呆れられた。


「お前のせいだろうが!!」


 せっかく忘れかけてたのに!


「もうどうにもならん。逃げるしか無いんじゃないか。そのうち雨が降るだろ。」


 どうにもならん。流石に水が使えなくなるのは看過出来ないしな。


「うん。じゃあそうしよう。」


 やけにあっさりしてるな。


「まさか、最初からこのつもりだったのか?」


「言ったでしょ、ダメだったら逃げればいいかなって。この森にはたくさんの川があるし、森が全焼する事はないと思うよ。」


「はあぁ、ほら、走れ走れ。火の粉は払ってやるが、木が倒れてきたらどうしようもないぞ。」


 まったく。逃げる方角をちゃんと考えないと、燃やされてしまうぞ。

 ん?風?


「リーシャ、風が強くないか?」


「うん、、、なんだろう。」


 森の中ではありえない、突風と思うかのような。何なんだ?

 突如とりわけ強い一陣の風が吹いた。風は燃え盛る炎を全て吹き飛ばし、大量の黒と白の塵が舞い上げられている。なのに火の粉は1つも吹かなかった。強まる違和感。

 風が止み舞い散るモヤが晴れた時、目の前に


「ギギぎ、ゴチそう、こちそウ。」


 あの怪物がいた。


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