天敵
「リーシャ、何を怒ってるんだ?」
「怒ってない!」
怒ってるじゃん。
やっぱりあれか?パンツか?パンツなのか?
いや、でも「水を飲みたい。」と言ったら怒り出したな。あの言葉は「何かしたい事ある?」と言う意味ではなく、暗に謝罪を求めていたのか?
口直しの水がどうしても飲みたかったんだが。
「パンツの事は悪かった。」
「それじゃ無い!」
他の事の謝罪を要求されているらしい。
何が原因か考えていると、霧に何かが引っかかった。
「リーシャ。」
「なに。」
「敵だ。」
さっきまでプリプリ怒っていたのが、一瞬で真剣な顔になる。
「何がきたの?」
「人型だ。2時の方向からくる。」
「わかった。とりあえず、隠れようよ。」
木の裏に隠れる。霧を薄っすら飛ばして偵察する。
「な、何に、あれ、、、」
「わからん。人型だから、モンスターじゃないのか?」
直立二足歩行をしている。2mぐらいの身長、緑色で筋骨隆々、体中が短い毛で覆われ、頭は豚と猿を足して2で割ったようだ。手は4本ある。
「違う。そんなちゃちな存在じゃないよ。魔力の量が段違い。ユニエ、逃げようよ。あれは危険よ。」
確かにリーシャの体調に不安も残る。
「そうだな、逃げよう。」
その時その怪物が
「うるサイからキテミレば、セいレイノケハイ。ケモノがさわイデイタノハ、コれガゲンインか。」
「喋ってる?」
「ユニエ、わかるの?あっ、そっか、精霊だからわかるのね。何て言ってるの?」
「ちょっと待て。」
「せいレイ、ひさしぶリノゴチソう。」
なんだと?
「リーシャ、どうやらあれは騒ぎ聞きつけてやってきたようだ。」
「やっぱり時間をかけすぎちゃったかな。」
「それで、精霊が久しぶりのご馳走だそうだ。」
「ユニエ」
「リーシャ」
「「逃げよう」」
水を奴の右側まで動かして、霧にする。
「ナンダ、こレハ。」
そいつは霧の方向に歩いて行った。おつむが弱いのか、案外簡単に誤魔化せた。
「リーシャ、今の内に。」
「うん。そうだね。」
あれとは逆方向になるべく静かに早歩きで移動する。充分離れた所まで行き、小休憩する。
「あれはなんだったんだ?」
「わからない。集落の本にも載ってなかったよ。」
「その集落の本には、聖域を抜けた先に魔獣が棲息しているとは書かれてなかったんだろう?」
「そうだね。私が読める範囲にある本には、少なくともこの森に関する詳しく記述されたものはなかったよ。もしかして、情報が統制されていたの?だとしたら、、、」
リーシャはブツブツ呟きながら考え込んでしまった。
さっきから渇いて無いのにやたらと水が飲みたくなる。考えごとを邪魔するのは気がひけるが、我慢ならん。
「リーシャ、そろそろ移動しないか?」
「ん、そうだね。水が飲みたいんだっけ?」
「ああ、渇いても無いのにな。無性に飲みたくてままならん。」
そうして北東に向けて出発する。
「そう言えば、熊を倒す時に使ったあの青いのは何なんだ?」
「あれはね、私が作った蒼炎って言う魔法でねーーー」
~~~~~~~~~~
「ダマされタだまさレタだマされタ。」
ニゲられタ。クヤシい。
「つぎハナイ。」
ゼッタイにたべテやる。




