閑話 誓い
頭と同じぐらいの大きさの火の玉を作る。そしてもう一度魔力を詰め込む。ユニエの要望通りに急いで、でも丁寧に。炎を青く、かつ熱く。もう一度練成する。
魔力が足りなくなってきた。それでも続ける。
心臓がバクバクと鳴り強く痛む。でもまだ行ける。
手足の感覚が無くなり冷めたさだけが残る。けどまだつぎ込む。
体中の細胞がこれ以上は無理だと悲鳴を上げる。後少し。
意識が朦朧としてきた頃、やっと辿り着いた。私の臨界点。
言うことを聞かない体を必死に動かして、合図を送る。
ユニエは射線上にはいない。とにかく当たりさえすれば燃やせる。撃たなきゃ。
狙いは雑だったけど、ちゃんと上半身に当たった。安堵もつかの間、緊張が解けたせいで強引に抑え込んでいた、様々な肉体の不具合が湧き出してきた。一番酷い心臓の痛みに、思わず胸を抑える。上手く体勢が取れなくて溺れそうになる。
「おい、大丈夫か!?」
ユニエが飛んできた。でも、心配はかけられない。
「はあはあ、大丈夫、、、魔力を、使いすぎた、だけだから、、、」
苦しい。魔力が欠乏すると体に不調をきたすけど、今回は最後の一滴まで使い果たしたからか、今まで経験してきた中で一番酷い。
あれはどうなったんだろう。目だけを動かして見つけた。植物が少し動いてる。まだ死んで無いなんて。
「それよりも、今は、あれを、、、」
ああ、もうダメ、、、
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意識が戻った。体は少し気だるいけど、特に問題はなさそう。
前方に気配がした。目を開けると、ユニエが私のパンツを握りしめていた。目が合う。
精霊には性欲がないはずだけど。もしかして、、、
『ムラムラしたのー?』
「んぎゃ〜!」
んぎゃあ?まさかの叫びに呆然とする。いつも通りのの軽い冗談を、いつも通り軽く流されて終わり。そう思ってたのに、想定外の反応でどうしたら良いかわからない。もしかして本当に?そうだとしたら、、、
ユニエなら良いかな
劣情は穢れている。ガキ大将からたまに感じた視線から、私はそう学んだ。でも、ユニエは違う。ユニエなら。うん、ユニエとなら望むところよ。
「ユニエ、私はあなたとなら「そうだ体は大丈夫なのか!?」、、、」
叫んだあと固まりっぱなしだったユニエが再起動して、私に尋ねた。ここぞという時に限って。狙ってるんじゃないの?
「はあ。問題なし。大丈夫だよ。」
「そうか、良かったー。」
心底安心したと言わんばかりの表情を見ると、どうでも良くなる。
「ユニエ、パンツ返して。」
「あっはい。」
受け取ったパンツと上の下着を身につけ、服を着る。
「リーシャ、あのな「あいつはどこ?」こっちです。」
どうでも良くなるけど、少し意地悪しないと気が済まない。
ユニエに案内してもらう。地面は軽く湿り、灰と炭が散乱している。上半身が無くなり、下半身は干からびていた。ユニエは熊と呼んでたけど、私にはどう見ても魔獣にしか見えないな。熊はもっと小さくて愛らしいものだと思うよ。
「どうやって殺したの?」
「焦げたところをカッターで押し流して、生身の部分から血を吸いだしました。」
なるほど。さて、では質問。
「なんで敬語なの?」
「、、、なんとなく、だ。」
へー。
「何とか倒せたね。」
私も役に立てた。
「そうだな。リーシャのお手柄だ。」
「違うよ。私たち二人で倒したんだよ。」
二人で、協力して、一緒に。
「ああ。二人で、だな。」
これで少しは近づけたかな?
「なあ、リーシャ。あれは「ユニエ♪」なんでしょ、、、なんだ。」
抱きついて名前を呼ぶ。ねえ、ユニエ私はね
「私はね、貴女とだったら、大丈夫。好きにして、良いよ。」
愛を囁く。ユニエが望むなら、私は
「リーシャ。」
「なあに?」
なんだって、出来る。
「水が飲みたい。」
ずっこけそうになった。




