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軟体魔忍マダコ  作者: ペプシンタロウ
第二章~中央事変~
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待ち人探し

マダコちゃんの私服はこちら(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=156623

 深角(フカク)の兄貴と星美(スターミー)に発電施設の方を任せ、僕達は長い長い通路を戻る。

 真多子(マダコ)と二人きりになるのも久しぶりな気がして色々会話に花を咲かせていると、あっという間に受付の広場へと出てしまった。


 良い所で邪魔してくるちびっ子がいないとこうも楽しい時間を過ごせるのか。

 いつもこうしていたいものだ


「あっ、もう着いちゃったねコーちゃん!」


「まぁ、行きの方ははちょっと寄り道もしたしな」


「お帰りなさいませ。 当社の誇る技術の成果はどうでしたか……あら?」


 僕達が帰ったと連絡があったのだろう。

 受付嬢は僕達を見るなり出迎えてくれた。


 そして、その半分にまで減った人数に目を丸くする。


「あぁすいません。 兄貴達はどうしてもまだ見たいって言い出しまして……今もう少し見学できないか交渉してるみたいなんですよ」


「フカくん、あんなにスゴイ臭いでも全然気にしなかったもんね~! ミーちゃんが見張ってるから無茶はしないと思うよ!」


すかさず予め道中で口裏を合わせていた、もっともらしい言い訳で誤魔化しておく。

変に勘ぐられる前に、先手を打っておくのだ。


「……そう、ですか。 では、お連れの方が戻るまでに他の見学はいかがでしょうか?」


 客をここで立たせているわけにはいかないと気を利かせたのだろう。

 受付嬢が提案をしてくれたが、狙い通りだ。


 僕はある探りを入れるために、その提案へ乗りかかる。


「いえ、連れが少し歩き疲れてしまったみたいなんです」


「ね~。 もう脚がパンパンだよ~」


「ということで、応接室で休ませていただけると嬉しいのですが」


「わかりました、少々お待ちください」


 特に怪しまれることも無く、受付嬢は手元の手帳を開いて確認してくれていた。

 該当箇所はすぐに見つかったのか、パンとページを見開き目線が戻る。


「座敷の方は、只今使用中のようです。 座席の方でもよろしいですか?」


「ええ、もちろん」


(片方は使用中……思っていた通りだ。 おそらくこれが悪党共の出迎えている相手に違いないな)


 これでおおよその目途は立った。

 あとはその場所さえ分かれば、真多子に様子を探らせることも出来るだろう。


「え~、でもアタシは座敷の方が落ち着くかも?」


「そういえば()の国は座敷ばかりだもんな。 すみません……もしよければですが、座敷の方が空いたらそちらへ移っても良いですかね?」


 流石の幼馴染だけあって、阿吽の呼吸で小芝居を繋げていく。

 正直者過ぎて咄嗟の嘘が付けない彼女だが、予め打合せしておけばこの通り問題ないのだ。


「そうですね……予約表では60分程度となっていますが、あくまで予定ですのでかまいませんよ」


「本当~! やったねコーちゃん!」


「なんでも、聞いてみるもんだな」


「扉に使用中という札が下がっていますので、そちらで判断してください。 みなさんが休まれる部屋の方も、扉に札を下げるのをお忘れなくお願いします」


「わかりました」


 つまり、お互い札が見える隣接した位置関係ということか。

 余計な探りを入れることなく、場所を割り出すことができて幸先が良い。


 それに近いなら近いほど潜入しやすくなる。

 周囲に見つかり、騒ぎになるリスクが減るのもありがたかった。


「応接室は上方行きの階段を上がってすぐのところです。 案内をお呼びしましょうか?」


「あぁ、いえ。 真多子もすぐ休みたいみたいなので、このまま自分達で行きますよ」


「さっきの長~い道に比べたら全然簡単だもんね!」


 まだまだ頑張れるぞとばかりに、真多子がグッと力を入れる。


 そんなことをしたら、元気が有り余ってるみたいだろう。

 余計なことをしてバレるんじゃないかと、内心ヒヤヒヤしてしまう。


「そうですか、ではごゆっくり。 発電施設のお連れの方が戻りましたら、そちらへ案内いたしますね」


「僕達の休憩の方が早く終わりそうですけどね、ははは……」


 向こうに連絡が行けば、すぐに嘘がバレる。

 そうならないことを祈りながら、僕達は受付広場をそそくさと後にした。


 嘘というのは、重ねれば重ねる程にほころびが出る。

 念を入れようとして余計なことをすると、かえってバレてしまうものだ。


 だからこそ、さっさと退散するに越したことはない。






 階段を上がると、 二手に分かれるT字路に出た。

 一方が今いる階段であり、残りの二手に分かれる直線が応接室なのだろう。


 なるほど、これなら確かに迷いようがない。


 一歩踏み出し左右を確認すると、右手が赤い使用中の札。

 向かって左が青い空き室の札。


 札はドアノブに紐で下げられており、裏表にそれぞれ書いてある仕組みなのだろう。

 使用中の赤札の方だけ紐がねじくれていた。


「コーちゃん、あっちみたいだね!」


「そうだな、とりあえず一度中へ入ろうか」


 真多子が元気よく空き室の方を指差したので、僕もそれに従い歩いていく。


 やたらと仰々しい扉を手前に引くと、ずっしりと重厚な感触が手に伝わる。

 空気がぬっと流れる密封されたこの手触り、音が外へと洩れないようにしてあるらしい。


「おぉ……これはまた立派なことで」


 流石は大企業の応接室。

 しかし逆にこれで戸の外からでは、盗み聞きができなそうだと判明してしまったことになる。

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