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第92話 王との謁見

 翌日ライズは王宮に呼び出されていた。

 理由は昨夜のドラゴンの戦闘行為についての事情聴取だ。

 いくらライズが騎士団を脱退したフリーであっても、いくらそこが王都の外であったとしても、王のお膝元である王都の外壁の間近でドラゴンが戦えば放置する事は出来ない。


(けど説明の場所が王宮なんだよなぁ)


 通常トラブルが発生した場合、事情聴取を行うのは衛兵の詰め所で行われる。

だが衛兵では対処出来ない程の事件の場合は騎士団が担当をする。

これは騎士団の所属していたライズもよく理解している事だ。


(そもそも騎士団が事情聴取する事なんて皆無なんだけどな)


 これらの仕組みはあくまでも仮定の上に成り立っているルールだ。

 ありえるかもしれない事例がもしも起きた時の為に一応決められたものに過ぎない。

 少なくとも、ライズが騎士団に所属していた間に騎士団が事情聴取をする様な事件は起きていない。


(まさか俺がその初めての事例になるなんてなぁ……というか、それをすっとばして王宮なんだが)


 ライズは案内の騎士に連れられ王宮の中を進んでゆく。

 王宮からの呼び出しなので従魔の動向は許されていない。

 もっとも彼の陰にはブラックドッグが潜んでおり、陰の部隊の魔物達が陰ながらライズを護衛しているのであるが。


「こちらです」


 騎士が足を止め、ライズに中にはいる様に促す。


「ここは……!?」


 ライズが驚くのも無理はない、彼が連れらえて来たのは謁見の間。

 この国の国王と面会する為だけにある部屋なのだから。


(あって大臣クラスだと思っていたが、国王陛下直々に聴取とは、ずいぶん大事になっているな)


 これにはさすがのライズも驚いていた。

 ライズの従魔達は確かに優秀だが、それでも情報収集にはある程度の時間がかかる。

 まさかライズも昨日の今日で突然王宮に呼ばれるとは思っても居なかったのだ。


(というか、夜に騎士団から呼び出しが来なかった時点で察するべきだったか)


 ライズは意を決して謁見の間へと入っていった。


 ◇


「ライズ=テイマー入場!」


 騎士がライズの入場を告げる声を上げる。

 ライズの前には深紅の絨毯が敷かれており、その両脇には騎士達が並んでいる。

 そして奥には横に広い人一人分の階段があり、大臣達が並んでいる。

 階段の上は天井から降りたヴェールによって隠されている。


(あ、フリーダ団長。それにマルド元団長も)


 見れば大臣達に混じって二人の姿も見える。

 フリーダ団長は忌々しげにライズを睨み、マルド元将軍は笑みを堪えきれない様子だ。


 ライズは赤い絨毯の道を進み、左右に控える騎士団の最前列の位置まで来ると、頭を項垂れて跪いた。

 家臣が間近で主君である王の顔を見る事は不敬だからだ。


「国王陛下のおなーりー」


 騎士の声と共に衣擦れの音が聞こえる。


「おもてを上げい」


 聞き覚えのある声の許可をうけ、ライズが顔を上げると、階段の上にあるヴェールが開かれ、玉座に座る壮年の男の姿があった。


「久しいなライズ=テイマーよ。貴公の受爵以来であるか」


 だがライズは答えない。許可が無ければ王に話しかける事は不敬だからだ。


「余はお前の声が聞きたい。答えよ」


「はっ、お久しぶりでございます国王陛下」


「うむ、壮健でなによりだ」


 国王はうんうんと好々爺の笑みを浮かべる。


「して、此度の呼び出しの件だが……」


 挨拶を終えると国王は為政者の顔になって本題に入る。


「お前がドラゴンに戦わせた一部始終を知りたい。答えよ」


「っ⁉」


 フリーダ団長がビクリと震える姿がライズの目にはっきりと映る。


(あー、間違いなく王都に非常線を敷いた事との関連を問いただされただろうなぁ)


 だがさしものフリーダ将軍といえど、国王に対して弁解をする事は出来ない。

 王の許可なく言葉を発する事は不敬だからだ。


(国王を巻き込んだのはマルド元将軍の策略か? それとも反フリーダ将軍派か?)


 この絵図を書いた犯人が誰かを考えたライズだったが、今は自分の身の安全を守るのが先決だと判断して国王に事のあらましを告げる事とした。


 ◇


「……という訳です」


 ライズが説明を終えると、国王は顎に手をやって自らの髭を撫でながら黙考する。


「悪魔の力が封じられた品に聖騎士に化けた盗賊、そして悪魔の力が込められた武具か……」


 国王の眉がかすかに吊り上がる。


「捕らえた賊が語った内容と一致するなマルドよ」


「はっ、その様ですな」


 言葉を発する許可を得ていないマルド元将軍が国王に答えるが、これは不敬には当たらない。

 玉座の階段の下に立つ大臣達は、王の言葉に許可を得ずに言葉を返す許可を与えられるからだ。

 これは国家運営にかかわる大臣達がいちいち王からの発言許可が無いと発言出来ないのでは、大事な情報を王に伝える事が出来ないからだ。


「ライズ=テイマーが捕らえた窃盗の実行犯、そのスパイを匿う役目をしていた者、そして生き残った悪魔の力を扱う武器を持っていたスパイ。彼らの言葉と一致しますな」


「うむ」


ライズは捕らえた賊をマルド元将軍に引き渡していた。

現状裏で糸を引く真犯人が分からない状況では騎士団にスパイ達を引き渡す事は危険だと判断したからだ。

更に言えば今の騎士団の長はフリーダ団長なのでライズ憎しで何をするか分からなかったからとも言える。


「事が悪魔に関わる事であれば、ドラゴンの力を使う事もやむなしであるな。むしろ一人の死者も出なかった事を感謝するべきであろう。教会も聖騎士達を救ってくれた事を感謝すると言っておったからな」


「陛下、それだけではありませんぞ」


「む、まだ何かあったかかな?」


 ここでライズは国王達の会話に違和感を覚える。


(なんか、変だな)


「なんとライズ=テイマーが捕らえたスパイから、このところ行方不明となっていた者達が連中によって悪魔の実験の実験台として誘拐されていた事が判明したのです」


「なんと! 誠であるか!」


「はい。残念ながら犠牲となってしまった者達は既に手遅れでしたが、無事な者の数も少なくありませぬ。その中には貴族の子弟もおりまする」


「ほうほう、それは良い知らせじゃな。親達も我が子が戻って喜んでいることであろう」


「まったくでございます」


 まるで演劇を見ている様にスラスラと出て来る言葉。


(間違いない、これはあらかじめ示し合わせたとおりの会話なんだ)


 ライズは王とマルド元将軍の間で何かの打ち合わせが行われていた事を察する。

 それを証明する様にフリーダ団長の顔がどす黒くゆがんでいたからだ。

 裏でよほど腹に据えかねる出来事があったと見える。


「王都の民を救い、世界の敵である悪魔の使徒をうち滅ぼしたライズ=テイマーには褒美をやらねばならぬな」


「ですがライズ=テイマーは既に爵位を得ております。騎士団を出奔している以上これ以上の爵位を与える事はどうかと」


「左様であるな」


(まさか、騎士団に戻して新しい爵位を与えるとか言わないよな!?)


 国王達の考えが読めず、戦々恐々となるライズ。


(これはケットシー達が情報を得られなかったのも仕方が無いか。事情聴取というのは建前だな。この状況を作る為に事情聴取という名目で俺を呼んだんだ)


「更に言えばライズ=テイマーが始めたドラゴン馬車は我が国の重要な交通網となっております。今更騎士団に戻すのもどうかと」


(あれ?)


 てっきり国王の名のもとに騎士団に戻されるのかと思ったライズは肩透かしを食らう。


「ドラゴン馬車か。我が国のみならず、遠く離れた国にわずかな日数で人と物資を運ぶと聞く」


「はい、既に他国もその恩恵を受けておりますれば」


 政治の知識のないライズは気付いていなかったが、彼の始めたドラゴン馬車は彼の想定を超えて各国に多大な影響を与えていた。

 もともと国がライズを騎士団に戻したがっていた理由はドラゴンという抑止力を取り戻したかったからだ。

 だがライズが自分の意思で国内を自由自在に飛ぶドラゴン馬車を始めた事で、周辺国はテンド王国に対して軍を向ける事は出来なくなっていた。

 決まった航路を持たないドラゴン馬車がいつどこに現れるのかわからない以上下手に軍が動いている事がバレれば最悪ドラゴンに攻撃を受けかねない。

 ドラゴン馬車は無意識にテンド王国の要する抑止力と化していたのだ。

 中にはライズは裏でテンド王国と繋がっていると勘違いしている国もいるくらいだ。


 そしてマルド元将軍の言う通り、単純にドラゴン馬車は輸送力という意味で大きな恩恵を他国に与えていた。

 多くの人と荷物を安全に早く地形と魔物を気にせずに運べる事は大きな意味を持つ。

 流行り病が流行る前に収束させる為、国家間のトラブルを迅速に解決させる為、ドラゴン馬車の利点は数えきれない程あった。


 そんなドラゴン馬車がテンド王国の国内で商売を行っているのだから、ライズを無理に騎士団に戻すのは現状マイナスでしかなかった。

 当のライズはそんな事に気付いてはいないのだが。


「ではライズ=テイマーのドラゴン馬車に国家資格を与え、税の支払いを免除する事を約束しよう」


「おお、それは名案ですな!」


(マジか⁉)


 ライズは内心で叫びそうになった。

 テンド王国の税金は収入から経費を差っ引いた金額から割り出される。

 だがライズのモンスターズデリバリーで働く魔物達の食費は牧草や大魔の森で捕らえた魔物の肉で大半を賄っているので、事務所の維持費以外の経費があまり発生しないのが問題だった。

 経費がかからないとその分税金が大きくなる。

 だが国王はドラゴン馬車の儲けをまるまるライズのモノにしていいと宣言したのだ。

 収入の大半がドラゴン馬車にある以上、戻って来る税金の額は決して少なくない。

 ライズとしては諸手を挙げて歓迎したい褒美の内容であった。

 もっとも、国としてはライズの使い魔の維持費を支払わなくて済むので、税金が無くなっても全く困らないのであるが。



「うむ、それで決まりだ!」


 事情聴取が一段落した事でライズは退室を言い渡される。

 そして彼が退室しようとした時だった。


「ライズ=テイマーよ、騎士団を脱退したと聞いたが見事な働きだ。誉めて遣わす」


 許可なく答える事を許されないライズは、振り向いた後小さく笑みを浮かべて国王に会釈を返したのだった。

フリーダ団長「ぐぬぬ!」

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[一言] 普通の頭とか子供でもわかるが軍に居なくても国内にいればそれだけで抑止力になるからな(笑)
2020/07/27 12:01 退会済み
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