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第89話 術宝争奪戦

 夜、王都の闇に隠れる様に走る複数の影。

 そう、ライズの従える魔物達だ。

 彼等は屋根の上や物陰の影を巧みに移動して非常線を張る騎士団の目を欺いた。

 そして目的である盗人達の隠れ家に到着した。

 所要時間として10分と経っていない。


「そんじゃ行くよ!」


 指揮官であるアラクネの命を受け、影の部隊である魔物達が行動を開始した。

 

 ◆


「ガォウッ」


「な、何だコイツ!? いつの間に入ってきたんだ!?」


 男達が突然現れた獣の姿に驚く。

 彼の名はブラックドッグ、影を移動しいかなる障害も無力化する生粋の狩人だ。

 ブラックドッグが男に襲い掛かる。


「ひぃ!」


 男は間一髪転がって回避するが、ブラックドッグはすぐさま追跡する。


「このクソ犬が!」


 家主の男が隠してあった剣を取りだしてブラックドッグを攻撃する。


「なっ!?」


 だが家主の男は剣を振りかぶったままの不自然な姿勢で動きを止めてしまった。


「か、体が……」


「おーっと、家の中でそんなモノ振り回したら危ないよ」


 家主の男の耳元に妖艶な女の声が囁かれる。

 蜘蛛の魔物アラクネだ。男は彼女の放った蜘蛛糸によって体を絡め取られ、一切の身動きが出来なくなっていたのだ。


「そっちも終わったみたいだね」


 アラクネが視線を動かすと、そこにはブラックドッグによって床に叩き付けられた男の姿があった。


「さぁアンタ達、ウチの旦那から盗んだお宝を返しな」


 逃げる事も出来ない男達に、アラクネは術宝を返すよう命令する。


「く、くくくっ」


 だが男達はアラクネに怯える訳でも無く、笑い声をあげる。


「何がおかしいんだい?」


「はははははっ! 残念だったなぁ! お宝はすでに外に持ち出している! 俺達は囮だよ!」


 そう、男の言う通りここには昼間騎士団の追及を誤魔化した女、否、変化の能力を持った魔物シェイプシフターの姿が無かったのだ。


「あいつの能力なら王都から抜け出す事は造作も無い。俺を連れて出るのは難しくともあいつ一人ならば!」


 シェイプシフターは不定形の魔物だ。

 そして変身する事だけがとりえだと思われがちだが、その不定形の体を利用した場所を選ばない潜伏、移動能力もまたシェイプシフターの強みであった。


「今頃騎士団の包囲を抜け、術宝を本隊に渡している事だろうさ!」


「ふぅん」


 しかしアラクネの態度は男たちの想像とは違った。

 てっきりアラクネは術宝を手に入れ損なって激しく悔しがるかと思っていたのだ。

 そしてその姿を見て囮となった男達は、捕まる前のせめてもの慰みにしようと考えていたのだ。


「まぁ良いか。実行犯は捕らえたし、スパイのアジトも確保した。アタシ等は十分に役目を果たしたさ。残りのお宝は他の連中に譲るとしようか」


 そう、ここに来たのがアラクネとブラックドッグの二体だけと言う事、他の魔物は別の場所を襲撃していると言う事なのだから。


「って事だから、よろしくね」


 と、アラクネは手にしていた小さな鉢植えに声をかけた。


 ◆


「アラクネ達が実行犯を捕らえたみたいですわ。けど、肝心の術宝はすでに運び出された見たいですの」


 マルド将軍の屋敷で待機していたライズ達は、ドライアドより鉢植えの植物が見た光景を伝え聞いていた。


「よし、作戦を第二段階に移す。術宝を敵の本隊に渡される前に運び屋の魔物を捕らえるんだ」


「敵の本隊はいまだ動かず、聖騎士達は迷う事無く外に隠れている敵の本隊に向かっていますわ」


「聖騎士達が足止めをしてくれている間に終わらせるぞ!」


 ◆ 


 聖騎士達は、森に隠れているスパイの本隊へと向かっていた。

 ドライアドが植物達の目で隠れているスパイ達を発見し、その場所をピクシーを介して伝えたのだ。

 そして聖騎士達はまもなく敵のスパイと接触を果たそうとしていた。


「隊長、かすかですが明かりが見えました。野営用に光を隠していると思われます」


 報告を聞いたエディルはうんうんと頷く。


「さすがはドライアドさんの情報だ。その正確さには私への愛を感じる」


((((ねぇよ))))


 内心で全力否定する部下達だったが、あえて上司の機嫌を損ねるような真似はしない。

 こういう時は調子に乗らせておくほうが良い結果になると知っているからだ。


「では賊に攻撃を仕掛ける。確認の必要はない、全力で襲い掛かれ。ヤツ等は悪魔の力を求める神敵だからな」


「「「「了解」」」」


 聖騎士達が小声で了承をする。


「では総員突撃」


 小声でエディルは突撃を命じた。


 ◆


「ディヴァインソード!」


 スパイ達の野営場所に飛び込んだ聖騎士達はスパイが自分達の存在に気付いた瞬間にあわせて強化魔法を発動させる。

 聖騎士は神に仕える神官でもある為、神聖魔法による強化で自らの身体能力を専業騎士並みに強化することが出来るのである。


「食らえ神敵共!!」


 エディルの横なぎの一撃でスパイ達がまとめて胴をなぎ払われる。


「ぎゃぁぁあ!」


「ひぎぃ!」


 一撃で殺す事は出来なかったものの、腹を深く切られてスパイ達はうずくまる。


「な、なんでこんな所に騎士団が!? 巡回時間はまだ先のはずだぞ!?」


 エディル達の鎧から聖騎士を騎士団と勘違いしたスパイ達が浮き足立つ。


「ディバインンランス!」


 聖騎士が魔力で強化された槍を突き出すと、スパイがとっさに構えた小盾をやすやすと貫いて体に突き刺さる。


「ぎゃああああ!」


「ディバインアーマー!」


「ディバインシールド!」


 スパイ達が反撃に出るも、聖騎士達は防御魔法を唱えてただでさえ硬いプレートメイルを更に硬くする。

 その上盾でも防御するのでまともに攻撃が通らない。


「くそ、相性が悪すぎる!」


 スパイがはき捨てたように、彼等はあくまでも術宝を受けとる為の隠密部隊であった。

 身軽ゆえに暗殺や逃走には自身があったが、その特性上装備が短剣の類であった為に全身を鎧で固めた相手では明らかに威力が不足していた。


 そして王都に居る筈の仲間からいまだ術宝を受け取っていない彼等は逃亡しようにも逃げてよいのか判断をしかねていた。


「エヴィルウエポン!」


 禍々しい輝きを纏った剣が聖騎士の鎧を切り裂き、血しぶきをあげる。


「ぐぁぁぁっ!」


「ショーン!?」


 聖なる輝きを打ち破って鎧を破壊された事に驚く聖騎士達。


「隊長!」


 どうやら聖騎士の鎧を破壊したのはスパイのリーダー格だったようだ。


「まさか騎士団、いや聖騎士が出張るとはな。想定外だったぞ」


 敵のリーダーは禍々しい輝きの剣を構えると、部下達に号令を発する。


「呪術武装の使用を許可する。使い過ぎには気をつけろよ」


「「「「はっ!」」」」


 彼の指示を受け、部下達が手にしていた武器を捨てると、使っていなかったもう1つの短剣を取り出す。


「「「「エヴィルウエポン!」」」」


 おそらくはマジックアイテムなのであろう、力の発動を命じる言葉と共に短剣が禍々しく輝きだす。

 その輝きは先ほど聖騎士の鎧を切り裂いたモノと同質の輝きであった。


「さぁ、聖騎士共を蹂躙してくれよう」


 ここに光と闇の死闘の幕が上がろうとしていた。

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