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第84話 マルド元将軍からの依頼

大発表です!

ツギクルブックス様より、本作モンスターズギルドの書籍化が決定致しました!

発売日は10月10日(予定)で書き下ろし要素も追加されております!

今後情報が解禁され次第、追加情報をご報告していきますのでよろしくお願いします!


「おおライズよ! よく来てくれた!!」


 騎士達に連れられマルド元将軍の屋敷へやって来たライズを、筋骨隆々の老人が出迎える。

 その顔に刻まれた幾つもの傷跡と深い皴は、彼が長い年月を戦場で生き抜いて来た事を感じさせる。

 そしてその体は年老いてなお精悍であり、再び戦場に出向いても獅子奮迅の活躍が出来るであろう事が確信できる程に鍛え上げられていた。


「お久しぶりですマルド将軍」


 そう、この老人こそがかつてのライズの上司マルド元将軍だった。


「ふははははっ! 堅苦しいな! もっと気楽でいいぞ! なにせ儂は元将軍だからな!」


マルド元将軍は豪快に笑いながらライズの肩をバンバンと叩く。


「痛っ! ちょっ、痛いですよ将軍!」


「おお、すまんすまん、久しぶりに可愛い部下に会えて嬉しくてな!」


 ライズは背中をさすりながらも背筋を正してマルド元将軍を見る。


「それで、自分を呼んだ理由は何でしょうか?」


 ライズは元上司が部下懐かしさだけで、自分を自らの屋敷に招き寄せたとは思えなかった。

 元上司の事をよく知っているからこそ、その行動には必ず何らかの意図があると確信していたのだ。


「……ふむ、立ち話もなんだな。屋敷に入るが良い。おおそうだ、ライズの魔物達は中庭に案内しよう。広くて伸び伸びできるぞ。新鮮な肉も用意しよう!」


 マルド元将軍の言葉に、獣系の魔物達が歓喜の雄たけびを上げる。

 マルド元将軍はライズが軍属だった頃から、よく金欠のライズの為に魔物達へ肉の差し入れをしてくれていたのだ。

 なにせ軍が魔物の食事を立て替えてくれるといっても、それは日々の最低限の食事のみで、おやつ等の間食はライズの自費で支払う必要があったからだ。

 それ故ライズはいつも金欠にこまっていた。

 現金な魔物達は気前よく肉をくれるマルド元将軍に懐いていた事をライズは思い出す。


「わたくしはライズ様に御供いたしますわ」


 ドライアドがライズの横に寄り添って主を一人にしないと宣言する。

 たとえ相手が元上司であろうとも、魔物使いと魔物が別行動する事は基本的に無いからだ。

 魔物使いにとって魔物はパートナーであり、強力な護衛である。

 ライズに裏の護衛が居る事はドライアドも知っていたが、それでも表向きの主の護衛が不在になるような真似をすれば、それはライズへの魔物達の忠誠心の低さと侮られる。それに護衛が居ないのに刺客を撃退するような事があれば、裏の護衛がライズを守っている事を悟られてしまう。そうならないためにも、ドライアドは護衛としてライズの傍にいる必要があった。


「ふむ、良いだろう。二人ともついてきなさい。おい、彼の魔物達を中庭に案内しろ。新鮮な肉もあるだけ振る舞え」


「かしこまりました」


 メイド達がライズの魔物達を案内すべくやって来る。彼女達にはライズの魔物を恐れる様子は欠片も見あたらない。

それもその筈、以前からライズはマルド元将軍の屋敷に招待される事が多かった為、メイド達も魔物達の扱いに慣れていたからだ。

 もっとも、それもまた当時時期将軍の地位を狙っていたフリーダ将軍の危機感を煽る出来事であったのだが、当時のライズ達には知る由もない出来事だった。


 ◆


「さぁ飲むがいい! 良い所の茶葉を取り寄せた自慢の紅茶だ! どこの茶葉かとかは知らん。そういうのは使用人に任せているからな!」


 清々しいまでに他人任せな発言をする元将軍。案外人の上に立つ者とはこのくらい大雑把なのかもしれない。


「ドライアド嬢にはうちのお抱え魔法使いが用意した魔力たっぷりの水を用意したぞ! 楽しんでくれたまえ」


「感謝いたしますわ」


 足元にたらい一杯の水を差し出されたドライアドは、優雅にお礼をするとスカートの中の足をたらいにひたす。

 彼女の足は植物における根っこである為、水分を得るにはこれが普通の飲み方なのだ。


「ああ……とても芳醇な魔力ですわね。水魔法が得意な魔法使いにしか出せない濃厚な魔力ですわ」


 なんだかグルメレポートの様な事を言いだしながらドライアドが蕩けた顔を見せる。

 その姿は、さしずめ湯船に入ってくつろいでいるかの様でもあった。


「それで、どの様な用件で我々を呼ばれたのですか?」


 ライズは茶に手を付ける事無く、元上司の目をまっすぐ見た。

 マルド元将軍もまた、軽く息を吐くと、ライズを真正面から見据える。


「王都内で不穏な気配がある。フリーダは権力争いに明け暮れている為に気付いていないが、間違いなく王都で何らかの騒動が起きる。それも面白くない騒動がな」


「根拠は?」


「勘だ」


 シンプルな答にライズは顔を歪める。それはマルド元将軍の根拠が勘というあいまいなものだから、ではない。

 むしろその意味は逆で、ライズが軍属であった頃、マルド元将軍の勘を根拠にした嫌な予感は驚くほどの的中率を誇った。

 その為、元将軍の下で任務に当たった者達には、彼の勘を疑う者は居なかった程だ。


「フリーダではあてにならん。ライズ、すまないが儂の依頼をこなしてはくれんか? モンスターズデリバリーの店主に、緊急出張依頼だ」


 それは元上司による事実上の断れない命令であった。

 軍属時代のマルド元将軍からの数々の無茶振りを受けた事を思い出してゲンナリするライズ。

 だがこれを断ればもっとひどい状況になる為、断る選択肢などないと更にゲンナリしてしまう。


「マルド元将軍、我々は今非常に難しい問題に直面しておりまして、その問題を解決を最優先にする必要があるのです」


「ならその問題の解決に力を貸そう。儂の部下から必要とする人材を提供しよう」


「……ええと、今回は必要な魔物達しか連れてきていないのでお役に立てるかはちょっと……」


「かまわん、必要な魔物を迎えにいく為の予算も出そう。王都では儂の屋敷を行動の拠点にするが良い。滞在費用と経費の心配はいらん」


 問題の解決をほかの誰かに任せられないかとお持ち、なるべく穏便に断る方法を模索するライズであったが、マルド将軍は次々に断れない様に必要な援助を申し出てくる」


「今回の件は大地母神の教会も絡んでいますので、依頼を通すには教会との話し合いが必要になります」


「分かった、そちらもこちらに任せてもらおう」


「……いやな予感がするではこちらも対処のしようがありませんよ」


どこまでも譲らない上司にライズはため息を吐く。

 事実いやな予感といった漠然とした依頼内容では、何をすれば良いのかライズにも想像ができないからだ。

 倒すべき敵、解決する問題がない以上、下手に受ける事はどれだけ王都に拘束されるか分からなかった。


「王都の中で人が居なくなる事件が発生している。最初はスラム街や外区の平民街だったが、最近では貴族の息子や娘が居なくなったという話も出ている。貴族の子は二子以下の跡継ぎではない為その事実を隠されているが、どうやら消息をたった者の数は少なくないようだ。被害者の中には奴隷商人に売られる様な没落貴族ではない貴族も混ざっている。金銭目的でなく、何らかの意図を以って行われている誘拐なら早急に救出し事件を解決する必要がある」


「ええと、それってけっこう大事だと思うのですが、何でフリーダ将軍は動かないんですか?」


「言っただろう? 政争に明け暮れておると。消えた貴族の息子が敵対派閥の子なら無視するか適当な理由で捜索を拒否するだろうし、貧民や平民なら完全に無視だ。上級貴族からの捜索依頼でなければ、黙殺だろう」


「うわぁ」


 たった数日間だけだったとは言え、元上司であったフリーダ将軍のあからさまな平民差別と権力志向に呆れかえるライズ。


「という訳で、お前には人探しを頼みたい。やってくれるな?」


 もはや仕事を請ける事を前提に会話を続けるマルド将軍。


「ですから、我々にはやる事が……今回の問題はかなり危……」


「依頼を受けてくれるのなら、成功報酬として金貨2000枚を支払おう!」


「その仕事、お受け致します‼!」


 後に、金に目がくらんで大失敗したとライズが後悔するのはわりとすぐ後の事であった。

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