第83話 やってきました陰謀の王都
「とうとう来ちゃったなぁ」
ライズが物憂げにつぶやく。
封魔の術宝を探して街道を進んできた彼等は、遂に王都までたどり着いてしまった。
「ここまで来てしまったと言う事は、やはり敵は変化の魔法が使える相手の様ですわね」
ドライアドが周囲を見回し、犯人を警戒してか声を潜めて言う。
「植物達から得た情報で私も犯人を追いかけていましたが、途中から植物の居ない所を通られた所為で情報が途切れています。相手は何らかの特殊な手段を複数有しており、それでわたくし達の目をごまかしたのでしょうね」
ラミアは遠く離れた植物の見た情報を自分の目の様に見る事が出来る。
だがそれは意識を同調して現在見ているものを見る為、過去に見た情報を自分が追体験する事は不可能だった。
その為一度追跡が途切れた相手を再度追尾する事は非常に困難だった。
(そしてそんな手段をわざわざとったという事は、敵は俺達の事をよく知っている相手だと言う事だ)
ライズは今回の件が単純に封魔の術宝だけを狙ったものでは無いのではないかと考えるようになっていた。
(もしや俺への挑戦か? いや考えすぎか……)
ライズは犯人の意図が掴めず、漠然とした不安を感じる。
(問題は戦力が少ない事だな。今回は足の速いメンツで地上を追ってきたから、単純な戦闘能力の高い奴が少ない。念の為王都に来る前にハーピーに頼んでドラゴンに仲間達を運んできて貰うように頼んだけど、彼女がデクスシの町に着くのは今から1週間といった所か? そこからドラゴンがちょうど町に居てドラゴン馬車の仕事が入る前なら3日あれば到着するか?)
現状の戦力を考慮してライズは不慮の事態に対する対策を講じる。
(とにもかくにも援軍が来るまでは派手な立ち回りは慎むべきか)
「とりあえず私は騎士団に出頭して事のあらましを報告してくるわ。宿が決まったらウチの屋敷に連絡に来て頂戴」
同行してきたレティはそう言うと、一行から離れて騎士団のある方角へと向かう。
「そういえばレティさんは王都の住人でしたわね」
「ああ、いいとこのお嬢様なのに、ドラゴンを使える魔物使いの監視をしないといけないからってついて来ちまったからなぁ。責任感の強い奴だよ」
「……」
ライズの勘違いにドライアドが呆れて閉口する。
(そんなだからあの方の思いに気づけないんですわ。……まぁ、その方がわたくしにとってはありがたいのですけれど)
「では我々はまず神殿へと向かい、事のあらましを説明しに向かうとしましょう」
聖騎士のジンラは術宝が盗まれた経緯を説明するべきだとライズに告げる。
「そうですね。教会に協力をあおいで犯人捜しの手伝いを頼む必要もあるでしょうし」
ライズはジンラの提案を受け入れ、教会へ向かう事を決定した。
「あれ? もしかしてあれってライズさんじゃねーの?」
と、そこでライズの事を知っているらしい若者がライズ達を指さす。
「ホントだ。ドライアドさんも居る!」
「王都から出て行ったんじゃなかったのか!?
「帰って来たんだ!」
瞬く間にライズ達は町の人々に囲まれる。
「あれが千獣のライズ!? 隣国との戦争でドラゴンを従えて戦った英雄の!?」
「ラミアさんはいねーの!?」
どんどん人が増えていくのを見て、ライズは目を丸くする。
「何だ何だ!?」
しかし当のライズは何が起きているのか分からず、困惑するばかりだった。
しかし、そんな町の人達が突然波が引くように左右に分かれていく。
「今度は何だ?」
ライズが人々の下がった方向を見ると、そこには立派な鎧に身を包み、馬にまたがった騎士達の姿があった。
「ライズ=テイマー殿ですね」
若い騎士達が馬に乗ったままでライズに呼びかけを行う。
(知らない騎士達だな。それに若い。俺が居なくなってから採用された騎士か?)
軍属だった頃の記憶に無い騎士の姿に警戒心を強めるライズ。
(とはいえ、否定したら後ろめたい事があるんじゃないのかって勘繰られそうだしなぁ。ここは穏便に対処するとしようか)
「ええ、そうですが貴方達は?」
「これは失礼しました。我々はテンド王国王都防衛隊二番隊に所属する者です」
(王都防衛隊? 知らんぞそんな部隊)
聞いた事も無い部隊名に、ライズは自分の居ない間の王都の変化を感じる。
「メルク副団長が貴方にお会いしたいそうです。ご同行いただけますか?」
「メルク……副団長!?」
まさかの友人の大出世に、ライズは驚きのあまり声を上げてしまうのだった。




