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第77話 ミミック牧場

執筆に関してご報告です。

今後モンスターズギルドは仕事や他の連載との兼ね合いを考え、毎日更新から交代式での投稿に変更いたします。各作品の掲載はそれぞれ3日おきくらいをめどに考えておりますので、本作が投稿されない日は他の作品をお楽しみ頂ければ幸いです。

また交代連載は小説化になろうだけではなく、アルファポリスやツギクルでの連載も含めてとなります。

コレは各投稿サイトの規約の問題でして、どうしても分けざるを得ない状況となっておりますのでご了承ください。

その先駆けとして、本日18:01よりカクヨムで新連載を始めますので興味が湧かれましたらごらんくださいませ。

「ほーらエサだぞー」


 暗い地下室の中で、ゼルドは棒に肉をくくりつけて宝箱にエサを与えていた。

 傍から見るとかなり危ない人なのだが、本人からすればかなり真面目な作業だ。

 何しろ、油断していると自分が食われてしまうのだから。


 棒の先にくくりつけられた肉が近づくと、宝箱の蓋が跳ねるように開いて棒ごと肉を噛み千切る。

 そして生き物の様に肉を租借し始めた。


「全く、野生の獣だな」


 そう、ゼルドがエサを与えていたのは、野性の宝箱などではなく、ミミックという立派な魔物であった。

 悪魔の力が封印された術宝の宝石を探しに遺跡へと向かったライズ達は、そこで見つけた大量のミミックを飼育する事にした。


 その目的はモツ鍋である。ミミックは生きたモツ鍋と言われるほど美味な魔物だが、危険な遺跡などにしか居ない貴重な魔物でもあった。

 しかも倒した後はあっという間に腐ってしまう為、現地でしか食べる事が出来ないのである。


 箱を縛って馬車で運ぶなどの手段も取られたが、ミミックは日光に非常に弱く、町に届く頃には弱りに弱って味も大きく劣化していた。

 そうした理由から新鮮なミミックを食べたいなら冒険者を雇って、居るか分からないミミックを捜し求めるか、夜の内に厳重に梱包して運び、日光の入らない場所で調理するのが通例となった。


 最も、そこまでして輸送したミミックであっても、現地で食べるミミックよりも味が落ちるらしいので、輸送等の手段に何らかの問題があるのではないかと魔物食材の専門家達は推測していた。

 

 だが今回、大量のミミックが1つの迷宮で見つかった為、ライズはそれを養殖する事を決意し、ミミック達を迷宮の入り口付近、ゴーレムと戦った部屋まで運び、そこでミミックを育成、観察する事にしたのだ。


「ゼルドさーん、新しい入れ物を持ってきましたわー」


 迷宮の入り口からランタンの灯りが近づいてくる。


「おお、ドライアド殿か」


 ゼルドは食事を与えるのを中断してやってきたドライアドを迎え入れる。


「こちらが新しいミミックの殻ですわ。大中小を用意しましたので、観察日記をよろしくお願いしますわ」


 そういってドライアドが蔦に絡めていた大小の金属の塊を床に置いていく。


「これがミミックの新しい殻か。妙な形だな」


 ゼルドの言うとおり、ドライアドが持ってきたミミック用の殻はまるで二つの丸い中華なべを合わせたような形をしていた。

 片側が蝶番で繋がっている為。貝殻のような形と言っても良さそうである。


「ええ、ご主人様が鍛冶屋の方々に頼んで作ってもらったミミック鍋用貝殻ですわ」


 通常、ミミック鍋は宝箱の底を熱して内部のミミックを蒸し焼きにする。

 これだと宝箱が燃えてしまい、中のミミックがこぼれてしまうと思うだろうが、実際のところミミック鍋で食べるのは内側の内臓であり、外側部分は食用に適さない。

 いうなればミミック鍋とは容器の中に具と水を入れた袋を突っ込んで作る料理と言えた。

 

 しかし宝箱をそのまま利用した料理と言うのはあまりにも見栄えが悪い。

 ぶっちゃけて言うと汚そうなのだ。


 そこでライズが考案したのが、殻としてだけではなく、調理器具としても利用できる新型の鍋だった。

 ミミックは蓋のある箱に入って生活するヤドカリ型の魔物。

 ならば新しく生まれたミミックが入る為の箱をそのまま鍋にしてしまえば見栄えも悪くないし調理の手間も楽になると言う考えだった。


「それで。ミミック達の様子はどうですの?」


「うむ、食欲旺盛だな。肉を与えたミミックは与えただけ食べるし、たまにしか与えないミミックも特に弱っている様子も無い。何も与えていないミミックも反応を見る限り元気だ」


 ゼルドはランタンの灯りに照らしながらミミック達の観察日記に書かれた経過観察を読み上げながら説明する。


「そうですの。後はエサを与えたミミックと与えなかったミミックの味の違いですわね」


「そうだな、そして新しく生まれたミミックがこの鍋の中に住み着いてくれれば養殖体制も万全になるのだが」


「こればかりは時期を待たないといけませんわね。ミミックの繁殖条件については誰も知りませんから」


 ドライアドの言うとおり、ミミックは迷宮で稀に遭遇する待機型の魔物である為、詳しい生態が明らかになっていなかった。

 何しろミミックを観察しようにも迷宮のある程度深い場所まで潜らないといけないのだから。

 あまりにも危険が大きすぎて研究者が入り込めないという問題があったのだ。


「もう数ヶ月もすれば、ミミック用の地下室も牧場の地下に完成しますので、それまではここでミミックの飼育をよろしくお願い致しますわね」


「むぅ、承知した」


 ミミックの養殖が決まった際、誰がミミックを飼育するかで議論となったのだが、ある程度の器用さと地下に入れる体躯、そして言いだしっぺであった事からゼルドこそが相応しいという話になってしまい、それ以来彼がここでミミックの世話をする事となったのだ。


「ご主人様を危険な場所で働かせるわけには参りませんものね」


 地下とはいえ、ここは魔物が跋扈する大魔の森の中。

 それゆえにある程度の力量を持っている事も飼育当番の条件となっていた。


「ところで、例の宝石はもう回収されたのか?」


 会話が途切れたところで、ゼルドはこの迷宮で見つかった術宝がどうなったのかを問う。


「まだ動きはありませんわ。一応数日前に王都から術宝を受け取る為の聖騎士と神官達を派遣したと言う情報が入りましたけれど」


「随分と悠長な話だな」


 あまりにも遅い教会の動きにゼルドはあきれ返った。


「しかたありませんわ。何しろ相手は悪魔ですもの。輸送している最中に襲われる危険がある以上、実力のある人間を集める必要があったのでしょう」


 ドライアドに諌められ、ゼルドは内心で己を戒める。


(確かに、相手の力を甘く見たが故に我は手痛いしっぺ返しを喰らったのだからな)


「では私はこれで」


「うむ、気をつけて帰られよ」


 ドライアドを見送ったゼルドは、再びミミックに向き直る。


「さて、それでは我も餌やりを再開するか」


 この数ヵ月後、史上初のミミックのモツ鍋屋がデクスシの町で開店する事となり、大賑わいとなるのだった。

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