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第65話 再び谷へ

「呼びましたかライズさーん?」


 ライズに呼ばれたカーラが、事務所の応接間へとやってくる。

 悪魔退治の援軍としてやってきたカーラだったが、既に悪魔は退治されていた事を聞いてもなぜか彼女は谷の村へ帰ろうとはしなかった。


「ああ、また谷の村へ行く事にしたからな。カーラも一緒に運んでやろうと思ってさ」


「げっ!?」


 善意のつもりで発言した筈だったライズだが、なぜか当のカーラは嫌そうな声をあげた。


「なんだよ、『げっ』て?」


「い、いえ違いますよ、嫌がったんじゃなくってげっぷが出そうになったんですよー」


 思わず声に出してしまった事を不味いと思ったのか、カーラがあさっての方向を向きながら否定の言葉を口にする。

 しかしその言い訳はあまりにも稚拙だった。


「もしかして帰りたくないのか?」


「ギクリ! な、何を言っているんですか!? そんな訳ないじゃないですかー」


「けど悪魔はもう退治されているわけだし、ゼルドへの調査は終わってるんだろう?」


 だらだらと汗をたらしながらカーラの目つきが胡乱なものへと変貌してゆく。

 どうやってこの状況を切り抜けようかと必至で知恵をめぐらせているのだろう。


「そ、そういえばライズさんさっきから口調が違いません? 前にあったときはもっと丁寧な口調だったのに!」


「あー、前にあった時は客だったからな。けど今のお前さんは町で遊び呆けてるだけだし。そんなら敬語もいらないかなーっと」


 事実、デクスシの町で暮らすカーラは街中をプラプラと散歩するか、ウィーユス河に出向いてクラーケン達水棲の魔物達とはしゃいでいる姿しか見た事がない。


「うぐぐ……」


 と、そこで応接室のドアがノックされた。


「どうぞ」


 ライズが入室を許可すると、ラミアが入ってくる。


「お話中失礼致します。カーラさん宛てに手紙が届きましたのでお届けに参りました」


「手紙? ウチにか?」


 なぜかカーラ宛の手紙が事務所に届いた事に怪訝そうな顔をするライズ。


「はい。住所はここ宛で宛名はカーラさんにです」


「差出人の名は?」


「カーラさんのお婆様のミティックさんからですね」


「っ!?」


 祖母であるミティックの名前が出てびくりと身体を震わせるカーラ。


「どうぞカーラさん」


「あ、ありがとう」


 顔面を蒼白にしながらカーラが手紙を開封する。

 そして取り出した手紙を読み進めるうちに、表情が緊張→恐怖→半泣き→無表情へと変化していった。


(内容は恐らく遊んでないでさっさと帰ってこいって所か。あとはお仕置きかな? 中々に恐ろしい内容が書かれていると見える)


 手紙の内容を読まずとも、カーラの表情の変化で大体の内容を察するライズ。

 そして全ての内容を読み終わったのだろう、カーラが手紙を持ったまま腕を真下に下ろした。

 その表情はまるで廃人のようである。


「谷の村まで行くけど、送ってやろうか?」


「……お願いします」


 カーラは素直に頷いた。


 ◇


 夜、ライズは魔物達を集めて今後の予定を伝えていた。


「と言う訳で、俺はこの宝石を調べて貰う為に谷の村へと向かう。ドラゴンは仕事だから、今回もクラーケンで運んでもらうつもりだ」


 ちなみに輸送業を営むドラゴンやクラーケンだが、年中無休で働いているわけではない。

 特定の日を休みと定め、また利益が出ないほど客が少ない日、天候が非常に悪い日を休みと定めている。

 客が少ないのにドラゴンを飛ばすのは旨みが少ないうえに、ライズにとって最強の戦力が手元から居なくなる。

 その為ドラゴン馬車は客の人数と荷物の量に応じて馬車が出る日を決めるという変則ルールが取られていた。


 ただし、滅多にない事ではあるが、利益が出る最低限の特急料金を支払えば規定人数以下での出勤もある。

 最も、こちらを利用するのは特別な取引の為に急ぐ大商人か、何らかの事情がある大貴族くらいであるが。


「護衛に数人、それに連絡役としてハーピーにも来てもらう。調べ物が終わるまでは向こうに滞在するから、ドライアドは事務所の運営を、向こうの村でも仕事を依頼されるだろうから、働ける者も数名来てもらう」


「かしこまりましたわご主人様。このドライアド、ご主人様の留守を預からせていただきます。夫の帰りを待つ妻のように」


「っ!?」

「っ!?」

「っ!?」


 ドライアドの言葉に女型の魔物達が色めきたつ。

 そして誰ともなくドライアドに対抗してゆく。


「ご安心を、ドライアドさん。私がライズ様の秘書として、夫を支える妻の様に身の回りのお世話を致しますから」


 ライズの秘書役であるラミアがライズにしなだれかかるように密着して自分こそが最も近い位置にいるとアピールする。


「えっとね、私がライズ様の翼となって声となってお手紙を届けるよー! だって皆と違って空を飛べるもんねー!」


 他の二人と違って頭脳労働の出来ないハーピーが自分の利点である能力を懸命にアピールする。


「私は酒場で歌いながら主様の帰りをお待ちいたします。港で待つ現地妻の様に!」


 どこかズレた発言だが、海の魔物であるセイレーンの思考は海辺の民に近いものだった。その為、男女間の認識も海辺の町の船乗りの妻達の感覚を普通と考えているみたいだ。


「あー、うん、ありがとうな?」


 どういえば正解なのか分からないので、とりあえず感謝の言葉を述べるライズ。


「そんじゃあ話は決まったし、明日は久しぶりに谷の村へ向かう事にする!」


「「「「おー!」」」」

いつも励ましの感想および誤字脱字のご指摘ありがとうございます!

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