元悪役令嬢は捜査する(事件編)1
とうとう最終章に突入!
ある日の夜、王城の庭で、数人の近衛兵が慌ただしく走り回っていた。
「おい、いたか!?」
「いや、ここにはいない! もしかしたら既に門の外に出ているのかも!」
「くそっ、街の衛兵に協力を要請するぞ!」
近衛兵達は、バタバタと庭を走り去って行った。
辺りが静かになると、庭の陰から一人の少女が姿を現した。少女は、簡素な服の上に黒いローブを羽織っている。
少女は、ギュッと唇を噛み締めると、足早に庭を走り去って行った。
◆ ◆ ◆
文化祭が大盛況のうちに終わってからしばらく経ったある日の昼。ヴェロニカは書庫で新聞を読んでいた。
最近はボランティアに社交に忙しかったので、久しぶりに書庫でのんびり出来て嬉しい。そう思っていたヴェロニカだが、新聞記事の中にとんでもない文字を見つけた。
『次期王妃、ハインリヒ王子に危害を加えたか!?』
ヴェロニカは、思わず「えっ!!」と叫んで椅子から立ち上がった。新聞を握り締め、目を皿のようにして記事を詳しく読んでみる。
記事によると、フリーデが、第二王子であるハインリヒを毒殺しようとしたというのだ。
フリーデの自室から、毒の入った瓶が見つかっているとの事。そして動機は、第一王子であるルートヴィヒの王位継承を確実なものにする為だろうと報じられていた。
実を言うと、ルートヴィヒは側妃の子である。年齢と実力が考慮され、今の所ルートヴィヒが将来王になる可能性が高いが、正妻の子であるハインリヒを推す声も少なくない。
さらに新聞を読むと、フリーデは兵士の取り調べを受ける前に逃走したとの事。これはかなり心象が悪い。そして、ハインリヒは一命を取り留めたものの、まだ意識が戻っていないようだ。
「フリーデが、そんな事するはずない……」
ヴェロニカは呟いた。フリーデは、ヴェロニカが学園を追放される原因となった女性だが、今では親友だ。フリーデの無事を祈って、ヴェロニカは新聞を畳んだ。
◆ ◆ ◆
その日の夕方、ヴェロニカはハルトムートと共に食事を取っていた。事件の話をしたところ、ハルトムートは難しい顔をして言った。
「事件については私も聞いている。……君はフリーデ様と仲が良かったな、心配だろう。早くフリーデ様の無実が証明されると良いな」
どうやらハルトムートは、フリーデの無実を信じてくれるようだ。信じる理由を聞いたら、「君の人を見る目を信じているからな」との答えが返ってきた。それを聞いて、ヴェロニカは少し心が温かくなった。
「奥様、失礼致します」
不意にメイドのアルマが声を掛けてきた。アルマは元々ヴェロニカの実家であるシュナーベル家のメイドだったが、ヴェロニカがアルマを信頼している事もあり、アイスナー邸で働く事になったのだ。
「実は、先程庭でとあるお方を見つけまして。初めは不審者かと思ったのですが……どうぞ、お入り下さい」
アルマに促されて食堂に入ってきたのは、黒いローブを身に着けた女性。彼女がフードを取ると、そこに現れたのは――フリーデの姿だった。
「フリーデ! ……いえ、フリーデ様。どうしてここに……」
「……お二人しか、頼れる方がいなくて……。助けて下さい、アイスナー夫人!」
フリーデは、切実な顔でそう言った。
次回も読んで頂けると嬉しいです^^




