元悪役令嬢はワルツを踊る4
フリーデが活躍します!
それから、休憩室にはヴェロニカ、ハルトムート、グレーテル、フリーデの四人だけが残った。そして、ヴェロニカとグレーテルは交互にこれまでの経緯を話す。
「成程。ヴェロニカ様は眠くなって休憩室に向かった。そして、目が覚めたらブレスレットを手に握っていたと……」
フリーデが、考え込むような表情で呟く。彼女の表情は凛々しく、名探偵らしい風格を醸し出していた。
「今回の夜会ですが、王妃になる予定の私の元には、様々な方が挨拶にいらっしゃいました。グレーテル様もそのお一人です。その時には、グレーテル様はブレスレットをしていらっしゃいました。その後衆人環視の中ブレスレットを盗むのは難しい」
フリーデが語る。となると、ブレスレットが盗まれたのは、やはりグレーテルが休憩室に来た時だろう。
「そもそも、ずっとブレスレットを着けていたのなら誰も盗めなかったのでは? 何故ブレスレットを外したのですか?」
ハルトムートがグレーテルに問い掛ける。グレーテルは、俯きながら答えた。
「……実は、私はヴェロニカ様に付き添って休憩室に行ったのですが、広間に戻って知人と歓談していたところ、ブレスレットが無い事に気付きました。あのブレスレットは金具が壊れやすくなっていたので、休憩室に落としたのかもしれないと思い休憩室に引き返しました。そしたら、ヴェロニカ様がブレスレットを手にしていて……」
しばらく沈黙が流れた。まずい。このままだと、自分が犯人にされてしまう。ヴェロニカが焦っていると、フリーデが口を開いた。
「……ヴェロニカ様は、嵌められた可能性が高いです」
それを聞いたグレーテルが苛ついた表情で反論する。
「でも、実際ヴェロニカ様はブレスレットを握っていたんですよ! フリーデ様もご覧になったでしょう?」
「……アイスナー伯爵、ヴェロニカ様は右利きですか? 左利きですか?」
急にフリーデに話を振られたハルトムートは、困惑しながらも答える。
「ヴェロニカは、右利きだ。間違いない」
「それがどうし……あ……」
言いかけたグレーテルが目を見開く。
ヴェロニカも気が付いた。ヴェロニカは右利き。それなのに、ブレスレットを握っていたのは左手。疑われて動揺していたので気付かなかったが、これはおかしい。
「……で、でも、ヴェロニカ様が無実と言う証拠には……」
「確かに、ヴェロニカ様が無実だという物的証拠を出すのは難しいです。しかし、ヴェロニカ様が嵌められたという証拠なら、これから出て来るかもしれませんよ」
グレーテルの言葉に、フリーデは淡々と応えた。
「……な、何ですか? 嵌められた証拠って……」
グレーテルが聞くと、フリーデはヴェロニカの方に視線を向けて言った。
「ヴェロニカ様は、私がこの部屋に入って来た時、寝ぼけ眼でした。ヴェロニカ様本人も、眠くなったと言っています。……でも、本当に疲れからくる眠気だったのでしょうか。夜会なんて少なからず緊張する場なのに、急に眠気が襲うなんておかしいです。もしかして、ヴェロニカ様は睡眠薬を盛られたのではないでしょうか。……そして、睡眠薬を盛ったのは、グレーテル様。あなたなのではないですか?」
「なっ……!!」
グレーテルが、敬語を使うのも忘れて反論する。
「私は被害者よ! どうして私が犯人みたいに言われるの!?」
「犯人は、何故ヴェロニカ様の左手にブレスレットを握らせたのでしょう? もしかしたら、犯人は自身が左利きだから、無意識の内に左手に握らせたのではないでしょうか。グレーテル様、あなたは左利きですよね?」
「……!!」
「少し話がそれてしまいましたね。私が言いたいのは、犯人が睡眠薬を持ち運ぶ際に使った薬包紙か何かを、犯人がまだ持っているかもしれないという事です」
グレーテルの顔に、大量の汗が噴き出している。
「薬包紙を捨てる暇が無かったかもしれませんからね。もし薬包紙が犯人の服から見つかったら、それはヴェロニカ様が嵌められた証拠になります」
確かに、グレーテルは薬包紙をドレスの下に隠し持っている。夜会で知人と挨拶を交わしたりしていて、捨てる暇が無かったのだ。
「くっ……!!」
グレーテルは、唇を噛み締めて、床に膝を突いた。
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