元悪役令嬢は勉学について語る2(生徒視点)
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そして数日後、ザビーネの家に行く日が来た。ヴェロニカは、朝から馬車でザビーネの住む屋敷へと向かう。何故か、ゲオルクとカミルもヴェロニカに同行していた。
ザビーネの住む屋敷は、貴族らしい大きな家で、綺麗な白い壁が特徴的だ。
ヴェロニカ達三人は、玄関で名前と用件を伝えると、すぐに応接室に通された。三人が応接室で待っていると、さほど時間を置かずにザビーネとその両親が姿を現した。両親は、ザビーネに似てブロンドの髪に美しい顔立ちをしている。
ヴェロニカは早速、ザビーネが医師になりたいので応援してほしいという旨をザビーネの両親に伝えた。
すると、ザビーネの父親は真剣な顔で言う。
「女の子に学問は必要ありません。良家に嫁ぐ事が、女性の幸せなのです」
「……失礼ですが、この国の経済が今後どのようになる見通しかご存じですか?」
「は?」
ヴェロニカの質問に、ザビーネの父親は変な声を出した。
それからヴェロニカは、他国の技術の発展が目覚ましく、何も対策をしなければこの国の商品が売れにくくなるだろう事を話した。そうなれば、貴族の収入が減るだろう事も。
なので、娘を良家に嫁がせても経済的に安定するとは限らず、個人が手に職を付ける等しないといけなくなると説明した。
もちろん、今の王もその息子達も優秀なので、実際そうならないような対策はしてくれると思うが、知識や技術を身に付けておくに越した事はない。
「それと、一番大事なのはザビーネさんの気持ちです」
ヴェロニカが、ザビーネの両親をしっかりと見据えて言った。
「お父様、お母様、私、医者になって人の命を救える人間になりたいんです」
ザビーネが、必死で訴えた。
「私は孤児院で友達が出来ましたが、病気で命を落とす友達を何人も見てきました。……それを見る事しか出来なかったのは、とても辛かったです。私は……私のような思いをする子供を少しでも減らしたいんです」
ザビーネの両親は、顔を見合わせた。
◆ ◆ ◆
帰りの馬車の中で、ヴェロニカが嬉しそうに言った。
「ザビーネの希望を聞き入れてもらえそうで、良かった」
「そうですね。ありがとうございました、ヴェロニカ先生」
カミルも笑顔で礼を言う。二人の会話を聞きながら、ゲオルクは焦りを感じていた。カミルもザビーネもしっかりと将来の目標に向かって歩み出しているのに、自分は何も出来ていない。
勉学をする意義も未だわからない。こんな調子で、将来大丈夫なのだろうか。
◆ ◆ ◆
数日後の昼、ゲオルクは街を歩いていた。孤児院の職員に買い物を頼まれたのだ。ゲオルクが市場を歩いていると、遠くにヴェロニカがいるのが見える。ヴェロニカは、褐色の肌をした若い男性に話し掛けられていた。どうやらヴェロニカは道を尋ねられているようだが、会話がうまくいっていない。側に行くと、男性が異国の言葉で話しているのが聞こえる。
ゲオルクはスッとヴェロニカの前に進み出ると、その男性の話していた言語で話しかけた。ヴェロニカが目を丸くする。
無事男性に道を教える事ができ、男性が去った後、ヴェロニカは目を輝かせてゲオルクの両肩を掴んだ。
「すごいじゃない、ゲオルク! どうして東の国の言葉がわかるの? あの方、東の国の方よね」
「……俺、六歳の頃まで東の国にいたんだ。親と一緒にこの国に来てからは、生きる為に必死でこの国の言葉を覚えたけど」
その両親も、ゲオルクが八歳の時に亡くなってしまったが。
「そうだったのね。私も外国語は勉強しているけど、隣国の言語を少し話せる程度よ。……今度、東の国の言語も勉強してみようかしら」
ゲオルクは、少し目を伏せて言った。
「……こう言ったらなんだけど、先生、勉強しなくても生きていけるだろ。何で勉強するの?」
ヴェロニカは、優しく微笑んで答えた。
「私は元々知識を仕入れるのが好きだったし、勉強すれば、誰かを助けられる可能性が大きくなるじゃない。さっきだって、私が東の国の言語を話せれば、私が直接あの方を助ける事ができたわ」
「そっか……」
「ええ、勉学は、人を助ける道具だと私は思ってる」
焦らなくていいのかもしれない。今出来る事を精一杯やればいいのかもしれない。将来人を助けられる可能性を大きくする為にも、もっと真面目に授業を受けようかなと、ゲオルクは思った。
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