表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/44

元悪役令嬢は数学を教える2

読んで頂けると嬉しいです!

 その後しばらく雑談をした後、ヴェロニカはハルトムートと共に孤児院へと足を踏み入れた。

 教員室で授業の準備をしてから、ヴェロニカは教室に向かう。教室に入ったヴェロニカが教壇に立つと、早速授業が始まった。ちらりと見ると、教室の後ろの隅にハルトムートが佇んでいる。この授業の生徒は十歳くらいの少年が四人だけなので、隅に居ても目立つのだが。


「では、先日の復習から。サイン30°は1/2なので、この計算は……」

「待て待て待て待て!」


 思わずハルトムートが声を上げた。


「どうなさいました? 旦那様」


 ヴェロニカが不思議そうに首を傾げる。


「どうしたも何も、この年齢の子供には難しいんじゃないか?」

「もう基礎は出来ているので、大丈夫です。それに、この子達は、将来大工になりたいのです」

「大工?」

「はい。ただの作業員ではなく、設計も出来るようになりたいとの事です。そうなると、三角比の知識が必要になるので、教えているのです」

「……きちんと考えて教えているのだな」

「はい」


 ヴェロニカは、ニッコリと微笑んだ。その後、何事も無かったかのように授業は再開された。



 ヴェロニカの授業が終わり、ヴェロニカとハルトムートは廊下へと出た。すると、教室に入ろうとするライナーとすれ違う。


「あら、ライナーさん、こんにちは。ライナーさんの地理の授業はこれからですか?」

「はい、アイスナー夫人。今日はカラフルな地図を用意……っと、失礼致しました。アイスナー伯爵もご一緒だったのですね」


 靴職人のライナーは、ハルトムートの存在に気付くと慌てて挨拶する。


「畏まらなくても大丈夫だ。私の事を知っているようだが、改めて自己紹介しよう。ハルトムート・アイスナーだ。いつも妻が世話になっているな」

「いえいえ、こちらこそ奥様にはお世話になっておりまして……」


 ライナーが笑顔で応えると、ヴェロニカも微笑んで言った。


「ライナーさんは凄いんですよ。職人さんなだけあって、子供達の興味を引きそうな教材を作ったりするんです。それに優しくて、子供達からもすごく慕われているんですよ」


 べた褒めである。それを聞いたハルトムートは、少し不愉快そうな表情を浮かべる。


「……そうか。しかし、忘れるなよ、ヴェロニカ。君は、私の妻だ」


 そう言うと、人前だというのに、ハルトムートはヴェロニカを後ろから抱き締めた。


「だっ、旦那様、何を……!!」

「おお、お熱いですね。私は邪魔者のようです。それでは、失礼致します」


 ライナーは、苦笑してそう言うと、教室へと入っていった。


         ◆ ◆ ◆


 その日の夜、ヴェロニカとハルトムートは、リビングで二人きりになった。


「今日授業を見ていて思ったが……君は本当に、知識が豊富だな」


 今日、ヴェロニカは数学だけではなく、経済と歴史の授業も行った。


「読書が好きですからね。ある程度の知識はあると自負しております」

「そういえば、以前はずっと書庫にこもっていたな。……最近は、以前より書庫にこもる時間が少ないようだが、いいのか?」

「はい。充実した時間を過ごしております」


 書庫にこもる時間も好きだが、ボランティアをする時間も、こうしてハルトムートと話す時間も大切に思っている。


「そう言えば、旦那様。先程は、どうして人前なのに私を抱き締めたりしたんですか。その……恥ずかしかったです」

「ああ、気にするな。ただの嫉妬だ」

「しっ……!!」


 ヴェロニカは、顔を赤くした。ハルトムートは、嫉妬してくれているのか。いやいや、舞い上がってはいけない。彼は、自分の物を盗られるのが嫌なだけかもしれないのだ。

 しかし、ハルトムートと良い関係を築けているのは事実。こんな日々が長く続けば良いと、ヴェロニカは思った。

評価やブックマーク等を頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ