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元悪役令嬢は再会する2

トラブルが起きるようです。

 ヴェロニカ達が話をしていると、玄関から物音がする。どうやら、もう一人シュナーベル家を訪ねてきた者がいるらしい。しばらくすると、応接室に一人の青年が入って来た。ウェーブがかった金髪が特徴で、好青年に見える。


「やあ、クラウディア」

「あら、何しに来たの、フランツ」


 クラウディアが、フランツと呼ばれた青年に冷たい口調で言葉を発した。


「君のお姉さんがいらっしゃると聞いて、挨拶したいと思ったんだ。……ああ、失礼致しました。私、クラウディアの婚約者で、フランツ・ベックマンと申します」


 フランツが、ヴェロニカとハルトムートに挨拶した。


 お互い自己紹介した後、皆で雑談を続ける。

 フランツはおっとりしているように見えるが、話題が豊富で、ヴェロニカ達も会話を楽しんでいた。フランツは有力な商人の息子で、クラウディアより一つ年上の十八歳。将来有望のように思える。

 身分差はあるが、この世界ではこの程度の身分差のある婚約はそんなに珍しい事ではない。フランツのような優秀な人がクラウディアの婚約者で良かったと、ヴェロニカはホッとした。

 それと同時に、クラウディアがフランツ相手に猫を被っていないので、彼女が人に素を見せるのは珍しいなとも思った。


        ◆ ◆ ◆


 ヴェロニカ達がシュナーベル家を後にしようとして、エドウィン達が引き留めていた時、玄関で人が言い争う声が聞こえた。しばらくして、リビングに一人の男が入って来る。


「クラウディア、お前、婚約したってどういう事だ!」


 茶色い長髪を後ろで縛った若い男が、クラウディアに詰め寄った。


「ちょっと、そんなに大きい声を出さないでよ、マックス」


 クラウディアが嫌そうな顔で言った。


 聞けば、茶色い髪の男の名はマックス・ツェルナ―。クラウディアの元恋人のようだ。といっても、マックスの方はクラウディアと別れたつもりはなく、クラウディアが婚約したのを知ったのもつい最近だと言う。


「俺がお前にどれだけ貢いだと思ってるんだ。俺と別れるっていうなら、貢いだ分返せよ!」

「確かにアクセサリーとか服とか買って貰ったけど、私は買ってとは頼んでない。それに、貢いだ分の金額返せって言われても、いくらかわからないわよ」


 二人が言い争う内容を聞いているよ、どうやらマックスは子爵家の令息らしい。格下の家の男に貢がせるなんて、クラウディアは何をしているのだ。格上の家に乗り込むマックスもマックスだが。ヴェロニカは、クラウディアとマックスの言い争う姿を見ながら、呆れて溜息を吐いた。


「とにかく金で返せ! 金額は……そうだな、二万ザルツだ」


 マックスが、クラウディアを指さしながら言った。ザルツはこの世界のお金の単位だが、結構な金額だ。侯爵家とはいえ、今のシュナーベル家に二万ザルツはきつい。


「そんな金額……」

「僕が払います」


 クラウディアの言葉を遮ってフランツが言った。


「誰だ、お前」


 マックスが、眉根を寄せてフランツに視線を向ける。


「クラウディアの婚約者のフランツと申します」

「お前が婚約者か……いいだろう。お前に払ってもらう。でも、それだけだと気が済まないな。……フランツとか言ったか。お前、一発殴らせろ」

「え……」


 さすがのクラウディアも動揺している様子だ。しかし、何でもないような口調でフランツは言った。


「わかりました。それで気が済むのでしたら」


 それを聞くや否や、早速マックスがフランツの顔を殴った。床に倒れ込むフランツ。


「フランツ!」


 クラウディアが思わず叫ぶ。

 マックスは、嫌な笑みを浮かべると言った。


「……やっぱりもう一発殴らせろ。そうしたら、もうクラウディアには近づかないでやる」


 これ以上マックスの好きにさせてはいけないと思ったヴェロニカは口を挟んだ。


「あなた、ここで呑気に人を殴っている暇があるのかしら?」


 マックスが、ヴェロニカの方を向いた。


「誰だ、あんた」

「クラウディアの姉よ」

「……ああ、横領して学園を追い出されたっていう……。今の言葉、どういう意味だ?」

「新聞で読んだけど、モント商会の経営が危ないらしいじゃない。モント商会って、ツェルナ―家と深い繋がりがあるんじゃなかったかしら。今頃、あなたの家はその対策を講じるのに大忙しのはずよ」

「は? そんな話、聞いてない……」

「恋愛に現を抜かすのもいいけど、自分の為にも、きちんと家の状態を把握した方が良いと思うわよ?」

「……くそっ」


 マックスは吐き捨てるように言うと、バタバタと部屋を出て行った。

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