ピンチザドーター5
最近時間がなくて感想の返信できてないので、質問の多かったおじさんのこれまでの経緯を箇条書きで置いておきますね。まあ本編でも小出しで説明はいる予定ですが。
17年前、善十郎が大学に入学。
大学でヤリサー気味なサークルに勧誘される。
善十郎は烈のような人に好かれる性質があるのでY先輩になつかれ「みんな良い人だなー」と思いつつなんとなく在籍。
しかし新歓コンパで絶対に手を出してはいけないご令嬢を知らず手を出してしまう。
善十郎、一発でヒットしたためにヒットマンという渾名がつく。
ご令嬢の佐世子さん、実家への反発から大きいお腹のまま家を飛び出し善十郎と結婚。
善十郎、大学を中退。生活費を稼ぐためにY先輩のコネで前職の会社に入る。
10年前に前島グループでお家騒動があり、庶民生活に嫌気が差していたこともあった佐世子はそれを機に実家へと帰り、娘は佐世子が引き取った。
養育費は払っている。
佐世子とも凛とも年に数回会っているが、善十郎は佐世子の両親には蛇蝎の如く嫌われているので前島家には基本近づかない。
無職が続いて養育費が払えなくなる状況になったら多分失職したのは伝えていたはず。
……という流れです。
ちなみにティーナさんはそんなおじさんの記憶をフルコピーしているので年々大きくなる娘さんのことも元奥さんとの情熱的な夜もすべて記憶していますし当然凛ちゃんの顔も分かります。そして「いや、ゼンジューローも分かろうよ」と思っています。対して善十郎は「髪が青くて化粧してたら女の子はもう別人なのですよ」と思っています。
ということでティーナさんは精神的非童貞、凛ちゃんの誕生日はバレンタインデーです。
あと善十郎を面倒みてくれたY先輩は多分そのうち出ます。
驚きました。緊急救難信号を辿って救助に向かった先にいたのは私の娘の前島凛さんでした。10年前に別れた元妻の佐世子さんに引き取られていますし、前回会ったのは会社が倒産する前ですね。
しかし驚きました。彼女、メイチューバーをやっていたようです。しかもユーリさんがクランリーダーを務めるオーガニックの芸能部門おが肉所属、つまりはティーナさんの同僚です。
凛さんも今年で十六歳。確かに探索者になれる年ではありましたね。であれば、そういうこともありますか。
「うん。そ、そうなんだー。パパはぁ凄腕の探索者でー。護衛をね。お願いしてたの。うん。でも僕が襲われてて混乱してたみたいでね。あははは。今日はこの辺りで終わりにするね。リザルトはまた次回に回しまーす。それじゃあ次もボクのチャンネルでお会いしましょう。みんなの妹シスターリンでした。チャオッ」
凛さんが配信を終えたようです。
しかしシスターリンとは……もしかして凛さんはかのスターリンがお好きなのでしょうか。娘といえど個人の趣味嗜好に口を出すのは憚られますし、或いは前島家の方針の可能性もあります。だとすれば、私は彼女になんと声をかければいいのでしょうか。いえ、あえて触れないことも勇気なのかもしれません。ええ、そうですとも。私は気づかなかった。
「ふう。ひとまずは片付いた。それでパパ、探索者をやってたんだね」
「はい。凛さんの方もですね。あなたが探索者になっていたことなど、今まで知りませんでしたよ」
「はは、だよね。色々と言いたいことあるかもしれないけど。僕もあるんだけどさ。でも今は手伝って。お願いパパ!」
彼女は焦っている表情でそう言ってきました。
「私は凛さんの怪我の方が気になるのですが……もしかして、まだ何か問題があるのですか?」
「うん。実は吉野さんがこの先で怪我して倒れてるはずなの!」
吉野さんとは、凛さんのお世話役兼護衛の方です。
元妻の佐世子さんのご実家は前島グループという戦前より続く大きな企業の一族の出でした。私と一緒の時、彼女は家を出ていたので普通の家庭だったのですが、実家に戻った佐世子さんに引き取られた凛さんはいわゆるご令嬢として今は育てられています。
そして吉野さんは五年ほど前に財閥に雇われた女性で、私が凛さんと会う時には、いつも一緒に来ておりました。なので私も彼女とは顔見知りでもありますが、確か吉野さんはレベル30台の探索者だったはずですね。なぜ凛さんがひとりでこんなところに……と思っていたのですが、彼女が一緒ならば納得はできます。
グランドアースドレイクなどという規格外の怪物と遭遇しなければ十分に対応できていたのでしょう。
「落ち着いてください凛さん。焦る気持ちは分かりますが、まずは凛さんの怪我を治しましょう。その様子ではまともに動くこともできないでしょうし」
吉野さんの居場所は凛さんでなければ分かりませんし、凛さんが動けなければ探しにも行けません。ラキくんに乗せて移動するにしても傷が塞いでおかないと最悪失血死もあるかもしれません。
「でもパパ。僕、中級ポーションは一個しか持ってないんだ。それに吉野さんの方が重症なんだよ?」
「そうなのですか。ですが中級ポーションなら私も持っていますのでまずは凛さんは手持ちのものを使ってください。吉野さんの分は私のものをお渡ししますので」
「本当? ありがとうパパ。すっごく助かるよ」
そんなわけでまずは中級ポーションを用いて凛さんの怪我を治します。
それから包帯を巻いて添え木をして応急処置を終えた彼女をラキくんに乗せると私たちは吉野さんの捜索を開始しました。とはいえ、ここはリビングバレーの先を越えた境界の森というエリアで、深化の森同様に木々が入り組んでいる場所です。
探すのにはなかなか骨が折れそうですね。すぐに見つかると良いのですが。
【次回予告】
少女は嗚咽し、泣き叫んだ。
されどここは地獄の端。魔獣が巣食う人外魔境。
故にその命は零れ続け、帰還にはあまりにも遠く、救うには奇跡が必要だった。





