クマクマベアベア16
蘊蓄:レッサーパンダは自分の尻尾を抱き枕にして眠る。
「おお、マジでラキだ。デケェ。進化したらこうなるのかよ。5メートルはあるし、燃えてるし、どんだけパワーアップしてんだよ。すげえなラキ」
「キュルルルッ」
戦闘終了後、烈さんが合流したラキくんを見て、驚きの声をあげています。ラキくんも大きくなりましたからね。それに燃えています。烈さんが興奮するのも無理はありませんし、ラキくんが万歳ポーズで猛ってしまうのも仕方のないことなのでしょう。
「あー、しんどい。魔力切れー。これヤバい。調整しないと死ぬ。マジで死ぬかも」
「ニパー」
それから死にそうな顔をしたティーナさんと動かなくなったサーチドローンを乗せたフォーさんも竹林から出てきました。どうやら最後の一撃でティーナさんの魔力は尽き、サーチドローンも壊れてしまったようです。
「ティーナさんもお疲れ様です。最後は大活躍でしたね」
「頑張ったわよー。でもドローンも出力に耐えきれなくて壊れたし、魔石も見てよ。ほら」
ティーナさんがサーチドローンにくっついている魔石を指差しました。そこには魔獣植物のシルヴァーナが絡み付いていて、魔石内にもシルヴァーナの根がびっしり生えています。
「小さな鉢に植えられた草の根みたいになってますね。これはどうしたのですか」
「ラキがいなくなってシールドももちそうになかったから、色々すっ飛ばして最速で使えるように仕立てた結果がこれなのよ。シルヴァーナを強引に繋げたから、元に戻せなくなっちゃった。ごめんねゼンジューロー」
「いえ。依頼の契約上、アスラベアの魔石は我々のものとなりますから問題はありませんが……戻せないというのはどういうことでしょうか?」
「あのアスラベアの次元爪嵐だったっけ。アレを使うために加工してたんだけど、完全に制御するために色々掘っちゃったし、繋げちゃってねー。分かりやすくいうとオートマティックをフルマニュアルに変えた……みたいな? 多分私以外は操作できないシロモノになっちゃったわ」
「なるほど……まあ、ティーナさんの攻撃手段は今までなかったわけですし、ちょうどよろしいのではないでしょうか?」
城塞の指輪のキャッスルシールドの防御は非常に高いのですが、ティーナさんには攻撃の術がなかったですからね。フォーさんという護衛もいますが、戦える手段は多い方がよろしいでしょう。
「しかし、あの威力のものを作れてしまうのだなクィーン・ティーナ」
「ラファールも無事だったみたいね。あの出力はポンポン出せないけどねぇ。ドローンも壊れたし、私もヘロヘロだし」
「まあ確かに……ちなみにそれを売ってもらうのは無理であろうな」
「非売品よ。私にしか使えないし」
「なるほど。では、本国に連絡してシリアルナンバーを用意しておくのはよろしいかな?」
「うん。お願い。アレを表立って使うためにも後ろ盾はあった方がいいしわ。下手すると色々と理由を付けられて没収されるかもしれないし」
ティーナさんしか使えないのなら売るのは難しいでしょうが、盗品扱いされないのはありがたいですね。こちらも個人なので、どこかしらから疑惑の目を持たれる可能性があるのは怖いですから。
「ウォォオオオオオオ、あっちぃいい!?」
おや、烈さんの声ですね。
燃えながらラキくんに抱きついております。熱くないのでしょうか。いえ、たった今熱いと言っておりましたね。
「ラキが燃えておるな爺」
「燃えておりますね坊っちゃま」
「私はあの炎に当たっても燃えないのですけどね」
「魔法の炎だからでしょうね。魔法は術者には効かないってヤツ。ゼンジューローと私は問題ないはずよ」
確か、従魔も召喚獣も主の魔力と同質になっているという話でしたか。となるとフォーさんは……あ、ひまわり顔の端っこが焦げていますね。近づいたのでしょうが、駄目だったようです。
「はっはー、あっつーいぜぇ」
「キュルルル」
それにしても烈さん、燃えながら笑っています。炎のダメージも入っていると思うのですが、さすが上級探索者ということでしょうか。
「けど、なんでラキは急に進化したのかしら?」
ティーナさんが首を傾げていますが、私にはもう答えは分かっています。ラキくんは私の危機を察知して、覚醒したの……
「んー。恐らくではあるが、ミスター・オオヌキが魔獣の攻撃を受けて吹っ飛んだ時にラキが再召喚されたのであろう? 恐らくはそれが原因であるな」
再召喚?
「ああ、そういうことね。盲点だったわ」
ティーナさんが納得した顔で頷きました。
ふたりとも何かしら分かった感じのようですが、私には理解が及びません。
「どういうことでしょうか?」
「再召喚よ再召喚。いいゼンジューロー。召喚獣は召喚を解除して再召喚されるたびに肉体を魔力で再構築されるのよ」
「毎回新品に変わるということですか?」
「そんな感じ。でもラキって今まで再召喚されたことってあったかしら?」
「再召喚。うーん。ラキくんは最初から召喚解除されるのを嫌がっていましたからね。幼獣形態なら邪魔にはなりませんし、多分、今まで一度も……もしかして進化の条件とは再召喚されることだったりするのですか?」
「その可能性が高いと思うわ」
「……なるほど」
私のピンチにラキくんが覚醒した……というわけではなかったのですか。それはそれで残念ですが、ラキくんがパワーアップしたのだから良しとしましょう。
「ただ、アレですね」
「キュルル?」
私の言葉が聞こえたのか、ラキくんが私の方を見て首を傾げました。
「その燃えたままの姿だとホテルには入れなさそうですね」
「キュル!?」
「中庭を借りて、小屋……建てましょうか? 防火性の」
「ピーーーーー(悲しみの鳴き声)」
「うわ、ラキ。暴れるな。あばーー!?」
その後、ラファールさんの説明で従魔の進化は成長だから戻れないが、召喚獣はある程度の融通が利くから戻すことが可能だろうと言われ、ラキくんがその場で色々血頑張って元の状態に戻りました。
その後のラキくんの説明を聞いたティーナさん曰く、幼獣化との間を留めるような感覚で戻れるらしいわよ……とのことでした。よく分かりませんが魔獣特有の感覚なのでしょう。ともあれ戻れてよかったです。
自分の尻尾を抱き枕に眠るラキくんの姿が見れないのは私も悲しいですからね。
【次回予告】
沢木素子。
その者、悩み多き熟練の乙女。
いくつもの苦難を乗り越え、
いくつもの試練を切り拓いた彼女の戦いは、
ついに新なる段階へと至った。
もはや日本に留まらぬ彼女が次に向かうは世界。
海の向こうにあるグレートブリテン王国。
待ち受ける運命を前に彼女は何を望み、
何を成し、何を得るのか。
そして、物語が今動き出す。





