クマクマベアベア15
収納おじさんの元々の副題~最弱の中年探索者は収納スキルでラスボス系能力『時間操作』に目覚めました~がようやく回収されました。
「やはり……止められましたね」
収納スキルの目玉機能といえば時間停止です。収納空間の中の時間を止めることで、いついかなる時でもあったかいご飯が食べられる……という素晴らしい能力なのですよね。熱いコーヒーも冷たいコーラも入れておけます。私のペットボトルサイズの収納空間でも十分に有能な能力と言えるでしょう。
そして時間停止収納なのですが、ティーナさんが魔法具で大量の魔獣を仕留めて私のレベルが25となったことでついに手に入ったのです。本丸さんもそのくらいに時間停止の収納空間が作れるようになったそうなので順当と言えば順当な結果なのでしょう。
また時間停止収納空間を解除した結果は、これまた予想通りのものでした。つまりは私以外の周囲の空間が静止したのです。
そして先ほどの状況ですが、あの巨大なモノクロバッドベアの突撃を止めたのは移動ルート上に配置した収納ゲートで、転げた箇所に辿り着いたのは時間停止解除……タイムストップでは収納空間の名称と同じですし、解除では分かり辛いので、時間停止解放とでも名付けましょうか。その時間停止解放によって『時間を止めて』近づいたわけですね。
ただ、予想外のトラブルもありました。この時間停止解放は時間遅延解除と同様に体感で十秒ほど時間を制止させることができるようなのですが、その間は通常の収納空間を発生させることができなくなっていたのです。
どうやら時間停止解放で静止させた空間内では他の収納空間は干渉できないようですね。ただ配置自体は可能だったので、口の中に照準を絞って収納空間を配置し、時間停止解放が解除された時点で配置した口内で開いた収納空間を解除して、八方へとロックナイフを射出させました。
ドラゴンほど口内が硬ければ圧縮空気弾で駄目押しする必要もあったのですが、幸い熊なので普通に切れました。初見対応としては十分な成果になったのではないでしょうか。
ただ……その、贅沢な話かもしれませんが、大きくなって燃える姿になったラキくんや、大規模範囲攻撃ができるようになったティーナさんに比べて……私の新技、すごく地味じゃないですかね。自分だけが移動できるというのは使い勝手が良いかもしれませんが、もっとドッカーンとかすっごい感じの、もっと派手な、爆発するような大技の方が良かったような気がします。正直、客観的に見たら時間遅延解除と効果はあまり変わらないのではないでしょうか。
ともあれです。素早そうな相手だったので時間遅延解除だけでは対処が難しかったと思いますし、土壇場ではありますが、時間停止解放を覚えられたことでこうして助かったのですから、贅沢を言ってはいけませんね。
「よお、大貫さん。助かったぜ」
「烈さん。戻ってきてくれたのですね」
統率個体を倒せて安堵した私に烈さんが声をかけてきてくれました。
烈さんはゴールドクラブと共に一度は熊竹渓谷を離れたはずですが、戻ってきてくれたようです。
「ま、俺ができたことってのはほとんどねーし、余計なことだったかもしれねえがな。大貫さんが統率個体を倒したことで熊どもも逃げ始めているし」
「確かに……先ほどはずっと襲ってきていたのですが、今は離れていっていますね」
烈さんの言う通り、モノクロバッドベアも、ハーフムーンブルーベアもどちらもついに逃げ始めました。
アスラベアを倒した時にはハーフムーンブルーベアは怒り狂ってこちらに迫ってきたのですが、どちらの統率個体も討伐したことで勝ち目がないと悟ったのかもしれません。
「爺が結構ピンチであったのでな。戻ってきてくれたミスター・レツにも、倒してくれたミスター・オオヌキにも感謝なのである」
「ありがとうございます大貫様、烈様」
「んー、まあいいってことよ。どうにか片付いたみたいだしな。それにしても最後の大貫さんの一撃すごかったな。いきなり、あのデカブツの首がブッ飛んでびっくりしたぜ」
「首というか、口の周囲ですねえ。下顎は残っていますよ」
「あ、本当だ。うわ、グロい」
そうですね。切り飛ばしたのは口内から上下にですからね。
どれだけ強くても内部からの攻撃には弱いのが生き物です。とはいえ、ワンパターンとなっていますので次はソーラービームを温存して正面から対処したいですね。ソーラービーム10個ぐらい丸く並べて撃ったら派手に見えますかね?
【次回予告】
赤熊の勇者は新なる地平に降り立った。
異なる世界に在った古の伝説は、
再び伝説への道へと足を踏み入れた。
それは熱き魂から立ち昇る炎の道。
されど、力を得るには代償が必要だった。
その代償が孤独への歩みだと知った時、
悲しき獣の瞳から一条の涙が零れ落ちた。





