クマクマベアベア14
アスラベア勝手に死ぬ→22→フォーさんと熊虐→23→ラキくんと熊虐→24→ティーナさんが大量熊殺→25←今ここ!
熊さんたちはただ必死に生きているだけなのに……
「烈さん。周辺に魔獣の気配はありません」
田崎がそう叫ぶ。熊林渓谷は越えた。
今いるのはニンジャレイクフォレストの手前だ。
いや、ここに来るまでが本当に長かった。距離を考えれば、そんなに時間がかかったわけじゃあないはずだが、何しろ状況にレベルが見合ってないこいつらと一緒だ。こっちのミスで即死しかねねえから神経がすり減りまくったぜ。だが、全員無事だし、面倒な状況もここで終わりだ。
「分かった。なら、もう大丈夫だ。ここからならゲートまではお前らだけでも戻れるな」
「も、戻れますが……烈さんはどうするんです?」
小島。リーダーのテメェが不安そうな顔してんじゃねーぞ。たくよー。
「熊竹渓谷に戻るに決まってんだろ。あの熊どもの数、見ただろ。ここで足止めしておかないと最悪魔獣災害発生だ。だったら俺らも……なんて言うなよ? その力がお前らにはねえのはお前ら自身がよく分かってんだろ」
俺の言葉に田崎が苦い顔をするが、言い返しはしない。
ここまでの戦闘でこいつらの体力も、精神力も限界に近いからな。正直、この先のニンジャレイクフォレストだって今のこいつらには厳しいだろうが、すでにシーカーデバイスで外には状況を連絡済み。増援の探索者たちがこっちに向かってるところだ。道中でニンジャゴブリンどもに苦戦したとしても合流はできるだろうよ。
問題はあの熊どもの縄張り争いだ。負けた方の群れが俺たちの匂いを辿ってゲート側に向かった場合、魔獣災害が起こる可能性がある。魔獣ってのはゲートを見ると飛び込もうとする習性があるからな。千体を超える魔獣の熊の群れが上野を襲うとか、マジでヤバい。
「じゃあ行ってくるぜ。お前らも気をつけろよ」
「「「「「はいッ」」」」」
一応探索協会からは、俺にはこの辺りで待機して、状況をうかがって欲しい様だったけどな。
まあ、事前情報からしてラファールはともかく、大貫さんは死んだも同然って判断になってるだろうからな。ま、知ったこっちゃねえが。
「さーて。死んでくれるなよ大貫さん。ラファールもだがよ」
ここまでゴールドクラブを守りながらの撤退戦と違い、戻りの道で苦戦はしないな。大体は倒したのと、ハーフムーンブルーベアクラスならどうとでもなるし、ゴールドクラブを守る必要もない。ぶっちゃけ何かを守りながら戦うってのは苦手だ。何も考えずにブチのめす方がいい。
「グマァ」
「ようさっき振り。じゃあ死ね」
おし、レッドヴァジュラなら一撃だな。
「ハンッ、さっきまでの俺と同じと思うなってんだよクマ公がよ」
レッドヴァジュラと足輪型魔法具ルドラ・ヌープラによる高速突撃形態。攻撃と機動力を魔法具に任せて、身体強化のスキルを全体から魔力制御と高速思考に全振りする。これが俺の全力だ。まあ、ゴールドクラブを守りながらはできねえし、俺の切り札でもある……が、今はそれを切る時だ。
「ウォォォオオオオ!」
目の前に出る熊どもを轢き殺しながら竹林を突き進む。フルムーンイエローベアの次元爪も仕掛けられる前に葬っちまえば関係ねえ。モノクロマスキュラーベアも殺しきれなくても吹き飛ばせば、追いつけやしねえ。
大貫さんとラファールが無事なら、合流さえできればここから抜け出すことだって……
ギガガガガガガガガガガッ
「な!?」
大量にガラスが割れたような破砕音? こいつぁ、空間系魔法特有の空間を破壊した際の音だ。まさかアスラベアの次元爪嵐か? 空中に舞っている竹の状態や数からして映像で見たのよりも範囲が広いが……まだ生きていたっていうのかよ?
「畜生。間に合ってくれよ」
「プワンダァアアアアア!!」
「ハァ?」
俺が突き進んでいくと、目の前に巨大なパン……いや、マッチョなモノクロバッドベアが現れた!?
デケえ。クッ……こいつ、俺のレッドヴァジュラを止めた? まずい。掴まれた。このパワー、振り解け……
「お下がりを」
「御剣さんかッ」
直後に横から飛び出した御剣さんが攻撃を仕掛けて、それを巨大モノクロバッドベアがレッドヴァジュラを手放してそれを避けた。ふぅ、ヤバかった。
「助かったぜ御剣さん」
「いえ、こちらこそ。注意を惹きつけていただけて助かりました」
「まったくであるな。息つく暇ができたのである」
「ラファール、アンタも無事だったか」
「うむ。辛うじて……ではあるがね」
そう口にしたラファールの毛並みは乱れて血まみれだった。御剣さんも、着ている氷の鎧がいつ砕けてもおかしくないくらいにボロボロだ。このふたりがここまで追い詰められるのか。
目の前にいる巨大モノクロバッドベア。過去にデータのない個体だが、まあ、ひと目でヤバい相手だってのは俺にも分かるな。8メートルの筋肉お化け熊ってなんの冗談だよ。
「どっちも五体満足そうで何よりだ。大貫さんは?」
「分からんのである。先ほど、かなり範囲の広い攻撃が展開されたのであるが」
「ああ、さっきのか。アスラベアの次元爪嵐に見えたんだが、まだ生きてたのか?」
「さてな。吾輩はその魔獣も攻撃手段も知らんが……ただ、アレは『ミスター・オオヌキの魔力』で撃たれたもののようなのである」
「ハァ?」
大貫さんがあの攻撃を放ったってのか。流石にそれはねえだろ? だが、あの人なら……
「プワンダァアアアアア!」
「考えるのは後。来るのである」
「畜生。今はこっちか」
まずはこいつをどうにかしねえと駄目か。だが果たして勝てるのか。多分、身体能力特化型。イギリスの英雄を追い詰める相手ってこたぁ、完全に俺の格上だ。
「パンッ、ダ!?」
「なんだ!?」
突然、巨大モノクロバッドベアが『見えない何か』にぶつかったように途中で跳ね飛んで、転がっていった。いったい何が起きて、いや……アレは見覚えがある。見覚えっていうか、前に受けた記憶が……うん?
「え?」「ミスター?」「大貫さん?」
倒れている巨大モノクロバッドベアの前に……大貫さんがいた。いつの間に? 転げた先に元からいたのか? そんなはずは……いや、そんなことよりもだ。
「大貫さん。逃げろ。いくらアンタでもそいつに接近戦はッ」
ザクンッ
「まず……おいおい、マジか!?」
直後、何かが切り裂かれた音……に続いて、ドスンと重い音が聞こえてきた。
何が起きたのかは明白だ。あのボスパンダの首が千切れて飛んで、地面に落ちた。ああ、そうだ。それだけだ。あの怪物が、なんの抵抗もなく、呆気なく首を落とされただけなんだ。
「一撃であるか」
「なんと……」
やったのは大貫さんか? いや、他にいねえよな。でも、なんだ? 何をした大貫さん??
そして驚く俺たちの前で、首から血が噴き出ている巨大熊の前で、あの人が何かを呟いた。
トメラレマシタネ?
分かんねえ。俺にはアンタが何を言っているか分かんねえよ大貫さん。
【次回予告】
そして世界に楔は打ち込まれた。
生まれ出たのは真性なる怪物。
刻すらも支配する境界を越えし魔人。
それは終焉の獣にすら届き得る力である。
その事実を未だ世界は知らない。
誰ひとりとして気付いてはいない。
けれどもソレは生まれた。
生まれてしまった。
故にここに地球の命運は確定したのである。





