クマクマベアベア12
「やっちゃえラキ!」
「フーーーッ、ガッガッ」
ラキがキャッスルシールドを出て、集まっていたハーフムーンブルーベアの群れをまとめて吹き飛ばした。ラキの体はハーフムーンブルーベアよりも小さいものの、パワーは上なのよね。タイミングを見計らってカウンターを狙えばこうやって一撃で倒すことだってできるわ。
それに私の持つアーティファクト『城壁の腕輪』とラキの相性は抜群にいいのよ。
「グマァアアア」
「下がってラキ」
「キュルッ」
別のハーフムーンブルーベアが突撃してきたけど、キャッスルシールド内に戻ったラキに攻撃は通らない。この無敵の盾に守られながら、ラキは自由自在に攻撃が行える。それが一体多数でも戦いが成立している理由。
「いいわよラキ。一方的になぶられる痛さと怖さを教えてあげなさい!」
「フーーーー、ガッガッ」
再び迫った熊たちが弾かれたのを見計らって、ラキがキャッスルシールドをすり抜けてカウンタを入れていく。容赦のない一撃は確実にハーフムーンブルーベアを仕留めていくわ。
「ふふ、想定以上に強力なコンボね」
私の乗るサーチドローンに搭載されているアーティファクト『城壁の腕輪』が発生させる『キャッスルシールド』は物理攻撃も魔法攻撃も防ぐ強力な魔法具だけど、唯一発生させた者の魔力だけは通すという特性があるの。
これは使用者がシールド内から魔法を撃つために付けられている条件なんだけど、私とラキはゼンジューローを主人としている関係で魔力がゼンジューローとほぼ同一になっている。それがラキの強みになってるのよ。
フォーではキャッスルシールドを通り抜けできないし、物質的な肉体を持つゼンジューローも、ついでに使用者である私自身もシールドを抜けることはできない。でもラキは違う。あの子は召喚獣で、ゼンジューローの魔力で構築された魔力構造体であり、言ってみれば存在が魔法そのもの。だからこそラキはキャッスルシールドを通過できるし、某アクションホラーゲームなどでみられるドア戦法に近い一方的な攻撃が可能なわけ。
「ガッ! ガッ!」
「グマァアアア」
これはゼンジューローにもフォーにもできない、ラキだけが可能とする無敵の戦術『ワンサイドラキアタック』。
「ラキ、上手いわよ。必要なのは近づけないこと。深追いの必要はないわ」
「キュルッ」
ラキもこちらの意図を理解してくれている。欲しいのは時間。私たちが防御に徹し、今攻撃する必要はないと熊たちに思わせれば、それだけ時間が稼げる。熊たちも私たちが突然現れたイレギュラーだから襲っているだけで、本来の敵は敵対している群れだもの。
ゼンジューローも距離は離れてるけど敵を引きつけてくれてるし、ラファールたちもモノクロバッドベア相手に善戦してる。ちょっと押されてるようだけど……場合によってはゼンジューローには単独で空から逃げてもらうことも考えたけど、この状態ならまだもつはず。そうして時間を稼いで『こいつ』が完成さえすれば、私がでっかい一撃を……
「ピーーーーー!?」
「え、何? って、ちょっと!?」
ラキが鳴いた? なんで? え、あの空中に飛んだ影はまさか!?
「まさかアレって、ゼンジューローなの?」
「ピーーーーー!」
間違いない。ゼンジューローだわ。なんで吹き飛んで……直に攻撃を受けたの? 駄目、意識をほとんど感じない。でも人の形を留めてるってことはダメージ自体は防げてるはず。シールドは間に合ったってことね。でも大地の銀花の反応が鈍いから次はマズいわ。だったら……
「ラキ、行きなさい!」
「!?」
私は今、手が離せない。ここで止めたら逆転の目が消える。なら方法はひとつしかない。私がいけないならラキがいけばいい。走ったところで間に合わない距離だけど、それはラキには関係ない。だってあなたは……
「思い出しなさいラキ。あなたの在り方を。本当のあなたは今、『どこ』にいるの?」
召喚獣なんだから!
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「ミスター・オオヌキィ!?」
いかん。ミスター・オオヌキがハーフムーンブルーベアの一撃で吹き飛んでしまったのである。
あの男はハーフムーンブルーベアなども圧倒していたが、その身体能力自体は一般人と変わらぬのだ。今の一撃も生身で受ければ即死であったろうから、ギリギリシールドが間に合ったのだろうが、あの様子では意識がないか。このまま熊の群れに落ちたらリンチでミンチなのである。
「爺ッ、いけるか?」
「申し訳ありません坊っちゃま。今は無理でございます」
むぅ。爺もあの統率個体を相手にしていて動けぬ。だが、あの男を死なせるのはまずい。従魔契約が切れて精神が不安定な状態の妖精女王が野放しにでもなれば、この島国なんぞあっという間に落とされる。こうなれば吾輩が『精霊化』してでも……
「む?」
なんであるか。ミスター・オオヌキから赤い、いやオレンジ色の炎が放たれた?
「坊っちゃま。何が起きているのですか!?」
「分からんのである。だが……」
巻き上がった炎が竜巻のように吹き荒れ、何かの形になっていく。アレは5メートルはあるドラゴン……いや、まさか巨大なレッサーパンダだと????
【次回予告】
黒から白へ。
白から黒へ。
盤上のすべてがくつがえる時、
豪炎が飛び交い、
破壊の嵐が吹き荒れる。
それは新なる勇者の伝説。
赤熊の勇者の第二幕の始まりだった。





