バンブーパンダ10
やっぱり魔獣の動きが活発過ぎるな。
小島たちも驚いているが、今回ゴールドクラブが戦ったモノクロバッドベア三体、ラキたちが仕留めたハーフムーンブルーベア三体以外にもハーフムーンブルーベアが六体、この場に近づいてきていたんだよ。
流石に数が多いから俺も参戦しようとしたんだが、大貫さんが「ラキくんのご飯にしますので私の方で処理いたしますね」とか言って、ひとりで戦い始めたんだ。いや、俺にも戦わせろよな。
ただ、まあ問題は戦いそのものじゃあない。
「倒されて拘束されてる?」
「どうやって?」
「なあ。あっちの個体、なんか浮いてない?」
「確かに」
「なんなのよ。アレ!?」
ゴールドクラブの面々の言う通りにハーフムーンブルーベアたちが倒れたまま、拘束されているんだ。
手足をバタバタさせ過ぎて土を掘り返して地面がなくなったから空中でバタバタしているのまでいる。つまりアレってハーフムーンブルーベアを空中で固定してるってことだよな。そして大貫さんは大貫さんで、倒れながら暴れる熊たちを尻目に、最後の一体の相手をしている。
「グマァアアア」
「※※※※※※」
大貫さんが何かを喋ってるみたいなんだがよく聞こえない。
倍速音声に近い響きだし、恐らくだがあの人のスキルのひとつは単純な身体加速ではなく、思考も含めた自身の高速化なんじゃないか……いや、大貫さんって使ってるスキル多過ぎない?
「あ、足が折れた?」
「鉄球? あれ、鉄球だよな?」
「いきなり飛び出して熊の両足の膝を割ったぞ」
「……イタソ」
「と言うかあのおっさん、気功師じゃないのかよ」
気功師かどうかはもう分かんねえな。
俺でも見えない攻撃があるのは確かだし、確認した限りでは超加速と謎の鉄球攻撃も行ってる。あ、今のは見えない打撃だな。畜生。まったく視認できねえや。
「うーん。私と同じで収納空間内に鉄球を撃つ砲台を仕込んでるのかも? 収納ゲートを出す際の空間の歪みもないから違うかもだけど」
収納スキル持ちの本丸が首を傾げながらそう評した。
なるほど。大貫さんはランクFの収納スキル持ちだとは教えてくれた。ペットボトルサイズの収納空間なんて大して役に立たないと思ってしまったが、本丸も魔法具の銃火器を収納空間内に入れて攻撃に使用している。
似たような工夫をすればランクF収納スキルも立派な遠距離武器になるってわけか。さすがだな大貫さん。新人とは思えない仕込みをしてやがる。ただ、その後のやってることが分からねえんだよな。
「あ、倒れた青熊が他と同じようにその場から動けなくなってる」
両足の骨が砕けたようだが、両腕は元気だからな。魔獣なら這いずって戦うことだってできるはずだ。だが、動けない。
「烈さん。アレってどうやって拘束してるんです?」
「知らねえよ。ただ、多分スキルだろうな」
大貫さんが空間に不可視の何かを出すのは模擬戦している時に身をもって体感してる。多対一だったにも関わらず、ハーフムーンブルーベアを一体ずつ拘束できたのも他の個体が何かに阻まれて、大貫さんに近づけなかったからだ。
俺の知ってるスキルだとインビジブルイージスに近いか。ただあっちは強固な壁って感じで破壊できないとは思えなかったが、大貫さんのはアーティファクトの不壊効果に近い感覚だった。俺が根本的に勘違いをしてるか、そう感じてしまうほど強固過ぎるかのどっちかかもしれないけどな。
そして大貫さんが最後の六体目を拘束するとラキを呼んだ。ああ、準備が整ったってわけだ。
「はい。ラキくん。用意できましたよ。私が倒しても経験値は共有されますが、やっぱり直に仕留めた方が効果がありそうですしね。魔石も一緒に食べちゃってください。そちらの方が良いらしいので」
「キュルッ」
「はい。そっちの端から仕留めてくださいね。活きが良いうちに召し上がってください」
「キュルルルッ」
ああ、大貫さんの合図でラキが容赦なくハーフムーンブルーベアに一撃を見舞っていく。
いや、あいつらは魔獣で、俺らも普通に倒している相手ではあるんだが……ああして身動き取れないまま、怯えた顔で殺されていく姿は……なんというか、その、生きるのって残酷だなって思ってしまうよな。
はぁーーー……うん? あっちのはなんだ?
もう一体倒れているんだが、色が黄色いってことは上位種のフルムーンイエローベアだよな。次元爪って厄介な技を使うやつなんだが。
そいつが頭から血を吹き出してる?
なんでだ? 大貫さんが仕留めた……のか?
【次回予告】
楽しい食事の刻は終わった。
黄色き獣の死の意味も知らず、
男は再び歩き始めた。
闘争の渦が巻き始めた大地を踏み締め、
ついに男はソレを認識する。
竹藪の先、そこにいる何か。
待ち受ける、その白き存在の正体は……





