バンブーパンダ07
前章で登場させた時にはバランスブレイカー過ぎて扱い切れるかなーと思っていたソーラービームさん。通常技に。
近づいてきたハーフムーンブルーベアですが、烈さんが一体、ティーナさんたちが一体、私が一体を請け負うことになりました。
ひとまずは一体ずつで戦ってみて、試してみようということですね。
「アースシールドを張ってないんだから当たったら一発よ、一発。気をつけなさいよゼンジューロー」
「承知しています。ですが、やはりシールドはない方が良いですね。感覚的にですが」
アースシールドは私を確実に守ってはくれますが、大事な感覚が塞がれている気もします。今は良くても、使い続けていたら成長が阻害されていたかもしれません。私が目指すのは最高の探索者です。亀のようにシールドの中に閉じこもっていては大成しないはずです。この心構えが大事なのだと思います。はい。
さて、烈さんが上手く誘導してくれたおかげで私の方にもハーフムーンブルーベアが一体近づいてきております。
「ブルゥウァアアアア」
興奮状態ですね。もしかすると、この三体はあのモノクロバッドベアから逃げていた三体への救援のために来ていたのかもしれません。残念ながら彼らは捕食されてしまいましたし、救援組もここで全滅となるわけですが。
「ブラァア」
速いですね。それでは時間遅延解除です。
ふむ、時間を遅くしましたが相手もそれなりに速い。やはり魔獣も強くなるほど速度も上がりますから、時間遅延解除の優位性はどんどん減っていくのでしょうね。とはいえ、この速度の相手ならばまだ問題はありません。
それでは、空気弾をゼロ距離で撃ってみます。
「ッ」
うーん。効きはしますが、倒せるほどではない。ラキくんと戦った時もそうでしたね。肉の壁というのは厄介です。この感じでは、石でも鉄でも散弾では仕留めきれなさそうです。鉄砲弾は……
ゴウンッ
頭部が砕けましたね。ですが生きている。脳みそが出てますが、こちらに向かってきています。流石魔獣ということでしょうか。圧縮空気弾はどうでしょうか。ふむ。足の関節は砕けますか。つまりは鉄砲弾と圧縮空気弾なら通用すると。それではこちらの攻撃はどうでしょう。新しい必殺技の……
「ソーラービーム・リユースです」
おお、ハーフムーンブルーベアがボワっと燃え上がりました。これは確殺というヤツですね。
ソーラービーム・リユース。これは遺跡でダークハンズ相手に使用したソーラービームの応用技です。
ソーラービームは一度撃ったらそれまででした。そのため、弾数を増やそうと収納ゲートを重ね合わせることで漏れることなくソーラービームを別の収納空間に移動させて、より多くの収納空間にソーラービームを詰めようとしたのですが、その過程で私は気づいてしまったのですね。
収納ゲートを重ね合わせずに距離をとって移動させれば、その途中の空間にいる相手を灼けるのではないかと。
つまりは、ゴーレム解体に使っていた鉄球弾ハンマーの応用です。
収納ゲートを正確に置けるのが5メートルまでですので射程距離もそこまでとなりますが、私の試みは正しく成功しました。
何度か使えば当然威力も落ちるでしょうが、物理的に射出するだけの鉄砲弾や石の方が逆に砕けることも多い石砲弾では火力不足になることもありましたので、手札が増えたのは純粋に喜ばしいことです。
ただ、この攻撃には問題があることが今、分かりました。
それは、火力が高過ぎて魔獣が燃え尽きてしまうため、素材が回収できないということです。これは魔石の回収すら無理ですね。となれば、ハーフムーンブルーベア相手には、鉄砲弾と圧縮空気弾で倒していかないと戦い損になりそうです。
あ、時間遅延解除が解けました。戦闘終了です。
「ハーフムーンブルーベアを一撃で燃やし尽くすのかよ。ヤバいな大貫さん」
戦闘終了後、私に続いてハーフムーンブルーベアを仕留めた烈さんが近づいてきて、そう言ってきました。ヤバい? まあ、素材の回収もできないほどですからね。良い意味でも悪い意味でもヤバいという表現は適切なのかもしれません。
それよりも烈さんの持っている武器が気になりますね。
レッドヴァジュラ。密教の法具である独鈷杵にも似た外観の大きな武器です。名前の通りに真っ赤なのが特徴的で、アレが自由自在に飛び回って敵に対して攻撃を仕掛けるのだとか。
「そういう烈さんも一撃ですか。それがレッドヴァジュラ。烈さんの探索者としての本気はそれありきなのでしょうね」
確かに私は烈さんに二度勝利しましたが、素手の烈さんに勝ったとしてもそれが実際の、探索者としての彼の実力というわけではありません。探索者の戦闘能力とは武器やスキル、それらを総合し初めて本当の実力が分かるというものなのです。
「へっ、こいつでやり合うなら殺し合いだからなぁ。それにしても大貫さんもだが、そっちの従魔も強いな。特にあのひまわり頭」
そう口にした烈さんの視線が、ティーナさんたちの戦場に向けられます。
シールドに守られたティーナさんが攻撃を受け止め、ラキくんが攻撃を仕掛けていますが、戦闘の中心はフォーさんです。フォーフットの装着こそしていませんが、二本の槍と二枚の盾で牽制してハーフムーンブルーベアの動きを見事に制御しているようです。遺跡で元騎士の神霊を宿してからフォーさんの戦いは巧くなりました。フォーフットとの合体によってさらに強化されるのですから素晴らしいことですね。
あ、ラキくんがトドメを刺しましたよ。体重を乗せたガントレットクローがハーフムーンブルーベアの首をはねました。
見事なものです……が、戦いが終わった後のラキくんはどこか浮かない顔をしているようです。どうしたのでしょうか?
【次回予告】
悲しき獣の咆哮は、未だ止まず。
けれども、それを良しとせぬ仲間がいた。
その涙を拭うために立ち上がる者たちがいた。
彼らは未だ光見えぬ道にも足を踏み出す。
たとえそれが多くの命を散らす道であったとしても。
それでも彼らは進み続けた。
血の絨毯をこの地に広げながら。





