バンブーパンダ04
作中でおじさんが一番死にかけてる回です。
熊林渓谷に到着しました。
異世界の竹林の群生地で、網目のように分かれた小川が流れている渓谷です。大きな岩がゴロゴロとしているところに竹林が並ぶ光景は、京都というよりも中国の奥地に近い感じですね。
まあ、ここは異世界ですし、目の前にある竹は緑というよりも青いのですけど。
そして、この生えている竹こそが今回の私たちの狙っているダンジョンの素材となります。
「大貫さん、見てくれ。ここだ。この竹林の中でも黒い群生地があるだろ?」
「なるほど。ここの竹は青いのに、モニターに映っている離れた場所の竹林は黒いですね」
烈さんが自分のシーカーデバイスを出して見せてくれたのは、サーチドローンで上空から撮影された竹林の光景で、そこには確かに黒い竹が生えた場所がいくつかありました。
「大貫さんにも事前に説明されていると思うが、この熊林渓谷に生えている鉱鎧竹っていう竹は、地中の鉱物を吸収して自分の身を護るための外皮として使うんだ。目の前の青い竹も何かの鉱物を吸収してこの色になってる。まあ、こいつは特に価値はないんだが。で、俺たちの目的はここに映ってるこの黒い竹だ」
「この黒いのがアダマンタイトでできた竹というわけですね」
私の言葉に、烈さんが頷きました。
アダマンタイト。これもファンタジーでは定番の金属らしいのですが、田崎くんの盾にも使われていたもので、色は黒く、非常に硬いのが特徴です。
本来は地中深くにあって、採掘にも時間がかかるそうなのですが、鉱鎧竹の特性によって、竹の外皮という形で地上に出ているのです。
「そうだぜ大貫さん。アダマンバンブーって言われてるんだが、こいつの外皮にはアダマンタイトが含まれている。これを刈り取って持ち帰るのが今回の俺たちの仕事ってわけだな」
「アダマンタイトでできているなら、このまま竹槍にしても使えそうですね」
「まあな。加工して槍や鎧や盾にする金剛竹装備なんてものもあるぞ。見栄えはともかく、下手な装備よりも硬いからな。ただ、やっぱりアダマンタイトそのものではないから硬度は落ちるし、魔法も防ぎきれないんだ。だから竹のままで売って、専門の施設で分離して抽出するのが普通だな」
「田崎くんの盾もアダマンタイト製でしたね」
「アレはコーティングだけど、それだけでも強力ではある。とにかく硬いし、アダマスの語源であるギリシア語の征服されざる者って名の通りに魔力の影響を受けず、変質しないっていう特性も持ってる。魔力を含んだ攻撃を浸透させない、つまりは通さないってわけだな」
「なるほど」
竹に含まれている金属ですか。ユーリさんが私の資金源になると考えたのも頷けます。
通常はこの竹を持ち帰って鉱物部分を分離させないといけませんし、当然のように専用の施設が必要になるわけです……が、私であれば竹を割って解析収納空間に入れれば、直接分離することも可能なはずです。魔力の影響を受けないという点は若干不安ですが、こればかりは試してみないと分かりませんがね。
問題はアダマンバンブーをどうやって割るかですが……
「キュルッ」
「ラキくん?」
私の考えていることを察したのでしょう。ラキくんがガントレットのクローを伸ばしてシュッシュッとスイングをしてます。なるほど。ラキくんがアダマンバンブーを切ってくれるというのですね。ですが、それは無理でしょう。
「ラキくんの気持ちは嬉しいのですが、ガントレットのクローではアダマンバンブーを切ることは難しいと思いますよ」
「ピーーーーー」
あ、落ち込んでしまいました。
しかし、事実としてラキくんではアダマンバンブーを切ることはできないでしょう。ラキくんのガントレットクローは魔力を帯びることで威力を上げていますから、魔力を通さないアダマンタイトには通用しないはずなのです。これはラキくん自前の爪でも同じですね。
「もー、ゼンジューローは言い方に気をつけてよね?」
「すみませんティーナさん。すみませんラキくん。しかし、ラキくんの装備では難しいのも確かですし……うーん。でしたらラキくん用のアダマンタイト製のクローでも作りましょうか?」
純正のアダマンタイト製クローなら、アダマンタイトそのものではないアダマンバンブーよりも硬いですし、ラキくんもアダマンバンブーが切れて、戦闘力のアップもできるはずです。
「専用のクローとなると、今のものと違って伸縮性はないだろうから嵩張るわよね。まあフォーフットがある今なら、持ち運びもそれほど苦労はないでしょうけど」
「はい、そうですね。今後のことも考えれば、ラキくんの強化は必須ですから。アダマンタイトが集まったらガンテツ工房に依頼をかけてみましょう。ラキくん強化計画発動ですね」
「キュル? キュルル!!」
おや、話を聞いていたラキくんが抱きついてきました。ああ、そうですね。ラキくんもパワーアップしたかったのですよね。ええ、では是非ともやりましょう。む、おや?
「大貫さん食べられてない?」
「いや、ハグだけだろ」
「……羨ましい」
「でもやっぱりヤバくないか。なんかくの字に曲がってるぞ大貫さん」
ははは、愛情表現ですから。これはラキくんの愛情表げ……ぐぐ。ただ、その……骨折れそうで……ミシミシって言っていて、ちょ、不味いですね。ラキくん? ラキくん、ちょっと待ってください。ギブアップ、ギブ……
【次回予告】
ソレは地の底に眠る黒きモノ。
ソレはか細く、されど千切れぬ金剛糸。
手繰り寄せるは人ならざる者の手なり。
雌伏の時は終わり、浮上する時は今。
そして、彼の者らに黄金の道が開かれる。





