バンブーパンダ03
最初の襲撃から熊林渓谷に辿り着くまでの間、ニンジャゴブリンの襲撃はさらに三度ほど続き、私たちも最後の一戦には参加いたしました。
そしてニンジャゴブリンと戦った感想なのですが、思ったよりも厄介……という印象です。流石に上野ゲートはランクCに指定されるだけあって、魔獣も強いということなのでしょう。彼らの背負う甲羅が思いの外、硬かったのですよね。
圧縮空気弾のゼロ距離攻撃なら砕くことは可能ですが、通常の空気弾では動きを止める程度が精々です。鉄散弾はほとんど無意味、鉄砲弾なら甲羅を破れると思いますが、弾かれると回収できなさそうですので圧縮空気弾と空気弾のみで倒しました。
ソーラービーム・リユースなら仕留められるでしょうが、まだ本命のエリアにも到着していないので温存させていただきました。
「どうだ、大貫さん?」
「はい。ニンジャゴブリンは中々硬く、これまでのダンジョンで出会った魔獣と比べても倒すのが難しいと感じました。ゴールドクラブの皆さんは一撃必殺でしたから、やはり経験の差というのは大きいのでしょうね」
「はっはっは、そいつは経験の差よりも小島の未来予知スキルの力が大きいんだわ。すべてクリーンヒットするタイミングで仲間に攻撃をさせてっからな」
「なるほど。小島くんのスキルはすごいのですね」
彼らゴールドクラブは人気メイチューバーでもあるそうです。と言ってもユーリさんや凛さんほど、メイチューバー中心ではなく、探索者という職業を誤解されないための啓蒙活動的な配信が多いのだとか。そして、他のメイチューバーと同様に主なスキルは公開しています。そうでなければ、スキルを隠して配信しないといけないですからね。
そんな彼らの中でも小島くんの未来予知スキルは別格のものと言えるでしょう。彼らの戦闘はゲームのスーパープレイのようだと烈さんは続けておっしゃっていました。
未来予知。そんなスキルを手に入れれば勝ち組同然なのでしょうね。少し羨ましく思ってしまいます。
「ま、アイツはウチの中でもトップクラスの有望株だ。力だけの俺よりもよっぽどな。とはいえ……」
烈さんが私の倒したニンジャゴブリンに視線を向けます。ゴールドクラブの皆さんも集まって見ているようです。
「こいつの甲羅を割ったのか……」
「マジか」
「あの光線だけじゃないのね」
「拳の形はしてないけど……拳くらいの痕はある」
「どういう攻撃なの、これ?」
何か驚かれているようですが、甲羅を力技で割ったのはあまり普通ではなかったのかもしれません。非効率的なのでしょう。一流の探索者であれば、弱点をついて効率的に仕留めるのが普通なのでしょうね。小島くんのように。
「大貫さんも連中の刺激になってるようだぜ。アイツらの火力じゃあ甲羅を破壊するっていう選択を取るのは難しいからな」
「そういうものですかね。隣の芝生は青いということでしょうか」
「んーー。そういう……ことかな?」
とはいえ、戦闘にも優雅さというか、技量の高さでサクサクと倒せるようにはなりたいものです。ラキくんとフォーさんも連携で甲羅以外の箇所を的確に突いて仕留めていました。テクニカルで良いですよね。
ただフォーさんはフォーフット無しでもまだ余裕ですが、ラキくんは動きに精彩を欠いているように思えます。
「ティーナさん。ラキくんは調子が悪いのでしょうか?」
「んん、確かにフォーのフォローに回ってるわねえ。だから動きが鈍く見えるのかも?」
「そうなのですか?」
「うん。遺跡で神霊と融合したことで、フォーフットとの合体無しでもフォーの実力はラキを上回ってるからね。ラキが自分で格付けして、そういう役回りに徹しているのかも?」
「ふーむ」
野生の掟的には強いものに従う……ということなのでしょうか。しかし、ラキくんが楽しくなさそうなのは良くありませんね。やはりラキくんには自由でいてほしいのです。
「ティーナさん。ラキくんの進化条件はまだ分からないのですよね?」
「そうね。探索協会の召喚獣マニュアルを読む限りでは、とっくに進化していてもおかしくはないはず……って、ちょっと前にも説明したわよね?」
「そうでしたね。今回、ゴールドクラブの付き添いの依頼もラキくんの進化を促せるかもしれないという話があったからですし」
ドラゴン二体と大量の蟻の因子では進化できなかったラキくんでしたが、であれば近縁種の因子を取り込むことで進化を促せるかもしれないとの話で、ユーリさんから熊型魔獣の出るこの依頼を紹介してもらったのです。なんでも、この先にある熊林渓谷には二種の熊型魔獣が出るそうなのですよ。
近い種であれば、因子に含まれている力も受け継げやすいという理屈らしいのですが、ただ果たしてラキくんは熊なのでしょうかね?
レッサーパンダは熊科ではなく、現存生物での近縁種を持たないレッサーパンダ科です。もしかすると私たちは致命的な間違いを犯そうとしているのかもしれません。
まあ、とりあえずは試してみて駄目だったら別の手を考えてみれば良いですか。
【次回予告】
彼の者に死が迫る。
そこに殺意はなく、
あるのはただ感謝のみ。
死の抱擁は男を包み、
そして世界が闇に包まれた。





