バーニンホット05
さて、烈さん主導によるゴールドクラブとの共同依頼ですが、上野ゲートに行く前の時点で早くも暗礁に乗り上げたことをここに報告いたします。
いえ、オーガニックの訓練場での悲しい事故の件のことではありません。田崎くんの顔が能面のようになって熔けている盾を撫でていましたが、小島くんが大丈夫だというので大丈夫でしょう。時間しか解決できない問題というものもあります。それよりも、もっと重大な問題があることを私は忘れていたのです。
「もう! もうもう!? どうなってるんですか、これ?」
風間サンライズビルのラウンジで顔を真っ赤にしながら唸っているのは本丸久美さんです。先ほど、空気弾を受ける前に血を吐いて倒れた女の子ですね。
彼女は収納スキル持ちなのですが、なんとランクがAなのだそうです。そんな彼女が苦しそうにうめいています。その原因が何かといえば、彼女は現在自分の収納空間を開けないのだそうです。
「スキルが使えなくなった……というわけじゃあないんだな?」
「違いますよ烈さん。私の収納空間が完全に押さえ込まれてるんです。だからこっちの空間に収納ゲートをちょびっとでも開くことができません。これ以上は無理ですね。多分さっきみたいにバックフローを起こして、私は最悪死にますよ」
本丸さんが血を吐いた原因は、アレですね。探索者になって私が一番最初に言われたパーティを組めない理由がそうなのでしょう。
「ええと。収納スキルってのは、本質的にはこの世界の裏側にある亜空間の領域を支配してそこに収納可能な空間を作るスキルで……確か、収納スキル同士は干渉し合うんだよな?」
「そうです。収納スキルに限らず空間干渉系という括りになりますけど。スキル強度の差が大きいと、強度の低い方は収納ゲートを開けませんし、無理をすればバックフローが起きて、負荷としてダメージが発生します。自分のスキルから直に来るものなんで、使用者にダイレクトでダメージが入るし、加減しないで全力で開こうとするとマジで死ねるんですよね」
なるほど。そういうものなのですね。
今まで収納スキル持ちの方と遭遇したことがなかったので忘れていましたが、強度の違いというのはこういうところで出てくるのですか。これでは私がパーティを組めないと言われるのも当然です。
「しかし、ここに収納スキル持ち……それも本丸よりも強度の高い収納スキル持ちなんて」
烈さんがそう言いながら、ふと私の方を見ました。おや、他の皆さんもこちらを見ていらっしゃいますね。
「あの……ティーナさん。どうしましょうか?」
「うーん。今までそういう状況がなかったけど……こうなることは予め予想しておくべきだったのかもしれないわね」
「キュルッ?」
「ニパッ?」
ラキくんとフォーさんが首を傾げていますが、本丸さんの不調の原因はハッキリしています。
私の収納スキルはペットボトルサイズのランクFです。ただ計測はしていませんが、私が探索者になる際のリソースを収納スキルにすべて持っていかれてしまったせいでスキル強度はかなり高いみたいなのですよね。
そして烈さんの言う通りに収納スキル持ちは干渉し合いますし、干渉力の強さはランクではなく強度依存です。だから本丸さんよりも私の収納スキルの方が強度が高いということなのでしょう。そして、これは私が他の探索者と協力する際には必ず発生する問題になるものです。
「大貫さん。本来こういうのを聞くのはルール違反なんだが、あんたは収納スキルや亜空間に干渉するスキルを持っているのか?」
であれば、伝えるしかないのでしょうね。私のスキルを。
「そうですね。私が持っているのはランクFの収納スキルです」
【次回予告】
ひとつの事実は、女の脳裏に数多の謎を生み出した。
導き出した答えは真実か否か。
或いは更なる深淵へと至る呼び水か。
されど、女よ。その先には触れることなかれ。
好奇心が殺すは猫だけにあらず。
踏み越えた一歩先、そこが汝の最期となろう。





