バーニンホット04
光魔法にレーザー攻撃があるので、善十郎はソーラービームも同じようなものだと思っていました。ちなみに光魔法なら田崎くんも大丈夫でした。別物でした。
「いいかお前ら。大貫さんは新人なんだ。探索者になってまだ二ヶ月程度で、自分の力も正確には把握できていないし、探索者としての常識も今はまだ学んでいる途中だ。そんな人に挑むということがどれだけ危険なことなのか分からなかったのか?」
「「「「「え、二ヶ月?」」」」」
田崎が大貫さんにちょっかいをかけて、想像以上にやられちまった未来を見た小島が止めようとしたもののパーティ全員が返り討ちにあって最終的に田崎の盾が熔けた……という惨事に至る状況を聞いた俺が先輩探索者としては当たり前の注意を促すと、小島たちは反省するどころか首を捻りやがった。
まあ、気持ちは分かる。俺も正直、現在進行形で混乱しているが、ともあれ俺はこいつらを指導する立場である以上、注意しなければいけない。
ちょっかいと言っても一方的に攻撃させるだけで、無理矢理やらせようとしたわけでもないんだから……とは俺も思うんだが、俺たちが挑むダンジョンには理不尽ってヤツがゴロゴロとしているからな。
目の前に現れた、ただのウサギのようなものが一瞬で上級探索者の首を刈ったり、草原だと思って踏み入れたらビッグイーターの舌の上だったり、たまたま遠出していたドラゴンに襲われたり、いや……まあ、ここはダンジョンじゃないが、それでもダンジョンに関わる以上、己の想像を上回る未知に遭遇することはあるんだ。普通のおじさんだと思って戦ったらノックアウトされた俺みたいにな。
俺も大貫さんのおかげで久々にその感覚を思い出せた。最近はオーガニックも安定重視の活動が多かったから、刺激にもなった。
だから今回、ユーリから大貫さんの話を持ちかけられて引き受けたのも、こいつらにそういう経験を積んでもらえれば……と思っての部分もあったんだよ。
「「「「「すみませんでしたー」」」」」
「こちらこそ申し訳ありませんでした。ソーラービームが防御できない類のものとは知りませんでした。今度からは気をつけます」
あーもう。最初っから何でうちの後輩が殺されかけてるんだろうなぁ。マジで。というか今、大貫さん、ビームって言ったか? ビーム撃ったの? なんで撃てんの? いやいや、今は後輩の前だからな。ああ、クソ。気になるぜ。ビームってなんだよ。監視カメラの映像だと光線っぽかったがレーザーじゃないのかよ。
「基本的に俺ら探索者のスキルってのは魔力ありきだからな。特にシールドの系統なんかは魔力同士の干渉を利用して、反発させて防いでる。ある意味では対魔力特化と言ってもいい性能なんだ。だから魔力が込められていない高エネルギーなんてもんを撃たれれば、単純なエネルギーの強弱で結果が決まるわけだから、簡単ではないが突破されることもあるってわけだ。つまりは波紋防壁が機能したとしても止められなかっただろうよ。まあ、んなもんを撃ち出すなんて真似、誰でもできるこっちゃねーんだが」
「魔力が込められていない高エネルギー……な、なあ龍平。当たってたらどうなってたんだ俺?」
俺の言葉を聞いた田崎が、青い顔で小島に尋ねた。
あの向こう見ずで何にでも自分の盾で挑もうとしちまうコイツがねえ。正直一番危ういと感じていたのが田崎だが、これは薬が効きすぎたか。あのアダマンタイトコーティングの盾を手に入れてからは特にイケイケだったが、自慢のソレがバターみたいに熔けてたからな。トラウマにならなきゃいいんだが。
「盾はあのまんまだ。熱量で熔けて崩れる。ただ波紋防壁が展開された場合は、吸収しきれなかった光を円状に放出して訓練場が輪切りになってこの部屋自体が半壊。多分ビル自体も崩れた感じになったと思う。盾を貫通したレーザー……ビーム? に当たったお前の上半身は蒸発して、残った下半身も燃えて炭化していた」
「それは……恐ろしいですね」
大貫さんがごくりと喉を鳴らす。お前もビビっとるんかい。いや、普通に大事故じゃん。未来予知スキルなかったら、ダンジョン探索どころじゃなかったじゃん。
「ああ、もう。大貫さん。これ対人では絶対に使わないでくれ。アンタの攻撃は探索者殺しだが、これは本当に洒落にならん。できれば探索協会に報告もしておいて欲しい」
「探索協会にですか?」
「スキルの詳細までは言わなくていい。ただ及ぼす結果を担当にでいいんで報告してくれ。任意ではあるが、探索者ってのは、大型兵器相当の威力に該当するスキルの場合は国に報告することが求められてるんだ」
「ああ、ヘヴィスキルホルダーの関連ですか。射程距離を考えれば該当はしなさそうですが、国防軍の方から今お話をいただいていますね」
知ってたのか……というか、あっちにももう掴まれてるのか。
「そう。それだ。もしかして、前回の迷宮災害でこれを出したのか?」
「いえ。別の技ですね。あっちはさすがに人には向けられません。ミンチになってしまいますから」
ミンチ……まだなんかヤバいのがあるのかよ。
【次回予告】
それは最初から分かっていたはずだった。
ただ長過ぎた安寧は男からその事実を忘却させた。
人の営みに加わることで異質は浮かび上がり、
真実は万人へと曝け出される。
さあ告げよう。
罪の告白を。
己が何故に孤独となったかを。
善十郎よ。汝の告解を、今こそここで。





