バーニンホット03
さて、ゴールデンクラブの田崎くんと模擬戦になりました。まあ、私が一方的に攻撃するだけなのですけどね。
田崎くんはいわゆるタンクというポジションで、彼の防御は烈さんの攻撃すらも弾けるのだとか。
彼からは最も強力な攻撃を求められましたが、私の現在時点での最強の一撃といえばソーラービームとなります。
とはいえ、直径8センチメートルの直線状の攻撃を探索者の方に当てるというのは、素の私では結構な難易度です。田崎くんは盾で受けるのだからそんなことを考える必要はないのかもしれませんが、私としては実戦を想定して挑んでみたいのですよ。何しろ私も前回の遺跡探索では探索を甘く見て痛い目を見ました。最高の探索者となるためにもう二度と油断をするつもりはありません。
ですので、まずは時間遅延解除をかけて相手の動きを(相対的にですが)鈍くし、じっくりと照準を定めたところで……おや? 小島くんが何か声をあげましたね。
まあ時間遅延解除中なので声がゆっくりすぎて何を言っているのかは聞き取れなかったのですが、直後に彼のパーティが一斉に攻撃を仕掛けてきたので、多分この模擬戦をパーティで挑む方針に変えたのでしょう。
突然何を……とも思いましたが、彼らは若いながらも中堅にまで登ってきたパーティです。恐らくは私の臨機応変な対応を見たいということなのでしょうね。小島くんの表情を見れば分かります。彼も田崎くんと同様に、まだ新人の私に対して全力で挑んできてくれているのです。最強を目指すパーティは心構えからして違います。であれば、私も全力で挑まねば無作法というもの。
私は即座に彼らの前に収納ゲートを展開し、それぞれに対して空気弾を撃ちました。
その反撃に気づけなかったのでしょう。剣士の方と魔法使いの方は空気弾を受けて吹き飛び、収納スキル持ちと紹介された女性は空気弾が当たる前に何故か血を噴いて倒れました。
ですがリーダーである小島くんだけは私の攻撃を避けたのです。続けて2、3、4発と撃ち込みましたが、すべて回避されました。すごい回避能力です。
ですが、無茶な姿勢で避け続けたせいで今の小島くんは身動きが取りづらい状態。空気弾をもう1発といきたいところですが、空気弾のサイズの攻撃ではやはり無理をして避けられそうですし、新技を使うことにしました。
これは前回の遺跡探索における反省を生かしたものです。
実のところ、前回の遺跡探索での一番の問題は私自身が攻撃を何度も受けてしまったことでした。ティーナさん作成のブローチ型魔法具『大地の銀花』のアースシールドの防御性能が高すぎたために、それに胡座をかいてしまった私の油断が大きかったのだと反省しましたが、アースシールドに包まれたことで私自身の感覚が鈍ったのも原因のひとつではないかとティーナさんからのご指摘がありました。私は知らず、目隠しをしているも同然の状態だったというわけです。今後のことを考えれば、これは望ましくありません。
そのため、ティーナさんには大地の銀花を常時発動型から任意発動型に調整してもらい、普段は非発動状態に変更したのです。
その際にティーナさんが加えてくれたのが、使わずに待機状態のアースシールドを蓄積し、私を覆うサイズのシールドを一気に前へと放つという攻撃手段でした。その名はアース張り手です。ユーリさんが命名してくれました。これが若い人のセンスなのですね。私にはない発想です。
結果として、小島くんはなおも避けようと空中で何かをして距離を取り始めましたが、直径2メートル程度の攻撃範囲があるアース張り手を避け切ることはできずに場外リタイアです。
その際に小島くんが何かを叫び、田崎くんも覚悟を決めた顔をしました。
なるほど。そうですか。ようやく本命ということなのでしょう。分かりました。私も全力で挑みます。
さあ! 私のソーラービームと田崎くんの盾。いざ尋常に勝負です!
……と思ったのですが、彼はソーラービームを受け止めるのではなく、しゃがんで避けてしまいました。盾はまだ立っていたので当たって熔けてしまいましたが、田崎くんは背中が焼けただけで無事なようです。
今は地面で転げ回っておりますが、どうしましょうか。
ちなみに後方に飛んだソーラービームは射線状にあらかじめ設置した収納ゲートで『回収済』です。
訓練室に穴を開けるわけには行きませんからね。それにこうすることで、ソーラービームは再利用ができるのです。私はこれをソーラービーム・リユースと名付けることにしました。回収用の収納空間をちゃんと設置しないといけないので射程は正確に収納ゲートが置ける5メートル以内となるのですがね。
つまりはまだ撃てるのですが、今これを撃ったら田崎くんが死んでしまう気がします。戦う前に全力で……とは言われました。そんな彼の熱い魂に水を差すかもしれませんが、撃ってしまって良いものなのか悩みますね。
おや、時間遅延解除が解けました。まあ、続きをするかどうかは当人に聞いてみましょうか。
「田崎くん」
「は、はい」
「私は今の攻撃をもう一度撃てます。まだ勝負を続けますか?」
「もういちど? ふへ? え? つ? つつつ続け?」
「え? 続けるでよろしいですか?」
「つづ、つづづづづ、続け? 続ける? い、いヤダ。ヤダヤダヤダ。嫌だ。嫌だァアアア」
嫌ですか。つまりは私の勝ちで良いのでしょうか? ふむ。
「な、なんでこんなことに……なってるんだ?」
あ、烈さんが来たようですね。遅刻は駄目ですよ烈さん。
【次回予告】
ひとつ選択を誤れば、
ひとつ道を踏み外せば、
その先にあったのは破滅の未来。
未来を見通す瞳はその終焉を観測し、
事実を知った男は己が力に恐怖した。





