ナイトキングダム06
「来たわよゼンジューロー」
「はい。まずは鉄球散弾で散らします」
正面に向かって収納空間を解除し、約600発の鉄球の雨を遺跡フォーハンズへと飛ばします。
「うわぁ、ボーリングのピンみたいに吹き飛んでいくわ」
「遺跡フォーハンズは頑丈ですが、出力は低いですし、反応速度も遅いですからね。やはり避けたりはできませんか」
重量があるので予備を持ち歩き辛いという欠点もありますが、やはり鉄球散弾は強力です。この数であれば、まだ新収納の力を使うまでもありません。
「ところでゼンジューロー。鉄球って、ダークハンズ相手に使い果たしたと思ったんだけど、まだ残していたの?」
「いえ、これはダークハンズを倒した後に吸引でかき集めたのですよ。一応二つ分は回収できていますので、後一発は撃てますね」
「あー、そゆこと。それは重畳。また来たわよ」
十字路の左右からゾロゾロと出てきました。全部で10体ですか。数は先ほどより少ないですが、ここで立ち止まって戦っていると復活した遺跡フォーハンズが後ろから追いかけてくるでしょうし、一気にやってしまいましょう。
「ラキくん、このまま進んでください」
「キュルッ」
「どうするの?」
「こうします。時間遅延解除!」
私以外の世界のすべてがゆっくり、鈍く、重くなっていきます。車よりも速いラキくんの動きもスローになり、この状態であれば集中して収納ゲートを正確に、すべての敵の前へと発現させられます。
ダダダダダダダダダダンッ
そして私が使用したのは空気弾を十連続です。
はい、遺跡フォーハンズをすべて吹き飛ばしました。弾くだけならやはり問題はありませんね。
遺跡フォーハンズは低出力ですので踏ん張れませんし、ダークハンズのように勘で避けたりもできません。速度もフォーハンズほどではないので、一度抜けてしまえば追いかけても来られません。バラバラになってもすぐ戻ってのゾンビアタック……というのは厄介ではありますが、その場に留まる必要がないのであれば対処は難しくはありませんね。
「うわ、全部一瞬で吹っ飛んだ」
「キュルルルルッ」
おっと、時間遅延解除が解けましたか。
壁に叩きつけられた遺跡フォーハンズたちを見たティーナさんが目を丸くしていますが、ラキくんは動きを止めず、一気に駆け抜けていきます。
「それにしても数が多いですね」
「ウチのフォーハンズが暴れ回ってるせいで遺跡内の遺跡フォーハンズが集まってきてるんじゃないの?」
「なるほど。そうかもしれません」
フォーハンズを追う私たちと、フォーハンズを追う遺跡フォーハンズ。途中でぶつかり合うのも必然ではありますか。
「ゼンジュウロー、前! 正面が広くなって、いっぱいいる!?」
「む?」
しばらく進んでいるとティーナさんがそう警告の声をあげてきました。なるほど。確かに言葉の通り、この先には通路が広くなったホールのようになった場所があり、そこに遺跡フォーハンズが大量に並んでいるようです。
また、その後ろには開いた扉があります。扉の先は……広い空間? まさか遺跡の外ですか? 少なくともこれまでと同じような宮殿の中という感じではありませんが。
「どうするゼンジューロー? 強引に突破は難しそうよ」
「何とかします。ラキくんは速度を落とさず、扉に向かって駆け抜けてください!」
「フーーーーッ、ガッ! ガッ!」
ラキくんが私の言葉に従って迷いなく直進していきます。
私もラキくんの信頼には応えねばなりません。3列に並んで40体はいるようですが、新しい収納空間を使えばどうにかなるはずです。
レベル20になって得た新しい収納空間の能力は複製。名付けるならば『複製収納』と言ったところでしょうか。
これは、現在保有している私の収納空間の能力を複製できる能力です。
簡単に言えば、時間遅延、解析、吸引の収納空間が複製可能で、どれかふたつを同時に使用することも可能になるということですね。
そして、私がこの戦いで選んだのは時間遅延の収納空間。連続で使えば時間遅延解除の継続時間が二倍になるはずですが、今回は別の使い方をします。つまりは……
「時間遅延解除を同時発動です!」
私は、私以外が減速する世界の中で、さらに世界の速度を減速させることを選択しました。
減速した世界の中でも私は変わらぬ速度で動けます。それは収納解除して撃ち出す攻撃も同様で、それは客観的に見れば加速して撃ち出されているということです。つまるところ、二連続の時間遅延解除で放つ一撃とは加速に加速を重ねた、これまでの私の攻撃の中でも最速の一撃。すなわち
「【重】加速鉄球散弾」
ズガガガガガガガガガガガッ
おお、あの数の遺跡フォーハンズが、二列目、三列目にいた個体まで一気に吹き飛びましたね。これは凄い。想像以上の威力、想定以上の成果です。やりましたよティーナさん! やりましたよラキくん!!
「ぜ、ゼンジューロー、今の何?」
おや、十秒も経たずに時間遅延解除が解けてしまいました。体感的には3秒程度でしょうか? 時間遅延解除の重ねがけだと効果が解けるのが早くなるんですね。なんというか、引き絞りすぎて反発されたような? そんな感覚がありました。
「新しい収納空間の複製収納で時間遅延を複製しまして、時間遅延解除を同時に解除して攻撃したのですよ」
「複製? 遅延を二度解除って……ああ、それで鉄球の速度がさらに上がったってことか。なるほど、そういうことも可能なんだ」
さすが、ティーナさんは理解が早いですね。
私も何と無くできるんじゃないかとぶっつけ本番でやってみてできたわけですが、思ったよりも上手く発動してびっくりしてしまいましたよ。
「そういうことです。これで遺跡フォーハンズもしばらくは復活できないでしょう。さっさとここを抜けて……」
「どうしたのゼンジューロー?」
「見てくださいティーナさん。ラキくん」
遺跡フォーハンズを退けて扉をくぐり抜けた先、そこは吹き抜けになった、巨大な塔の内側のような場所でした。
外ではないようですが、今までの遺跡内部とも趣がずいぶんと違います。そして私たちが進む通路の先には吹き抜けを横断するようにかかった橋があって、橋の下には……
「あれは……巨大な門かしら?」
はい。門ですね。非常に大きくて、曰くありげな豪奢な門です。あれは一体なんなのでしょうか?
【次回予告】
善十郎たちが辿り着いた先は巨大な塔の内。
それは地を貫く逆位置の塔。
それは星を貫く闇の牙。
流れ出た星の血を欲するは如何なるものか。
再び胎動する負の魂塊は如何なる規模か。
そして、分厚き門の先にある厄災が解き放たれる時はもうまもなく……





