ナイトキングダム05
「ここから先にあるのは降りる階段ですか。フォーハンズは第二遺跡の奥へ、奥へと進んでいるようですね」
「ゴミをどけるように遺跡フォーハンズが通路の左右にバラバラにされて転がってるわ。やっぱりアレは遺跡と敵対しているっぽいわね。あ、転がってる遺跡フォーハンズが元に戻り出してるわよゼンジューロー」
「そうですか。時間がありませんので放置して先に進みましょう」
どうせ帰りで待ち受けているのでしょうし、ここで足止めを食えば、フォーハンズに追いつけなくなります。今はスルーが正解でしょう。
そうして動きを止めることなく、ラキくんに乗った私とサーチドローンに乗ったティーナさんは階段を降りていきます。
「ねえ、ゼンジューロー。本当にこのまま進むの?」
「と言いますと?」
「安全を考えるなら、一度戻るって選択もあるのよ?」
「確かに今の私たちは未知の遺跡に踏み込み過ぎているとは思います。ですが、フォーハンズも私たちの仲間です。見捨てることはできません」
仲間を見捨てるような人物を最高の探索者とは言えないでしょう。そう生きると決めた以上、私はその道を進みます。
「それとティーナさん。先ほどは話せていませんでしたが、報告がふたつあります」
「ふたつ?」
「はい。まずひとつ目ですが、先ほど吸引で集めた光ですが、ソーラービームにはなりませんでした」
「まあ、太陽とは光量が違うもんね」
「そうですね。それと集まったのは光ではなくエーテルでした」
「へ?」
「しかも若干私の認識しているエーテルとは違うようで、恐らくは純度が高いもののようです」
「あー、こっちの光って魔力光だから、集まるとそうなるんだ?」
ティーナさんも気づいたようですが、こちらの世界の光というのは、光になった魔力なのです。それが集まったことで収納空間内では凝縮された魔力が液体であるエーテルへと物質化し、結果として収納空間の中身は埋まって、10秒程度で吸引できなくなったわけですね。
「ということは、ゼンジューローはダンジョンにくればエーテルを作れるってわけね。さらに圧縮してマナジュエルとかも作れたりしないの?」
「エーテルも狙って作ったわけではありませんし、収納空間内のものを意図して圧縮するというのはできませんね」
或いは、圧縮収納空間などが作れるようになれば別なのでしょうが。生えてきますかね圧縮収納空間?
「ふーん。それでもエーテルをいくらでも作れるんだから一儲けできそうね」
「そうですね。小遣い稼ぎには良いかもしれませんが、どちらかと言えばエーテルを利用した魔法具の利用が選択肢に入るかもしれません」
「あー、確かに」
私はハイマナジュエルを九つ保有していますが、強力な魔法具の使用にはエーテルが利用されています。ハイマナジュエルは継続して魔力を供給しますが、瞬間出力をあげるにはエーテルの方が適しているらしいのですよね。
「しかし、相手も速いですね」
「フーーーーッ」
ラキくんも頑張って走ってくれていますが、追いつけません。
「まあ、焦らず確実に進みましょうラキくん。フォーハンズは遺跡フォーハンズの対応もしているのですから、きっと追いつけます」
「キュルッ」
「行き先はバラバラになった遺跡フォーハンズがあるから分かりやすいわね」
「そうですね」
バラバラになった遺跡フォーハンズはパーツごとに距離を空けられているので、まだ復活はできていないようです。なるほど、そういう対処方法もあるのですね。
「それでゼンジューロー」
「はい?」
「ふたつ目の報告は?」
「ああ、そうでした。私、レベルが上がってます」
私の言葉にティーナさんが目を丸くします。
「何で? いつ?」
「履歴を見ると多分ダークハンズを倒した時だと思いますが、サイレントモードにしていたので気付きませんでした」
戦闘中に気を取られないようにとサイレントモードにしていたのですが、先ほど確認したらレベルが20に上がっていたのです。
相変わらず身体能力の上昇は微々たるものなので気づけなかったのですが、確かめてみたら20個めの収納空間が作れるようにもなっています。
「となるとフォーハンズに憑いたのが、スピリット系なのはほぼ確定ね」
「取り憑いたということは倒せてはいなかったのですよね? それで経験値をもらえるのですか?」
「経験値ってのは、魔獣を倒した際に散った生命エネルギーをゼンジューローたちに埋め込まれたエクステンドプレートにリソースとして吸収させて得るものって話だからね。と言ってもすべて奪えているわけではないし、スピリット系は霧散したエネルギーを再集合させることで復活することもあるらしいのよね。多分だけど、倒しきれなかった分が集まって四脚台に集合して、それがフォーハンズに取り憑いたんじゃないかしら?」
「そういうものなのですね」
「そういうものみたいよ。それでゼンジューロー」
「はい」
「レベル20ってことは出せるようになったのは、特別な収納空間だったんじゃないの?」
「そうですね」
「おお、どんな能力なの!?」
「これがですね。実に分かりやすい能力でして」
そうなのです。思った以上に扱いやすく、痒いところに手が届くような能力でした。言うなれば、新しい収納空間の能力はふく……
「ゼンジューロー、前!?」
「む? いっぱいいますね」
正面に遺跡フォーハンズが20体以上も並んでおります。
フォーハンズが取り逃がしたのか、別の通路から合流したのか。まあ、良いでしょう。せっかくですから、新しい収納空間の能力を試してみましょうか。
【次回予告】
押し寄せるは鉄の傀儡。
放たれるは鉄の豪雨。
血の通わぬ冷たい戦場を前に、
善十郎は更なる高みへと到達する。
それは世界を置き去りにする理。
世界を引き裂く事象の暴力。
それ故に世界は男に反逆の意を示した。





