ネイキッドソーリー03
今話で衝撃の真実が明らかに!
「えっとさ。私がいるのは、私がユーリをここに連れて帰ったからなんだよ。まあ、あの迷宮災害の件で大貫さんの名前が出てなかったのはユーリも気にしてたみたいでさ。そこにあの記事だろ。そいつを見たユーリがいきなり叫んでパニック状態になるし、誰が聞いても事情は言わないし、目を据わらせて新聞社にカチコミかけそうになるし……で、ともかく荒れてね」
「ああ。ヘタをすると物理的に新聞社がなくなる案件ですね」
「だろ?」
公然の秘密にはなりますが、上級探索者ともなると法に違反したとしても、ある程度のお目こぼしがもらえるそうなのですよね。
まあ、単純に上級探索者相手では取り締まる側が戦力的に対処できないですし、下手に反発されて国外に移籍されるのも困ります。
小国などでは反発した探索者によるクーデターも多く、大国ですらも国内のいくつかが切り崩されて独立してしまった地域も複数あります。それが許されてしまうくらいに人類側の戦力が足りていないということでもあるのでしょうが。
とはいえ、当然なんでも許されてるというわけではありませんし、今回のケースでユーリさんが一般企業へ実力行使した場合は、さすがに庇うのは難しかったでしょう。ユーリさんが早まらなくて良かったです。
「なんとかクラン内でこの娘をなだめて、烈が病院行きになったりもしたけど……とりあえず私がここまで連れ帰ってきたってわけ。ああ、私がいることはフロントにも言ってあるから大丈夫だよ」
それは安心です。私とユーリさんはここに住んではいますが、ホテルはホテルです。
あくまで宿泊施設。部屋に入るにしてもフロントにお断りするのは基本ですからね。
「で、この部屋に入ったらさ。明らかにひとりで住んでる風でもないし、男ものらしいものがいくつも置いてあるし……あのセットもね。いや、そもそもラキくんもいたし?」
なるほど。ティーナさんのチャンネル用の中世貴族風スタジオセットが部屋の角に設置してありますね。ちなみにティーナさんは作業室に使ってる部屋に篭って作業をしていて、気付いていなかったようです。
「それでも最初は信じられなかったけどさー。ティーナちゃんのチャンネルは私も見てたし、となるとここに住んでるもうひとりの人間ってもう大貫さんぐらいしかいねーなーって思ってさ」
「まあ、そうなりますか。ですので、私が帰ってきても驚かずに部屋の中にいたわけですか」
「いや、がっつり驚いてたけどね。友人の奇行にもっと驚いてただけで。つか、ユーリ。人が話してる時に何してんの?」
「マーキング? んーーんーー」
ユーリさんががっつりくっついて離してくれません。頭をすりすり擦り付けてきます。
ラキくんも一緒に首に巻き付くように乗ってきました。対抗意識でしょうか。まあ、そうでしょう、そうでしょう。これこそが、私がラキくんの飼い主の証なのです。ティーナさんには負けませんよ。
水瀬さんが呆れた顔をしていますが、先ほどまで思い詰めていたユーリさんを突き放すのも抵抗がありますので諦めましょう。
「それで……さ。大貫さん、ユーリ」
水瀬さんが探るような視線で口を開きました。
「アンタらは付き合ってる……で良いんだよな? いや、聞くまでもないんだけど。一応な」
「うん。そーだよー。おじさんがあーしのダーリンだねー」
「そうですね。ユーリさんとはお付き合いさせていただいております」
ふむ。そういえば、ユーリさん以外の方にこのことをキチンと報告したのはこれが初めてですね。佐世子さんは察していたようですが。
「白状してしまいましたが、水瀬さんに言ってもよろしかったのですかユーリさん?」
「まあ、言わなくてもバレちゃってるしねー。それにふーちゃんなら大ジョーブ! ねー?」
「アン? そりゃあ私は小学生からのダチの秘密をペラペラ喋るよーな軽い女じゃねーし。いきなり全裸土下座をやり出すほどイカれてるとは思わなかったけどな」
「まあ、そうですよね」
「う!?」
正直に言わせていただければ、かなり引きました。多分田中くんも実際に見たら引いたのではないでしょうか。いえ、どうでしょう。或いはああしたものに興奮を覚えるか否かが、好みのジャンルであるか否かの差なのかもしれません。彼は今頃、何をしているのでしょうか。元気でいてくれると良いのですが。
「止めようとは思わなかったのですか?」
「止めようとしたら人殺しの眼をして睨まれるし、命の危険を感じたから、大貫さんが来るまで放置してたんだよ。一時間くらい」
少し遠い目をした水瀬さんが、そう言いました。一時間……一時間ですか。長いですね。
「それは……ご苦労様です」
「ホントになー。ダンジョンの外で久々に怖いって思えたよ。まあユーリも大概だからな。箱入りだしさ。ちょっとズレてるとこあっから」
「そうなのですか?」
「そうなんだけど……うーん、聞いてない?」
水瀬さんが首を傾げながら尋ねてきましたが、私も「ええ、まあ」と答えるしかありません。
ユーリさんの家族関係は、青森の準厄災を倒したお姉さんがいるということぐらいしか存じ上げませんし、ユーリさんもあまり触れたくはなさそうだったのですよね。
「んー、別に家は関係ないじゃんかー」
「いや、クランに貞本さんもいるじゃん。そろそろバレるっしょ」
「バレてねーし」
「今まではそうでも、今回の件でさすがにねー」
「あーー」
ユーリさんが頭を抱えています。
水瀬さんが話した通りであるならば、確かに今回の奇行の原因を尋ねられるくらいはするでしょう。
それと貞本さんですか。そのお名前は、オーガニックを調べる際に目にしたことがありますね。
「貞本さんとはオーガニックのサブリーダーの方でしょうか?」
「そうだよ、うちのサブリーダー。そんでユーリん家の若頭的な?」
「若頭? ユーリさんのご実家はヤクザ屋さんなのですかね?」
「いやいや、おじさん。ウチは反社ではないよー。めっちゃ社会貢献してるからねー。昔っから政府の仕事も請け負ってるくらい由緒正しい家柄だしさー」
「なるほど。なら、問題はないですね」
反社として認識されると、生き辛い世の中ですからね。まあユーリさんが大丈夫というのならば大丈夫なのでしょう。
「いや、ユーリ。その言い方は間違いではないけど、正確ではないというか……あーもう、わたしゃ知らないかんね」
「へへーん。大丈夫だもんねーだ」
どうやらユーリさんのお家は訳ありのようですね。とはいえ、ユーリさんも成人の女性です。であれば、彼女が自由に振る舞うことになんら問題はないはずです。
このまま結婚するか、子供でもできたのであれば、ご挨拶には伺いたくは思いますが、それもユーリさんが望むかどうかによるでしょう。
「けど、大貫さんも動じてないね?」
「というと?」
「話の筋からして理解してるとは思うけど、風間家って色々とメンドーなところだよ。ぶっちゃけユーリが大貫さんになんも言ってないのが不思議なくらい」
「そうですか。けれども分かったところで、私が変わるわけではありません。それに、それなりに人生経験も積んでいるつもりです。ユーリさんにいかなる事情があったとしても、それで彼女と離れる理由にはなりませんよ」
私の言葉に水瀬さんが目をパチクリとしてから「ほー、なるほどねー」と口にしました。
「大貫さん。アンタ、結構男だねぇ」
「でしょー。あげないよー」
「いらんいらん」
「なんだとー?」
「うっせえ。どう言えばいいんだよ!?」
やはり、おふたりは仲がよろしいようですね。
とはいえ、人生経験を積んでいるとは言いましたが、同じような経験といえば、佐世子さんの時ぐらいです。あの時は、ご両親とはお話がまったく通じませんでしたし、佐世子さんが家出をして、勘当された形で決裂しましたので、積んでいるのは失敗した経験のみと言えるでしょう。
ですので、今度こそは失敗しないようにしたいものです。家族は仲良くが一番ですから。
【次回予告】
かつて目指した一番星。
諦めてなお、身を焦がす燃ゆる星。
女の情念はいつまでも燻り、
己の星を追い求める。
故に己が選ぶのではなく、
己が選ばれたことにこそ女は価値を見出した。
寄り添うことで己が燃え尽きようとも構わない。
親も、姉も、祖父も、友も、仲間でさえも、
その星に焚べることすらも厭わない。
ただ女は望むのだ。
この命、燃やされ尽くすまで、
その輝きの中で自分にも夢を見させてくださいと。





